
第二回読書会:堀辰雄『風立ちぬ』レポート
美しい情景描写と優美な文体が、登場人物たちの曖昧さや、死にゆく人との一体感を引き立たせている、、、 とはいえ、正直読みにくい作品です。
(多分、読書会で取り上げなければ、またもや挫折してたかも)
同題名の宮崎駿監督作品の影響はやはり強く「いつ飛行機作るんだろうと思いながら読んでた」という声がちらほらありましたが、実はそれも狙って本作品を課題本に選びました。
原作では飛行機作りません!あしからず!
そうなると、宮崎監督の解釈は凄いなーと思うわけであります。
薄幸の美少女、サナトリウム文学の代表格的この作品。
登場人物たちは全体においてあやふやで、噛み合っておらず、ズレを感じるといった意見が多く聞かれました。
主人公と闘病中の節子との二人きりの場面でほとんど展開していくため、ややもすると、節子の闘病記という解釈になりそうなものですが本質はそこではありません。
「風立ちぬ、いざ生きめやも」(風が立った さあ生きなければならぬ)
主人公はふとした時々にこのフレーズを思い出します。
だんだんと弱っていく節子。

そんな中でも、節子の実父に対する態度が主人公に対するそれとは違うという葛藤と切なさと焦燥感は消えず、ここの人間関係をどう読むか……
ちなみに、女性陣からは主人公が節子のことを「お前」と呼ぶことに横柄な態度を感じたとの声が多数寄せられました。
もちろん男性陣は、それは時代が違うからと反論!男言葉、女言葉、この辺りもまた違う方向に深掘りしていけそうです。
また、冒頭と最後の場面で風が吹いているのですが、その描写が異なるため伏線として面白いと指摘があり、なるほどと思いました。
よく読めば伏線がたくさん張られていて、2回読むとその読後感はまた違ったものになります。
主人公ははたして救われたのか?それともあやふやさから抜け出せずにいるのか?二度読んでほしい『風立ちぬ』でした!
2019年9月7日土曜日開催

【参加者募集】
「週末の夜の読書会」は毎月一回開催しています。
いっしょに文学を語りませんか?
【会場情報】
【第2回課題本】