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東一西
2017年5月17日 09:08
殺人・隠蔽の罪で女中・お菊と、共謀した罪で喜七・呉八の三人を連行したあと、虎吉を連れて茜と皐は再び中村屋に戻ってきた。事件が解決されて店の者たちはほっとした様子を見せていたが、同時に番頭・平助を失った悲しみ、同僚三人が共謀して殺人を犯していたことに対する驚きもあった。中村屋の玄関で主人・惣衛門と顔を合わせるや、虎吉は平身低頭し、惣衛門に謝った。「旦那様・・・すみませんでした・・・騙して
2017年5月15日 21:36
日が暮れてきた。茜と別れた皐は忍装束に身を包み、中村屋の裏口の方へ回った。中村屋の屋敷は皐月の背丈よりも少し高い塀に囲まれているが、この程度の壁は皐にとっては何の意味もなさない。あっという間に傍の木に登り、そこからひょいと塀の上に飛び移った。「さてと、喜七さんと呉八さんの部屋は・・・と。」中村屋の庭はそれほど広くないがよく手入れをされている。皐は庭の中心あたりにある井戸のそばで女達
2017年5月14日 21:28
「はあ・・・はあ・・・くそっ・・・なんでこんな事に・・・」虎吉はいつも山菜を摘みに来ている裏山まで全足力で逃げてきた。木々が青々と茂り、良質な山菜が取れるこの山は、虎吉にとっては忙しい日々にも落ち着ける、お気に入りの場所でもある。虎吉はいつも休憩に使っている切り株の上に腰かけた。するとその時突然、「さあて何でしょうね?」と、人気のない山で、突然の人声が、しかもかなり近くで聞こえた。