Vol.15 福祉の視点から見えるダイバーシティ~千葉キャンパス見学~
はじめに
こんにちは。
淑徳大学 杉原ゼミの町田です!
今、ゼミの研究では、絵本や玩具における「ダイバーシティ」について学んでいます。
そこで今回は、研究の一環として、
「福祉の淑徳」の原点である千葉キャンパスを見学させていただきました!
私が通う東京キャンパスは板橋区にありますが、
淑徳大学は1965年に福祉の単科大学として千葉市大巌寺に作られた大学です。
福祉の専門家を養成する大学としてスタートしているので、
福祉の視点からダイバーシティについて学ぶ機会にしたいと考えました。
千葉キャンパスについて
千葉キャンパスは、JR蘇我駅から無料スクールバスで約8分ほどのところにあります。
ここでは、学生が主体となって蘇我駅とのコラボを行っているそうです。
車いすの人たちも楽しめるコーナーの企画を考えたり、
自分たちの足で歩きながら福祉マップを作ったりなど、
地域もキャンパスとしてプロジェクトに取り組んでいることを知りました。
そして、1号館の淑水記念館は通称「丸館」とも呼ばれています。
1965年の開学時からある建物で、千葉キャンパスのシンボル的存在となっています。
発達臨床研究センター
発達臨床研究センターとは
淑水記念館(丸館)の1階には、発達臨床研究センターがあります。
発達臨床研究センターは、発達につまづきや気がかりを示す乳幼児および
小学生を対象とした療育・相談機関です。
この研究センターは、淑徳大学の開学と同時に開設された
「淑徳大学児童相談所(昭和40年~46年)」から始まっています。
平成22年(2010年)からは、大学のキャンパス内に新たに設置されました。
ここでは、
「一人ひとりの育ちの過程をかかわりの中で的確に理解していくこと」と
「一人ひとりの発達理解に合わせてかかわりを工夫していくこと」
の2つを大切にしています。
総合福祉学部の学生がチームとなって、
個別課題学習・集団音楽・運動療法などの療育を行っています。
教材や教具を使用しながら子ども一人ひとりに合わせた発達の支援しています。
池畑美恵子先生に、学生たちが作っている玩具やセンターのことを教えていただきました。
個別指導室
個別療法では、個別で専門スタッフと一人ひとりの発達段階に合わせた
プログラムを実施しています。
ここでの過ごし方は子どもによって様々です。
また、部屋にカメラが設置されているため、お子さんの発達の経過や
遊んでいるありのままの姿を見ることができます。
録画した映像から療育場面を観察できるようになっています。
年に数回、保護者を対象とした講演会も開催されています。
手作り玩具
学生たちが作った玩具や教材が置いてある教材室を見せていただきました。
部屋の中には、木の玩具・布絵本・しかけ絵本・パズルなど、
お店では売られていないオリジナルの玩具が沢山ありました。
学生の「もっとこういう玩具があったら良いよね」という意見から
玩具が生まれ、子どもの発達の経過によって玩具の難易度やレベルもアップさせていることを知り、驚きました。
実際に、木で作られた型はめパズルを触ってみると、
はめた時にピタッとくっつく感覚がありました。
実は、木の中に磁石を入れており、
ただ穴にはめるという単純な動作の中にも、指先に刺激を与えて
楽しめる工夫がされていました。
また、現役の学生が作ったものだけではなく、卒業生が作った玩具も沢山あり、一人ひとりの発達段階に合わせて玩具を作っていることに感動しました。
子どもを想う気持ちから生まれた玩具は、
いつまでも変わらず、子どもたちを支えています。
プレイルーム
プレイルームは、集団療法を行う部屋です。
小さな体育館のようになっており、3~6人程度のグループで行われます。
ここでは、個人療法とは異なり、音・音楽・光・運動などの
音楽療法と感覚療法を取り入れ、グループダイナミクスと呼ばれる
集団認知・運動療法から構成されています。
楽器やボールを使ったり、ブランコをつるして身体を動かしたりなど、
全身を使った活動をします。
また、ブラックライトを使用し、部屋の明るさを変えることで、
子どもたちが自主的に時間を把握して行動することができるそうです。
心理臨床センター
心理臨床センターについて
千葉キャンパスの13号館には、心理臨床センターがあります。
心理臨床センターは、さまざまな心の悩みや自分を見つめ直し、より生き生きと暮らしたい人を支援する施設です。主に心理専門職(公認心理師・臨床心理士および臨床心理学を専攻した修了生・大学院生)が対応します。
今回は、心理臨床センターの職員であり、臨床心理士・公認心理師の翁長さんから
「プレイセラピー」について教えていただきました。
大人のカウンセリングは主にことばを使いますが、ことばによる感情表現が苦手な子どもの場合、遊び(プレイ)の関係のなかで、感情の表現、心理的な課題の再構成をおこなっていきます。
クライエント(子ども)とセラピスト(スタッフ)の信頼関係の構築では、どのような玩具でどのように遊ぶのかがとても大切になると教えてもらいました。
毎回、同じセラピストとともに、同じ時間・同じ場所で遊び、
しっかりと枠を安定させることで心の安定にも繋がると学びました。
プレイルーム
プレイルームは小さい部屋と大きい部屋があります。
どちらも一人用の部屋ですが、じっくり細かなあそびに取り組みたい人、思いっきりからだを動かしたい人など、
子どもの個性に合わせて部屋を選ぶそうです。
プレイルーム内は、人や物を傷つけなければ、
どのように過ごすかはこどもの自由というルールになっています。
ルールやマナーばかり重視してしまうと、自分がほんとうはなにを感じ、どんなことをしてみたいかに気づくことができない大人になってしまうからだそうです。
ここでは、子どもがありのままの自分でいられる場所になるように
子どもの好きなように遊んだり過ごしたりしてもらい、子ども本人が出してくれた表現をセラピストが汲み取ることを大切にしています。
子どもたちにとって、このプレイルームはストレスフルな現実からいったん身を引き、自分らしい生き方を選び直せる心のよりどころとなっています。
ワンウェイミラー
プレイルームのすべての部屋にワンウェイミラーがついています。
ワンウェイミラーとは、明るい場所から見ると鏡に見えるのに、
暗い場所から見るとガラスのように向こう側が見える鏡のことです。
子どもが遊んでいる姿を、隣の部屋から見ることができますが、
プレイルームの中からは、ワンウェイミラーの向こう側にいる人の姿は見えないので、気を散らさずに遊び続けられます
私たちも実際に入って確認してみました。
すると、本当にプレイルームからはワンウェイミラーの中は
見えませんでした!
