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機械仕掛けのコウノトリ 43

第1話

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「それでは子供達を連れてきますので、少し、お待ちいただけますか?」

そう伝えた。振り向く足が重く、家の中の空気も重い。

気持ちも歴史も記憶も全てが私の行動への違和感をしっかりと伝えているにもかかわらず、開け広げられた玄関の小さな異物が国の正義を突きつけてくる。

階段を上がると彼らが見えることはないのに、抗えない私の弱さが突きつける胸の苦しみに響きを与えている。

宏人の部屋を開けると本を読みながら、何事もないと首をこちらにひねる。

「宏人、先週話した泊り先の人たちが来たから一緒に行くよ」

私の声を何も気にしないように宏人は読んでいた本をパタリと閉じて、自分のバッグの中に仕舞う。

何も言うこともなく、そのまま部屋を出て私の後をついてくる。

その姿は私よりもよっぽど大人で何もかもを理解しながら、それをまるで他人事のように見つめている狂気的な感覚を宏人は持っていた。

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