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セールスメソッドとかテクニックとか、そんなのより大事なお話(でもMEDDICは良いぞ)

皆さんこんにちは。今回は一部の外資系IT業界で活用されているセールスメソッドMEDDICについてお伝えしつつ、本質的なポイントをお伝えしたいと思います。Twitterで僕をフォローして頂いている方々は目にしたことあると思いますし、僕が昨年より実施しているセールストレーニング #旬トレ を受講された人はMEDDICが何なのか知っていると思います

このnoteでは、MEDDICについては細かく説明しません。内容を細かく知りたい人は過去僕のトレーニングを受講した2名の方が残した記事を参照ください。トレーニングメニューの第2部、セールスメソッドのところでMEDDICを説明しています。しかしこんな長いの読む時間ない!という人もいるでしょうから、↓に簡単に説明しますのでそちらを見てもらえれば概要が理解できると思います。

ちなみにこの #旬トレ は今のところ費用をいただく事なく無料で提供しています。実施してほしい!という方おられたら個別にTwitterのDM等でご連絡いただければと思います。できるだけ受講企業の状況やレベルに合わせて実施させてもらいます。

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さて、このMEDDIC、知っているのと使えるのは別ですし、使えるのと効果を出すのもまた別です。ただのツールです。ていうかそもそもMEDDICって万能なの?他にもあるでしょ?と思う人もいるでしょうね。なのでこのnoteではこのMEDDICは有用なものであるけど、効果を出すために忘れてはいけないポイントについてお伝えします。

MEDDICの概要

さてまず最初にMEDDICを簡単に説明しますね。まずMEDDICの目的ですが、「案件を期日までに確実に受注するため」のものです。セールスマネージャーや事業責任者、社長にとって非常にセンシティブかつクリティカルな「フォーキャスト」を確実にするためのものと言い換えてもいいです。

なのでMEDDICは営業担当者自身の案件管理のためだけではなく、マネージャーとの間での共通言語とし、チームにおけるフォーキャスティングに使ってもらえると良いです。

では、まずMEDDICについて説明しますが、見て分かるとおり、6つのメソッドの頭文字がMEDDICとなります。読み方は「メディック」です。普段トレーニングではビジネスの時間軸に合わせて順番を変えて説明しますが、ここではMEDDICの順に解説します。

M: Metrics (正確にはCreate Metrics)

これは一言で言うと「測定可能な(定量的な)効果を特定し合意する」ものです。わかりやすく言うと、あなたが提供するプロダクトやサービスによって顧客の売り上げや市場シェア、生産性や開発スピード等が増大したり、投資コストや事業リスクが減少するものを指します。いわゆるROIってやつです。

E: Economic Buyer(EBといいます)

世の営業の世界では「決裁者」とか「意思決定者」とか「ディシジョンメーカー」とか色んな呼び名で「おさえるべき上の人・買うか買わないか決める人・最後の砦」と位置付けられている人を特定し、その人へのアプローチを試みます。

が、EBは上記のどれにも該当しません。正確にはEBが決裁者だったり意思決定者だったりすることはありますが、その逆はありません。なぜならEBは「拒否権」をもつ人/組織のみを指します。意思決定者が決定した事項をひっくり返すことができるのがEBです。

そしてEBは人ではなく、特に上場企業の場合案件サイズにもよりますが、ほとんどのケースでEBは役員会議となります。つまり個人ではない事があるのがEBです。

Decision Criteria(DCといいます)

これは一般的にも使われるものですが、いわゆる「意思決定基準」です。顧客は何を基準に購買の決定をするのか、というものですね。

MEDDICにおけるDCのポイントはひとつ。「DCはコントロールできる(営業がコントロールすべき)もの」という点です。

本日的には、顧客が達成したいビジネスゴールがあり、そして課題(Pain)がある。そのPainを解決するためにあなたの提案しているプロダクトやサービスを検討しています。

しかしセールスサイクルが長期化する場合に起こりがちですが、ソリューションは本来手段であるはずが、ソリューションを決定することが目的になってしまい、DCがブレて「安いものが良いよね」となったりします。こうならないように営業は顧客のDCがブレないようにしないといけませんし、ブレたときはコントロールする必要があります。