玩具が繋げる信頼関係
心理臨床センターを見学し、玩具はただ子どもが遊ぶためのモノではなく、
ことばになりにくい気持ちを表現するための手段であったり、人と気持ちを通わせて関係を築いていく道具であったりすることを学びました。
どんな感情も、本人が表現したい気持ちを受け止めることが大事です。
ここは、喜び・怒り・哀しみ・楽しみなど、全ての感情を受け入れてもらえる場所です。
総合福祉学部の千葉浩彦先生(左)がセンター長を務められています。
千葉先生と翁長さんと一緒に写真を撮っていただきました。
絵本の可能性
戸塚先生と松山先生が、学生さんが作った絵本を紹介してくださいました。
「ぼくできたぞ!!」という絵本は、
発達障がいを持った男の子が主人公になっています。
周りの子たちとは違うという違和感や数字を覚えるのが大変であることが描かれています。
「さわってごらん」という絵本は、
ページごとに「チクチク」「もこもこ」「ざらざら」など
指でさわって感覚を楽しむ工夫があり、1ページずつ丁寧に作られています。
フェルトで作った布絵本は、
ファスナーを開けると中からハートが出てくる仕組みになっていました。
開けるときのドキドキ感と、取り出すときのワクワク感がありました。
しまう時までずっと楽しめます。
しかけ絵本・布絵本・障がいのある子を主人公にした絵本など、
世界で一つしかないオリジナルの絵本がたくさんあり、
ページをめくる度、指先から学生たちの子どもに対する熱い想いが伝わってきました。
絵本は、自分の手で開いてめくって触るからこそ、
発達の支えになったり生活の役に立ったりするのだと思いました。
また、手作りの絵本には制作する側は意図した工夫ができ、
子ども側も楽しみながら読めるところが魅力だと感じます。
千葉キャンパスツアー
ここでは、千葉キャンパスの施設を紹介していきます!
図書館
千葉キャンパスの図書館は、26万冊以上の蔵書があります。
また、階段には車いすの学生でも安心して上がれる昇降機がありました。
そして、可愛い絵本コーナーもあります。
沢山の種類の絵本が置いてあり、この空間の中に入った瞬間、子どもの頃に戻ったような懐かしい気持ちになりました。
ラーニングコモンズ
千葉キャンパスには、ラーニングコモンズという
グループなどで話し合いながら学習できる自習室があります。
ここでは、自由に使えるホワイトボードやPCの貸出なども行っているとのこと。
ゼミやサークルなどの話し合いの他にも、友人と課題をする際にもコミュニケーションをとりながら使用できるのが良いですね。
大巌寺
キャンパスに隣接する大巌寺では、
当日、総合福祉学部 渋谷ゼミの国家資格合格祈願が行われていました。
長谷川俊哉副住職が共にお経をあげてくださり感激しました。
さらに、一緒に写真を撮っていただきました。
おわりに
今回、千葉キャンパスを見学し、
淑徳大学がずっと大切にしている福祉について教えていただきました。
発達臨床研究センターや心理臨床センターを通して
子どもが抱くすべての感情に寄り添うことが大切だと学びました。
ここは、感情を我慢することなく、どんな心も認めてくれる場所です。
障がいは”障がい”ではなく、”個性”だと捉え、その一人ひとりの個性に寄り添ってあげることで、誰もが幸せに生きられる世界になると思います。
優しい気持ちの時は優しさの感情を、怒っている時は怒っている感情を
一緒に共有してくれる玩具が必要だと学びました。
子どもが抱くありとあらゆる感情の多様性を否定するのではなく、
受けとめてくれる玩具と場所を作っていきたいです。
子どもたちの未来と笑顔を守っていくために、私たち学生がしっかりと子どもの気持ちに共感し支えていくべきだと思いました。
また、ダイバーシティや多様性というのは、
「ひとりではなく、みんなでつくっていくもの」だと感じます。
今の私たちにできることを考え、子どもたちの未来を明るく照らしていきたいです。
今回お世話になった総合福祉学部の松山恵美子先生(左)、戸塚法子先生(右)と、淑水記念館(丸館)の前で一緒に写真を撮っていただきました。
この度は、お忙しい中お話を聞かせてくださった先生方、職員の皆さま、
貴重な機会を本当ありがとうございました。
また、今回伺ったお話は淑徳大学のHPにも載っておりますので、
ぜひ、そちらもご覧ください!
以上、
淑徳大学 杉原ゼミの町田が担当しました!
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