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ラグビーの魅力

ラグビーワールドカップ、チリに続いてサモアに勝利し、いよいよ決勝トーナメント進出をかけて、10月8日のアルゼンチン戦ですね。世界ランクで格上の相手なので、悔いのないよう思い切りぶつかって欲しいと思います。

まっちゃんが『少年マガジン原作大賞』に応募した作品『疾風のカナタ』を読ませていただいたばかりでもあり、私もこの球技に対する個人的な思い入れを書きたいと思います。

といっても、いわゆる「部活」でのラグビー体験はありません。
市立中学、県立高校と、たまたまラグビー部が強い学校に通いました(中学は市大会で優勝を、高校は県大会で優勝を争うレベル)が、別の運動部に所属する門外漢でした。

事情が変わったのは、高校2年の体育の授業で半年間ほど、ラグビーを習ったことです。男子40人(普通科35人+美術科5人)が2チームに分かれ、ラグビー部顧問の先生を審判に、毎回試合をする中でルールを学んでいきました。

これでハマりました。── いえ、私だけでなく、クラス全員が。

雨天の体育授業は体育館で簡単なトレーニングをするのが常でしたが、ラグビーだけは雨の中、かまわず試合をしました。スライディングしながらのトライだったり、タックルされて全身泥まみれになったり、いやむしろ、雨の日の方が安全な球技でしたね。

その高校は、諸事情で授業のない『休講』の時は、グラウンドでソフトボールやサッカーなど、生徒だけで『遊ぶ』のを習わしにしていましたが、それがラグビー一色になりました。
普通科クラス男子35人が、体育授業と同じ組に分かれてのゲームです。
クラスの女子10人が応援(ただの見物?)していて、いいところを見せたい、というココロもあったでしょう。

とにかく、クラス全員が何らかのポジションに付くわけです。大まかには、足の速い連中はラインを作って主にパスを受けて走るバックス、遅いのがスクラムを組むフォワード、ルールに習熟した現役ラグビー部員がフォワードとバックスをつなぐスクラムハーフやスタンドオフ、というくらいで、ゲームをやりながら、キャプテン的役目の現役部員がポジションを修正していく、といった具合でした。

私のポジションはフッカーでした。
スクラム最前列の真ん中で、両側のがっしりした体格のプロップに支えられながら、スクラムに投げ入れられたボールを足で後方にパスする役目です。
ちなみに今の全日本では、『笑わない男』として有名な稲垣啓太選手がプロップで、『ドレッドヘア』で知られる堀江翔太選手がフッカーです。
通常、スクラムに入れたボールは、(タイミングを知らせるため)入れた側のチームが取るのが普通ですが、私は両足で敵ボールも取るのが得意で、けっこうチームに貢献していましたね。
ただ、スクラムの際には両側の耳が擦れるため、母に頼んでタオル生地でヘッドギアを作ってもらいました ── それほどクラスチームにのめり込んでいたわけです。

小学校の時に野球、中学でサッカー、高校1年ではソフトボールと、いずれも同じようなクラス対抗のチームを作って遊び半分でゲームしていました。
でも、この年のラグビーほどのめり込むことはなかった。

── どうしてだろう?

ラグビーの魅力はやはり、プレイヤー間の密着度が高いところではないでしょうか?

フォワードはもちろん、スクラム組んで『おしくらまんじゅう』をやるし、ボールを持って走るバックスは相手チームにタックルされます。バックスのスタープレイヤーは華麗なダンスのように、美しくタックルを交わす。

私のチームでは、ブラインドサイド(スクラムとタッチラインの狭い側)に陸上部員が配置されており、相手の裏をかいて彼にボールを回した時の『快走ぶり』はチーム全体に(たぶん見学の女子にも)『快感』を呼ぶものでした。

太古の昔、ホモ・サピエンスたる我々は(ネアンデルタール人はもっと個別的だったらしいけれど)、あんな風に狩りをしたり、あるいは大きな獲物を獲った後で、
「やったぜ!」
とチームで喝采していたのではないでしょうか?

そう、いわば、あらゆるボールゲームの中で最も『原始狩猟的』な競技がラグビーなのではないでしょうか?

ひとつだけ原始的でないルールはもちろん、

《ボールを投げるのは後方でなければならない》

という点でしょう。
 
元々はサッカーをはじめフットボールの起源である、イングランドの『原始フットボール』では、ゲームを早く終わらせてしまう行為は強く戒められ、その結果である『オフサイド』ルールと同じく、
『前方にパスにするなんて、とんでもない!』
ということのようです。

これは現代の『効率社会』においては確かに、こんな非効率かつ不合理なことはありません。

実際、私は1990年代のアメリカ留学中、一緒にアメリカンフットボールの試合を見に行くことになった同僚に、
「日本ではアメフトは人気ないな……ラグビー以下かな」
と漏らしたところ、
「ラグビー? あのボールを後ろにしか投げられないStupid Game(馬鹿げたゲーム)だろ?」
と言われましたね。

なるほど……確かに、効率第一のアメリカ社会には合わないな……。

いや、その『制約』こそが、あの流れるように美しいパスワークを産んだのではないだろうか?

と思うのです。

そういえば、小学生の時、既に《廊下ラグビー》の主催者でしたね……。それも《原体験》としてあるのかな……。

もっとも、当時はラグビーのルールなんて知らなかったので、平気で前方に投げていましたが……。

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