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ベトナム教育スタートアップでの学習塾・オンラインライブ配信サービス作り

早いもので2月にベトナムに渡り、日本人が立ち上げたManabieという教育スタートアップに入社してほぼ1年が経ちました。クリスマスに今年始めて有給をとって三連休を楽しもうとしているところです。現在ベトナムの寝台バスにてこの文章を書いております。(ちなみに写真は後述する39℃を出して病院にいったのにコロナ対策の影響で病院に入れてもらえず野戦病院状態になっていた僕です)

昨年、振り返り記事を書いた時とは全く異なった生活をしております。去年の今頃は新卒入社したメルカリのデータアナリストを辞め、現職Manabieへの転職を決めたタイミングでした。1年前は強いデータアナリストを目指していた僕ですが、今は学習塾、オンラインサービスにおけるサービス設計及びオペレーションの責任者として仕事をしています。入社した2月から5月まではなんだか色々なことをやっていたのですが、現在は上記二つのサービスに集中して取り組んでいます。6月にチームを持つようになってからの半年ほどはかなり苦労をしながら事業の成長にコミットしてきました。チーム作りを始めてからこれまでを振り返ってみます。

 6月: チームを作り始める

まずは学習塾の体験づくりにフォーカスする2ヶ月でした。コロナウイルスの影響で5月頭まで塾を閉じなければならなかったこともあり、基礎的なオペレーションがまだできておらず、また生徒にとって何が価値になっているのかあやふやな状態がありました。あまりにもやることは多かったので3つに絞って取り組み始めました。1つ目が顧客の声を聞くこと、2つ目に現場の声を聞くこと、3つ目にベンチマークになりうる日本を含めた学習塾のオペレーションを徹底的にリサーチすることでした。

1つ目の顧客の声を聞くことに関しては、現地の大学生でたまたまユーザー感覚が最高に鋭いフルタイムインターン生と出会うことができ、僕自身もユーザーリサーチについてをキャッチアップしながら、インタビュースクリプトを作り、当時のアクティブ生徒の約25%に1時間ほどのユーザーインタビューを行いました。これにより、現状のサービスのどこに価値を感じており、どこは価値を感じていないのか、そもそもなぜこのサービスを使うに至ったのかなどを細かく把握することができ、今に至るまでの骨格になるリサーチとなりました。インターン生はベトナムのフルブライト大学1期生が参加してくれました。フルブライト大学は新進気鋭の大学で、多くのベンチャー企業と提携し、学生にインターンシッププログラムなどを提供しています。優秀な若者をブランドのないスタートアップが採用するのはベトナムにおいても難しいため、非常に幸運でした。また、ここでわかったこととして、ベトナムの学生は放課後自分の学校の先生が家で副業で教えている「個人塾」なるものに通っているケースが多く、ベトナムにおいては競合は塾というより、学校の先生である、ということもわかりました。

2つ目に関しては、誰よりも顧客のことを考えているのは現場だろう、という仮説のもとで、ほぼガイドラインなどがない状態でどのような顧客体験を作っているのだろう、また現場の顧客に対する理解と、ユーザーインタビューで得られた生の声にギャップはあるのか、という疑問を解消するために、徹底的に現場メンバーと話を始めました。結果として、個人としてはかなり工夫をしながらサービスを提供していることがわかるとともに、十分なサービスを提供するのに欠けている人材、教材、ガイドライン、システムなどが明確になってきました。

最後にベンチマーク企業のリサーチをかなり詳細に行いました。イシュー発見については1,2でかなりわかってはきたものの、どのような解決策が必要なのか、実際に成功している企業はどのようにサービス提供を行っているかを調べ、把握した問題に対する解決策をリストアップしていきました。

学習塾ビジネスはお世辞なく日本が最も進んでいるビジネスの1つであり、色々なルートを辿りつつ、様々な塾の方からアドバイスをもらいました。同時にベトナムの塾や教師などとも対話を重ねました。

7,8月: ガイドライン作りとトレーニング

この期間はアイデアは良いはずなのに数字としては現れてこない、非常に苦しい期間でした。現場をみても少しずつよくなってきている感じがするものの、実際に数字で見てみると継続率はよくなってきていない。もどかしさを感じた日々でした。

この期間に主に行ったこととしては、6月に行った現状把握から、一気に基礎的なガイドラインを作り、トレーニング、トレーニング内容に関するテスト、現場にオペレーションが浸透しているかの毎週のチェックなどです。今思うとオペレーションをチェックするための仕組みが整っておらず、まだ現場の人一人一人と話ながら理解を確認しているような状態で非常に効率は悪かったです。とはいえこの頃はまだ全アクティブ生徒の名前と特徴を覚えているくらいN1に拘っており、共通するイシューを集めて大きめのものから解いていくという感じでした。

9月: OMOが数字として現れ始める、オンラインライブ配信事業のユーザーリサーチを開始する

9月はベトナムにおいて新学年が始まることもあり多くの新しい生徒が入ってきました。また夏休み期間と比べると圧倒的に継続させるのが楽という季節性、シンプルにインプリが浸透し始めたことなどが合わさって継続率が大きく伸びました。9月に実際に数字の伸びを見るまではかなり不安で、「正しい意思決定をできているのだろうか」と思っていましたが、数字として見えたことで、この方向性で問題ないという確信を持つことができました。こうしてある程度伸びてきたことで、さらに細部まで拘ってガイドラインを作っていきました。元々は1つのメインフローのガイドラインのみでしたが、オンボーディング、2回目の授業、週次の学習計画ミーティングをはじめとした20近いガイドラインを作り、優先度に合わせてインプリをしていきました。

