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#018 キャッシュリッチなゲーム業界とニンテンドースイッチの関係

以前に『任天堂がひたすらに無借金経営を続ける理由』を書きました。今回は、範囲を広げてゲーム業界全体の傾向について整理します。

任天堂やスクウェア・エニックス、ガンホーといったゲーム企業は、軒並みキャッシュリッチであることが分かりました。各社とも多額の手元現金を保有しているのです。ここでは、その理由を掘り下げます。

多額のキャッシュをため込むゲーム企業

ゲーム業界各社の現金比率

上記は、ゲーム業界の代表的な企業各社の現金比率を示したグラフです。ここでは、現預金が総資産に占める割合を現金比率と定義しています。

現金比率の全企業平均が12.4%なのに対して、ゲーム業界各社は50%近くの水準になっています。ガンホーに至っては約80%近くの現金を保有しているから驚きです。

本来、企業は調達した現金を何かに投資し、そこから利益を上げることが期待されます。ですから、手元に多額の現金をキープすることは、そのセオリーに反するといえます。

一方で、手元にキャッシュを保有することは不測の事態の備えになります。北の達人コーポレーションの木下社長は、手元キャッシュの重要性について以下のように述べています。

自分はバブル崩壊の経験から「不況は必ず起きる物」という前提で会社を作っている。当社では「もし売上が0になっても社員全員を2年間養っていける現預金」を常にキープしている。不況だからといって社員を露頭に迷わす可能性があるような経営をしてはならない。
木下勝寿/webマーケッター兼東証1部上場企業社長

ゲーム企業の極めて高い自己資本比率

ゲーム業界各社の自己資本比率

次に、ゲーム業界各社の自己資本比率をチェックします。ここでも、全企業の平均を大きく上回り、ゲーム業界会社の自己資本比率は70%~80%に達しています。任天堂とバンダイナムコHDに至っては無借金経営です。

自己資本比率は、「業績悪化に対するバッファー」とも形容されます。なぜなら、業績悪化により赤字を計上した場合に、それを吸収するのが自己資本比率だからです。

ゲーム業界にあるのは天国と地獄だけ。中間はない」とも言われます。それほど業績変動リスクが大きいのです。ですから、ゲーム業界各社は自己資本を厚くします。現金比率を高めるのも同様に、業績変動に備える行動と捉えることができます。

任天堂の研究開発費

任天堂の営業利益と研究開発費の推移

実際に、現金&自己資本の厚さが業績悪化のバッファーとして機能した例が任天堂です。同社は、3DSとWii Uの不振により2012年~2014年に営業赤字に陥りました。

ところが、営業赤字にも関わらず同社は研究開発費を削減しませんでした。する必要がなかった、といった方が正確かもしれません。そこで投資を継続したことがニンテンドースイッチの開発につながった訳です。

今回は以上です。

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