Decision Process(DPといいます)

ここは落とし穴が多く、案件が狙っていた期日までにクローズされずにプッシュしてフォーキャストがズレる事が発生します。MEDDICにおけるDPのポイントは2点です。

1. 非公式なプロセスも確認して把握する
2. 日付軸でプロセスを整理して合意する

企業の組織は人で形成されています。人が進める以上、そこは100%ロジカルに進むものではなく、頻繁に感情や忖度が介在します。ここが非公式のプロセスというものです。例えば新任役員がEBである場合、多額の意思決定をする際はタバコ部屋で前任の先輩役員に相談する事が多い、といったものです。

日付軸で合意するためには営業が双方のプロセス(契約締結までの流れと役割)を日付軸で流れを記載し、「これで合ってる?違ってたら正してね」とメール等で送り、進捗状況を確認して期日通り進んでいるかを確認します。

僕の言うDPは「提案してから契約書を回収するまで」と広く定義して説明していますが、企業によっては以下の様に分割してそれぞれの粒度を細かく把握して管理していたりもします。参考までに。
 - 決定プロセス(DP: Decision Process)
 - 承認プロセス(AP: Approval Process)
 - リーガルプロセス(LP: Legal Process)
 - 購買プロセス(SP: Sign Process)

Identify Pain

ここが何より重要。というかここがクリアになっていないと案件になりません。ビジネスゴールをPain(課題)と勘違いし、顧客から「やるべきこと•チャレンジングなこと」をヒアリングしたら鼻息荒く「そのゴール達成に向けて提案します!」と言ってしまう営業が非常に多いと思いますが、それでは売れません。売れたとしたら顧客が非常に賢いからで、あなたの実力ではありません。

Painは、「ビジネスゴール」−「今の状態」です。ビジネスゴール達成に向けて顧客の中の人たちは色んな事をやってます。今何をしてて、どういうステータスで、何がタフな障壁なのか、何を必要と考えているのか、それは何故なのか、を顧客に語ってもらいます。その「ゴールと今のギャップ」がPain(課題)であり、そのPainの裏返しがニーズです。

Champion(CHと書きます)

特にエンタープライズ(大手)企業向けの営業活動において最も重要なのはCHです。これがいるかいないかでセールスサイクルや受注確度が大きく変わります。

CHは、一言で言うと「あなたの代わりに顧客内を営業してくれる代理人」です。なので競合を排除してくれたり、顧客社内の根回しや交渉をしてくれたり、面倒なプロセスをショートカットしてくれたり、といい事づくしです。このCHを探す・育てるという活動がエンタープライズセールスにおいて非常に重要になります。

なので、CHは「購買に対する影響力がある人」がなり得ます。顧客内部で役職が高く権力があったとしてもあなたの案件に関して購買の意思決定への影響力が無ければ、その人はCHではありません。ここ重要です。

そしてさらに忘れてはいけない注意事項は「ニセCH」の存在です。まるであなたの唯一の理解者のように振る舞い、プロダクト/サービスを褒め、買うべきですね!と言い、営業はとても良いミーティングを終えます。そして上司に「ライトパーソンに刺さりました!今月いけるとおもいます」と報告します。舞い上がる前に偽物か本物かを見極めましょう。簡単に見分ける方法の1つが以下の質問です。

「EBに会わせてもらえますか?」

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MEDDICは万能なのか?

さて、このMEDDICは万能なのか?という観点で僕の考えをお伝えします。万能ってどういうことかというと、「MEDDICを完璧にすれば全ての案件が確実に期日までに取れる無敵メソッド」という意味で使っていますが、結論から言うと、「明らかにNo」です。

すみません。ドヤ顔で書き並べたくせに万能じゃないなんて。金返せ。

どういうことかと言うと、MEDDICはただの管理メソッドだからです。もっと具体的に言うと、例えば営業担当者とマネージャー間において「期日までに確実に受注をするために致命的な抜けもれやリスクはないか?ある場合いつまでに誰に何をするか?」というネクストステップを明確にするものです。なので「MEDDICを聞き出してこい」という指示はマネージャー失格です。MEDDICは顧客から聞き出すものではありません。CHがいない場合はどこにいけば発見できそうか、CHぽい人はいるけどなかなか見極められないとか、MEDDICを確たるものにする際にマネージャーは営業担当に具体的なアドバイスをして前に進めてあげる必要があり、その活動の解像度を上げるために使います。

