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海岸は、宝の山 〜流木に命を与える藤池さん〜

恐竜の名前にするとすぐ売れる

流木を拾ってもインスプレーションがわかないと海に還すの繰り返し。

静岡県西伊豆町在住の藤池作男さんは、海岸で拾った流木に独自のネーミングをつけ、直売所『はんばた市場』に卸している。

「これは鳥が飛んでいるように見えるよね。これは、流木星人。こっちはカミツキガメの親子……。」

特徴的な形の流木がたくさん。乾かしてから出荷する。

流木が打ち上がりやすいのは、海が荒れた後。ユニークな形の流木を見逃さないよう、海岸を必ず往復して探す。そうやって見つけた流木の姿かたちからイメージを膨らませ、何かに見立てた名前をつける。
時には魚の図鑑を見たり、アニメのキャラクターやディズニーシーの島の名前について、お孫さんに尋ねたりすることも。つけた名前はシールにして流木に貼り付け、直売所に持っていく。

「流星群でやって来た流木星人」。設定が加えられることでイメージがぐっと膨らむ。

「単に『鳥』とか『山』じゃなくて、面白くしたいなと思って。名付けのこだわりは特にないけど、『寝てる猫』『流星群からやってきた流木星』とか、具体的な名前にしてる。『○○ザウルス』とか、恐竜の名前をつけるとすぐになくなるね。」

藤池さんが流木を拾って直売所で売り始めたのは2年ほど前。もともとは直売所に天草や山菜などを卸していた。

「最初は天草や明日葉を卸してたのね。そしたら直売所が新しくなって、『流木やシーグラスも置かない? 地場産品でおもしろいと思うよ』っていう話が、向こうから出たの。
天草漁をやっていると、ずっと同じ姿勢になるでしょう。漁の合間に、気晴らしに海岸を歩きながら拾っています。」

天草、自然薯・明日葉などの山菜に、流木。藤池さんが扱うのは、自然に自生しているものや落ちているもの。「元手のかかる商売をしない」のがモットーだ。幼い頃の山菜採りの経験が、今の商売につながるルーツになっている。

行きつけの海岸は7つある。
「海岸は、宝の山」

「僕はお金をかけた商売はしない。山菜だとか自然薯だとかね、元はタダ。自然のものを安く売る。自然っておもしろいですよ。海岸だって、宝の山。
もともと秋田出身で小さい時は山奥に住んでいて、山菜が豊富だったの。春になるとワラビやゼンマイ、コゴミとかがいっぱいあるわけ。たまたまおばあちゃんが山菜の仲買をやっていて、採った山菜をおばあちゃんとこに持っていくと、すぐにお金になったの。舞茸も生えててね。赤羽と黒羽っていう2種類あって、人気なのは黒羽。一回見つけると、数千円は稼げたの。小学生当時からすると、そんなお金なんて稼げないよね。
貧しくて、小遣いなんて盆や正月、お祭りぐらいしかもらえなかったから、山菜採りで稼いでいたの。」


買ってどうするのか、僕が聞きたい

『マンボウ』

藤池さんにとって、ご商売のメインは天草や明日葉で、流木はあくまで「趣味」。直売所には、藤池さんの採った明日葉をめがけて買いに来る人もいるとか。天草や明日葉の相場は気になるが、流木がいくつ売れたかはあまり気にしていない。

「趣味だね。ご飯で言えば箸休めみたいなもの。これで儲けようとも考えてない。見て楽しむものだと思うからね。流木はほとんどが500円。子どもの小遣いで買える程度なんです。
せっかくコーナーを設けてもらったから、何も置かないのは悪いと思って、時々見に行って。在庫がなくなってくると1000円に値上げして、その間にまた新しいのを補充してくる。」

海が荒れて波が高かった日の後は、流木がたくさん海岸に流れ着く。
拾ったら、いろんな角度から眺めてみる。

しかしお気に入りの流木は、売れないようにとびきり高い値段をつける。

「合体したら聖火トーチに見える流木があったの。それは売りたくないと思って、5000万円ってつけた。あくまで客寄せ。ちょうどオリンピックの時だったから、観光客が引っかればいいかなって。でもコロナで観光客が来なくなっちゃったけど。」

流木に関しては、今後の野望も特にない。購入した方にどう楽しんでもらいたいか聞いてみると……

「逆に僕が聞きたい。これ買ってどうするのって。僕だったら買わないね。ただ、見て面白いなとは思うけど。店の人に聞くと、安いねって2つ3つ買ってくれた人もいるみたい。『ああ、そう』って言うんだけど、気持ちはちょっと分からないね。でもせっかくコーナーを設けてくれたから、切らさないようにはしてる。」

流木拾いのコツを尋ねたら「コツはない、流木に呼ばれるだけ」と語る。

「自然っておもしろいですよ」と言う藤池さん。自然を相手に身一つで様々なものを手に入れ生計を立てている藤池さんの、ゼロからイチを生み出す姿は、たくましく力強い。

執筆:村田あやこ
取材・写真:齋藤洋平



藤池さんを講師として招き、流木を見立てまくるワークショップを行います!

日時:2023年2月18日(土)13:00~15:00(ワークショップは13:30~14:15)
場所:生きいきプラザ  第4会議室(〒410-2413 静岡県伊豆市小立野66−1)Googleマップ
参加費:無料(先着10名ほど)
持ち物:なし
参加方法:予約不要ですが、人数把握のため下記のフォームに記入いただけると助かります。利用人数に制限があるため、参加人数が多い場合は会場に入れない場合もあります。
※流木が何に見えるのかを言い合う簡単な会なので、小さいお子さんにもご参加いただけます。

ワークショップ参加フォーム

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◎オープニングプレゼン(13:00~13:20)
タイトル『趣みん芸とは何か?』
今までに取材した趣みん芸アーティストの紹介など。

◎ワークショップ(13:30~14:15)
タイトル『今日からあなたも趣みん芸アーティスト 〜流木アート編〜』
海岸で拾った流木に独自のネーミングをつけ、西伊豆の直売所『はんばた市場』に卸している藤池作男さんを講師に招き、流木を見立てあう会。

ステップ①:見立ててみよう!「流木フィーリングカップル」
ステップ②:名付けてみよう!「名前で売ろう」
ステップ③:見立て名付けてみよう!「今日からあなたは流木アーティスト」

◎収集作品展示(13:00~15:00)※自由見学
収集してきた作品50点余りを展示。

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めちゃくちゃ面白いワークショップになると思いますので、是非ともご参加ください!!

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