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機械仕掛けのコウノトリ 6

第1話

前話

 昔、祖母に聞いた話では、この法案が国会で通った時、大きな暴動やデモが起きたのだそうだ。

その姿は居もしない子供を守ろうと威嚇する想像の怪物であり、そこに参加するほとんどが自分のやっていることの意味を理解していない顔に見えたそうだ。

そして、彼ら彼女らを行動に起こすまで突き動かした理由はとてもシンプルで、持っていた自由を奪われることへの怒りだった。

それは生後二、三歳の子供が自分のおもちゃを取られて泣き叫ぶ本能と同じで、逆にその頭の悪さが政府にとっては法案の成立を遅らせる要因になった。

しかし、この行動が遅延という状況を招いたことで功を奏したこともあった。

それは、暫定案で上位二十%ほどに絞られた権利がほぼ全ての人に許可されるレベルに調整されたことだった。

法案の修正により、人々の抗議は段々と鎮火していくこととなった。

それは当然のことで、権利が上位者のみに与えられた場合、それに抵抗することは革命であり、大義名分は強く自分を動かすことになる。

しかし、一般の普通であることが条件となるものに抵抗をした場合、それは自分が愚かであることを晒し続けることになる。

平均や一般を離れるものはどちらにしてもその意見はつまはじきにされる。

これは政府による国民の懐柔策になったわけだが、それをわかるわけもなく感情の問題は蜘蛛の子を散らすように消えていった。

次話

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