さらに「顧客のPainは何か」と言語化するにあたり、ビジネスゴールをPainだと勘違いしていたり、「ビジネスゴール - 今の状況(つまりGap)」という事は分かっているけどなかなかIdentifyできないという場合もよく起こります。「Painは何?」と聞くだけならマネージャー不要です。botでもできます。営業担当がPainを顕在化させる事に苦労しているのであれば、そこに寄り添いアドバイスをしたり顧客とのミーティングに同席して代わりにコミュニケーションをとったりするといった並走がマネージャーには必要です。

一流セールスが持つスキル

なんとなく分かってきた人もいると思いますが、結局MEDDICを有用なチェックリストとして活用でき、案件を期日までに確実に受注するために必要なものは「ベーシックなコミュニケーションにおける課題の顕在化の能力」です。

話飛びました?ちょっと要素分解しましょうか。

ベーシックなコミュニケーションというのは人と人の会話のことを指します。対顧客とかに限らず、全ての対人との会話です。会話=話す、と思っていると成立しません。会話の基本は聴くことです。相手自体に関心を寄せ、何を考え、何を伝えようとし、何を想いながら話しているのか、そこに意識を向けます。

一般的に人は1分間に225語を話す事ができ、1分間に500語を聴くことができると言われています。このデータは英語における語数ですが、つまり人は聞きながら残りの275語ぶんのCPUを無意識に使いにいき、結果会話の際、無意識に別のことや「次にこれを言ってみよう」とか考えてしまうというのです。

なので目の前の相手に100%向き合って聴くことは強く意識しないとできないのが、私たち人間なのです。

もし、あなたが目の前の相手に100%向き合って訊き、そして聴くのは嫌だというのであれば、極端な話、ひたすらSNSやブログに持論を放ち続けてください。

人と会話する環境に身を置いているのであれば、訊いて聴く(Ask and Listen)を強く意識して下さい。しんどいことですが、これがベーシックなコミュニケーションです。

2つ目、課題の顕在化の能力ですが、簡単に言い換えると「目の前の人は何に困り、何に悩み、何をしたくて、何ができずにいるのかを質問しながら買い手に自覚してもらうこと」です。

人はつい自分の知っていることを教えたがりますし、話したがります。何故ならそうすれば人は自分に注目し、人の話すことに100%関心を寄せるという、とてもしんどいことをせずに済むからです。

そして多くの営業という生き物は、目の前に少しでも売れる(かも)というニオイに敏感です。中途半端にヒアリングしたら「弊社のソリューションでお手伝いできると思うので、ご提案をさせて頂いても宜しいでしょうか」と言ってしまいます。この時点で営業が把握しているのは「目の前の人」が抱えている「(ごく一部かもしれない)問題点」にしかすぎず、果たしてそれが会社として、組織としての問題なのか、そしてその問題を解決するために何がハードルなのか、障壁なのか、今何をしてゴールを目指しているのかを把握できていませんし、目の前の担当者の自覚にも当然至っていません。

ベーシックなコミュニケーションにより、相手の会社•組織として目指すゴールとそこに付随する問題点を明確にし、その問題を解決する事を阻む課題を買い手に自覚させる。これがとにかく必要ですし、これを体現できている人が極端に少ないから買い手は営業をノイズやストレスの代名詞のように扱って「セールストーク並べて売り込まれてる」と感じるわけです。

MEDDICはただのツールです。このツールを「使っている」だけでは収益が上がりません。それぞれの項目をきちんと埋めていくために必要なスキルは別にあるということを、MEDDICを広めるにあたって併せてお伝えする必要があると思い、このnoteを書きました。

- ベーシックなコミュニケーション
- 課題の顕在化

この2点を向上に小手先のテクニックはないので、トレーニングとコーチングをしながら世の売り手のクオリティを上げることに貢献し、結果として買い手の経済合理性や生産性の向上に良い影響を与えられることができたら嬉しいです。

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