OMOをある程度伸ばせたことで、同じスキームでオンラインも伸ばそうという流れになりユーザーリサーチから何をバリュープロボジションにしてどのような人を対象にすると必要とされるサービスになるのかを考え出したのも9月でした。やはりここでもまとめてかなりのインタビューを行い、ここでのインサイトを元にして今に至るまでの改善を続けています。

10月: 部門長になった瞬間の死にかけながらの採用、体調崩す、オンラインのインプリとOMOの仕組み化

9月までの働きなどもあり、10月からは正式にサービス体験とオペレーションの部門責任を持つことになりました。更にやってやるぞと意気込んだのも束の間、39℃の熱を出し(写真のやつです)、さらにその熱を出している間に学習塾側で一緒に働いていたリードの現地の方がやめることを決め(結局今は戻ってきてくれたのですが)、オンライン側の新しいリードの人はミスマッチでうまくいかずに試用期間で去っていくなどもあり、もうなんとかオペレーションを止めないために人を探して、面接をして、引き継ぎをして、、というもう二度と繰り返したくない時間を過ごしました。部門責任を持つということは採用もそうだし、オペレーションが止まったら自分のせいだし、とかなり厳しい状態でした。そんなことも重なるうちになんだかこれまでのようなハードワークが効かなくなってきて、cotreeのコーチングを受け始めたり、ビジネスコーチングの本を読んだりとなんとかメンタルを整えながら、二歩進んで一歩下がるような日々を越えていました。

悪いことは重なるもので、こういう風にアップアップしていると、6月から自分のチームでやっている後輩からも「最近タスク振りが雑で面白くなくなってきている」と相談を受け、マネージャーとして少なくともメンバーにはどんなにつらい状況でも普通に接して、楽しく働いてもらえるようにしなければいけないなと反省しました。この10月の経験は今後にも生きてくるなと思います。

と、メンタル的にも時間的にもかなり大変な日々だったのですが、OMO, オンラインともにスタッフの執行を可視化できるようにするシステムを作り、しっかりと管理し始めたのも10月でした。9月にまだ一人もフルタイムがいなかった僕の自称BIチームに入ってくれたメンバーがかなり仕組み化をうまく進めてくれ、インプリの管理が楽になりました。

BIメンバーと接するうちに、UX research的な質的調査に類いまれなる才能を発揮する人、Business Analyst的な業務分析とシステム作りに才能を発揮する人、それぞれ光るものが違うのだなということにも気づかされました。適正のある分野を見極め、メンバーに輝いてもらう、やりやすいように全力サポートするのがマネージャーとしてやらなければいけないことだともこの時期に気づきました。何事も適材適所なんですね。

11月: OMOをがっつり仕組み化、オンラインは授業クオリティを高めまくる。

元々OMOに関してはかなりスケジュールなどにも柔軟性を持たせていつでもなんでも自由に勉強できる、ような状態にしていましたが、さすがに人数が増え、さらにコストの最適化を図ろうと思ったときにある程度柔軟性を犠牲にしてでもシステムでマッチングを管理することにしました。

オンラインに関してはオペレーションや授業外サポートなどは充実し、サーベイなどでの評価もよくなっていたものの、やはりコアである授業の改善が必要でした。ここに関しては僕自身もインストラクションデザインを学び、日本、中国のオンライン授業を徹底的に研究し、こちらもガイドラインに落として授業のクオリティも標準化していくようにしました。これにより、テストしたいくつかの科目に関しては大きな改善を数値としても見ることができ、方向性に自信を持つことができました。

12月: OMOがかなりよい塾レベルの継続率になるがたくさんの課題を見つける、オンラインが目に見えて伸び始める、チームが安定する

12月には10~11月に採用した人たちが状況になれてきて、かなりよいパフォーマンスを出し始めてくれました。僕自身もそうした人たちを頼れることになったので、より時間を使って現状の課題を見つめることができた12月でした。

OMOに関しては10~11月にかけて行った仕組み化、現場リードにより大きな責任と決定権を持たせつつ、その上でフィードバックする仕組み、売上を最大化する上で見るべき継続率以外の指標に関する施策、のすべてが噛み合い、かなりよいサービスクオリティの塾にまで成長してきました。しかし、全体としてみるとまだ改善点は山ほどあります。

オンラインに関しても授業クオリティ、授業外サポート共に大きな進化をみせはじめ、継続率としても見始めた頃と比べると信じられないくらい成長しました。とはいえ、アクセル全開で大量獲得するにはまだあと少し継続率や受講科目数を増やす必要があり、ここは今後数ヵ月で解決していきたいところです。

そして無事フルスロットルのやる気も戻ってきて再び全力疾走ができるようになっています。まだまだこれからです。

おわりに:

2020年、コロナウイルスの影響もあり、昨年までの当たり前の日常と今の当たり前は大きく変わりました。日本には年に三回くらい帰るつもりだったのにいつ帰れるかはわかりません。

2021年はなんとかコロナウイルスも落ち着いて、OMO塾、オンラインサービスともにベトナム全土で知られ、使われ、愛される状態を目指して連休後から再び走り始めたいと思います。みなさん、お体には気を付けて、よいお年をお迎えください。では。

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