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(後編)【メンズパターンで作る、すべての性別の人のためのオーダースーツ】FABRIC TOKYO 渋谷MODIにてインタビューを行いました

#就活セクシズム  署名チームでは、すべての性別の人がメンズパターンのスーツをオーダーできるFABRIC TOKYOのスタッフの皆様にインタビューを行いました。

あらゆる人々の存在を否定しないような商品展開をしているスーツ販売店の情報が、必要とする人々のもとにもっと届いてほしい、と署名チームメンバーは考えています。今回、その一助となるために、FABRIC TOKYOスタッフの皆様が「Men’s Suit for ALL GENDER」を始めた動機や、接客時に考えていること、また、社会のジェンダーバイアスに対する問題意識などについてインタビューして発信したいと考えました。

前回の記事はこちら



ーFABRIC TOKYOでは、いわゆる「メンズっぽさ」をあまり出さないようなスタイルも提案可能なのですか?

可能です。仕立てがメンズスーツであることを大前提に丈感やウエストの絞りを調整するあたりが分かりやすいところにはなってくると思いますが、まず試着をしてみて考えたい、などの相談ベースで来ていただけたら嬉しいです。できるだけご要望に寄り添いたいと思っています。

ー例えば、試着をしてみて、「もうちょっと柔らかい雰囲気にしたい」といった場合に調整をする…などでしょうか?

そうです。実際のジャケットのサンプルを着ていただいて調整をするといったようなプロセスを踏むことで、一人一人のお客様の「ほしくない」「メンズっぽさ」があれば減らしていく、などのすり合わせができると思います。「ほしい」は分からなくても、「ほしくない」という感覚は分かりやすいのではと。

ー私も、スーツを着てみて「あ、この部分は嫌だな」という部分は気づけることが多いです。

そういう部分は分かりやすいですよね。そのような場合、既製服だと調整ができません。「自分のために」という服ではないので。

ーサイズも、小さいものから対応可能ですか?

可能です。実績としては、身長140cm〜150cm台のスタッフもメンズパターンでスーツを作っています。

ー私たちの署名活動に寄せられる体験談を読んでいると、既存の量販店だと、店舗によってスタッフの方の理解の差があるようで…お店に足を踏み入れた瞬間、見た目で判断されて「こっちのコーナーですよ」と案内されることを想像するだけでも怖くなってしまう、という方は、「見た目で決めつけられることはない」と分かっているだけでもありがたいですし、相談だけでも歓迎というのは良いですね。



ージャケットのポケットはどのようになっていますか?

スーツ仕立ての場合は内側に4つついていて、表のポケットはデザインを選べるようになっています。カジュアル仕立ての場合、内側ポケットの数は少なめです。

FABRIC TOKYOのスーツのジャケット。青寄りのネイビーの表地(左身頃)をめくって、ベージュの裏地を見せている。ポケットが胸の辺りに一つ、その下にペンが入る細長いポケットが一つ、腰の辺りにもう一つポケットが見える。ペンやスマートフォンがしっかり入る。
内ポケットはペンやスマートフォンもしっかり入るサイズ。
FABRIC TOKYOのスーツのジャケット。青寄りのネイビーの表地(右身頃)をめくって、ベージュの裏地を見せている。胸のあたりに内ポケットがある。背景には、店内に陳列されている、スーツ生地のサンプルが見える。
右身頃にも内ポケットがついている。

ー「ウィメンズ」として売られているスーツは、ポケットの数が少なかったり、浅かったりなど、機能的でないことは問題視されていますよね。靴に関しても、スーツ量販店では、就活用コーナーにいまだにフラットシューズが一足も置かれていなかったりなど……「ウィメンズ」のスタイルや品揃えの問題に関して、なかなか改善できない技術的な理由があるのかな?と疑問に思っています。

私はスタッフとしてFABRIC TOKYOのスーツを作ってみて、「こんなにポケットがあるんだ!」と初めて知りましたし、こんなに機能的だなんて、とびっくりした記憶があります。実際、お客さんでもそのような話をされる方もいらっしゃって、「ポケット、いいですね!」と言ってくださいます。そのように思っている方はたくさんいると思うんですが、お客さんからしても、そのような声をどこにぶつけたらいいんだろうと迷っておられるのでは……

