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機械仕掛けのコウノトリ 36

第1話

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 「お母さん。何かあったの?」

静けさが包んだリビングにかかる声に私の背中はまた凍った。

振り返ると和人が無垢な丸い瞳で私を見上げていた。私はその姿を見た瞬間に親に戻れた。

「ううん。何でもないよ和人」

私の笑顔は自然と作れていたはずだ。私にさえ何が起こっているのかわからないけれど、それだけはわかった。

和人はまだ純粋な瞳でこの部屋の中を映しとり、純粋さゆえにその違和感を明確に感じ取る。

「お父さんはいないの?」

私は和人の目を見れるほど純粋でいられる気はしなかった。微動だにしない和人にそっと近寄って抱きしめた。

「うん、今日は仕事早いからって先に出て行っちゃったよ」

小さく暖かい和人の感触が私を慰める。和人はそれ以上の何も言わなかった。

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