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第29回読書会レポート:梶井基次郎『桜の樹の下には』(感想・レビュー)

(レポートの性質上作品のネタバレを含みます)

今回は超超短編を選んでみました。

知る人ぞ知る傑作です。

今回は超短編ということもあり、ハードルが低く
初参加の方も2名いらしていただきました!

初の試みで、私の朗読から始めてみましたよ!

100分で名著をやってみたかった♪

これからも色々チャレンジしていきます!

会の雰囲気が伝わればと思い、Live配信時の動画を貼っておきます


参加者の皆さんの感想

・生と死
・美と醜
・詩のような雰囲気
・よそ者感、疎外感


桜の意味とは?

印象に残った議題として、桜の意味についてです。
なぜ、他の植物ではないのか?という意見がでました。


例えば梅の場合、枝に一輪一輪が独立してしっかりと咲いていて、甘いいい香りを漂わせるため、個人的には好きな花です。ただやはり、季節的にはまだまだ寒い日が続いている頃に咲くため、梅を見ても心理的に開放されないように思います。
藤の場合は季節は桜と同じ春に咲く花ですが、他の木に絡まって自立しない上に、枯れ際が干しぶどうのようにしなびてそのままぶら下がっているのがグロテスクで、潔さに欠けているなという印象です。

桜は古来より日本人の心を掴んで離さない存在でした。
やはりその理由の一つ目が、他の植物に比べて散り際が美しいことが挙げられると思います。
枝に直接花が溢れるように咲き乱れ、枝一杯に広がる淡いピンク色は可憐であり華やかでもあります。
そんな花が枝から一斉に散っていく様子は潔く圧巻で、見るものの目を奪います。
また季節も春の穏やかな日差しが増えてくる頃で、人々の心理的にもウキウキワクワクと上向いてくる季節であり、その効果もリンクしているのではないでしょうか。

さまざまな要素やタイミングを鑑みて、桜はやはり国花にふさわしい特別な花と言えるでしょう。

(ちなみに日本の国花は桜ともう一つ。
菊もだそうです!二つなんですね!)


矛盾を両立させる人間・完全さへの異議申して

そんな桜の樹の下に、死体が埋まっているんだ、というセンセーショナルな書き出し!
これは、藤でもなく、梅でもない、絶妙な集合意識を捉えた一言だと思います。

冒頭で語りの「俺」は桜の美しさが信じられず、不安だったと打ち明けています。
その後に「安全剃刀」にまつわる妄想が続きます。

安全と命名されている剃刀。
矛盾が両立するこの世界に俺は心を奪われ、そこに真理を見出そうとしているようです。

あまりの美しさに。その内側では目を覆う醜さがなければ、この世の中では成立しないはずだと。それが認めざるを得ない真理だと。

表と裏、右と左、美と醜、生と死……二元論で片付けたがる人間の習性を的確に捉えた表現のように思います。

可愛いけど性格悪い、お金持ちだけどケチ……人を評価する上でどうにも完璧なものを見てしまうと、そこに欠落部分を見出してバランスをとり溜飲を下げる。そんな人間の習性を表しているようにも思います。

「完全さへの異議申して」という意見も出てなるほどと思いました。


「村人たちと同じ権利で酒が飲めそうな気がする」とは?どっち?

最後の一行「今こそ俺は、あの桜の樹の下で酒宴をひらいている村人たちと同じ権利で、花見の酒が呑めそうな気がする。」とありますが、ここでの村人に対する解釈が別れました。

美醜の両立、矛盾の存在をとっくに受けて入れている存在である、と捉えるのか? 逆に何も知らず考えずに花より団子でその場を楽しんでいる存在と捉えるのか?

個人的見解としては、この世の理をとっくに知って受け入れて楽しんでいる、俺より先を行っている存在が村人であると考えました。
そうでないと、同じ権利とは言い難いと思うのです。

俺もやっと一つの真理を消化できて、ようやく美味しい酒をみんなで呑めるようになったようです。

(2022年6月5日日曜日開催)


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