接客をしていて、「フラットの、ヒールじゃない靴を探しているんですが、どこで探したらいいですか」と聞かれることもあります。靴のサイズが22~23cmくらいの方とか。FABRIC TOKYOでは靴は扱っていないので、そういうときは、できるだけニュートラルなデザインの靴を扱っているお店を個人的に紹介することもあります。地道にやっていくしかないですね。

就活に関して言えば、「リクルートスーツ」じゃなくてもいいというところはたくさんあるように思います。実際に問い合わせてみたら判明するケースも。数年前に、「FABRIC TOKYOはリクルートスーツを売りません」というキャンペーンをやったのですが(下記埋め込みリンク参照)、そのときに、従業員1000名以上の企業で、新卒採用をしている現役人事の方々にアンケートを取ったところ、「リクルートスーツ自体は重要視していない」という声が多かったんです。清潔感や、場に合った服装選択ができるかどうか、というポイントのほうを見ているとのことでした。回答を頂いた18名は、いずれも、信頼できる企業の方々です。不快感を感じる服装でなければ、服装を理由として落とす、という時代ではないと思います。

ーこの事実を全国の駅に貼りだしたいくらいです!

「こういう意見を持っている人事も増えている」ということが分かったのはよかったです。

ー真夏は、クールビズの問題もありますよね。40℃近い日もありますし。

就活はいろんなところを歩き回るので、倒れちゃいますよね。緊張もあるだろうし…



ーこの問題で困っているすべてのジェンダーの就活生当事者の方に伝えたいことはありますか?

就活のときに着る服装は、リクルートスーツ以外の選択肢が増えていると思っていますし、#就活セクシズム の活動に共鳴する方々や、これから知るであろう方々には、広く、「オーダーという選択肢があるんだよ」ということを知って頂きたいです。FABRIC TOKYOの製品を推すというだけではなく、業界としてそのような選択肢があるんだよと。

今は、「就活」となると、「就活スーツ」がまず頭に浮かぶと思うのですが、本当は全然そうではなく、オーダーという世界も、現在は、手の届きやすい価格帯になったり、選択肢が広がっています。各社、シルエットなどこだわりのものがありますし、そのようなことをまず知って頂くと、気持ちが楽になるのではないかと思います。その中で、FABRIC TOKYOは、相談ベースで、身構えず、私たちも良い商品を届けたいので、対話のような感覚で来ていただければと思います。常設店舗は現在渋谷MODI店です。ぜひ一度ご相談に来ていただけたらと思います。

来店が難しい方だと、電話で問い合わせをして下さる方もいらっしゃいます。この渋谷MODI店は、以前よりはどんな方でも入りやすい雰囲気にはなったとは思いますが、「メンズスーツを扱っているところに行きづらい、行っていいのかな?」と感じていらっしゃる方も多く、最初は緊張してしまう方も多いです。そのような場合は、お電話を頂いてからでも全然構いません。「メンズスーツ」というと身構えてしまう方も多いので、その点については私たちもなるべく改善をしていきたいとは考えています。

ー個人的には、こちらのお店は、店先にレインボーフラッグが掲げてあったので、吸い込まれるように入れました(笑)

よかったです!



旧来の「ウィメンズ」「メンズ」にハッキリと分かれたスーツスタイルがまだまだ当たり前の社会。そういったスタイルに当てはまらないすべての人は、就活のスタートラインに立つより前の段階で、社会から「存在しない」ものとされているように感じさせられてしまいます。

FABRIC TOKYO 渋谷MODI店は、何かを決めつけられたりジャッジされたりすることはない、と実感できるとても安全な空間でしたし、他の店舗や電話でも相談を受け付けられるようにしているという取り組みも、とても心強いです。こういった環境がすべてのスーツ販売店で当たり前になったら良いなと思います。

今回は、インタビューを受けていただき、ありがとうございました。

「Men's Suit for ALL GENDER」のような取り組みが一人でも多くの人に届くことを願っています。

※ヘッダー画像:FABRIC TOKYO 渋谷MODI店の一角、机と椅子のあるスペースでのインタビューの様子。手前の店舗スタッフの方は、ストンと落ちた直線的なシルエットのオリーブの上下スーツを着用している。

【取材協力先】
・実施店舗:FABRIC TOKYO 渋谷MODI店
・公式HP:https://fabric-tokyo.com/
・店舗HP:https://fabric-tokyo.com/stores/shibuya_modi

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