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(中編)【メンズパターンで作る、すべての性別の人のためのオーダースーツ】FABRIC TOKYO 渋谷MODIにてインタビューを行いました

#就活セクシズム  署名チームでは、すべての性別の人がメンズパターンのスーツをオーダーできるFABRIC TOKYOのスタッフの皆様にインタビューを行いました。

あらゆる人々の存在を否定しないような商品展開をしているスーツ販売店の情報が、必要とする人々のもとにもっと届いてほしい、と署名チームメンバーは考えています。今回、その一助となるために、FABRIC TOKYOのスタッフの皆様が「Men’s Suit for ALL GENDER」を始めた動機や、接客時に考えていること、また、社会のジェンダーバイアスに対する問題意識などについてインタビューして発信したいと考えました。

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ー社内では、この企画を開始するにあたってどういう研修をした/していますか?

この企画がスタートした2019年から現在まで、研修はアップデートを続けています。多様な体型の方に対する採寸のスキルはもちろん、接客メンバーに関しては、なるべく想像力を働かせて、いろんな人がいらっしゃるということを念頭に置き、決め込みをせず、研修をしています。

「こういう人は、どういうことに悩みを抱えているだろう」「こういう人がFABRIC TOKYOのスーツをほしいと思って来てくれたきっかけはどういうところにあるんだろう」と想像してご案内をしようね、と話しています。

ー意見交換のような?

そうですね。そこは比較的力を入れているところです。

ーこの試みに関するFABRIC TOKYOの情報発信にも、多様な方が登場している印象があります。これまで、「スーツはシスジェンダー男性の世界」という圧を個人的に感じることも多かったのですが、ここでは、それも感じません。これはなにか工夫があるんでしょうか?

イベントを実施するたびに出てくる課題を、「ここは喜んでもらえたけど、ここは難しかったね」と次に向けて改善する、というサイクルを繰り返すようにしていることは重要だと思いますし、着るものに関して社員自身が固定観念に囚われてはいない、という社内文化もあると思います。




ー就活用にスーツを求めに来る人はいますか?皆さん、なぜ大手スーツ量販店ではなくFABRIC TOKYOに来るんでしょうか?何を求めに来るのですか?

先程の、「既存のスーツのラインナップに対してお客様が持っている悩み」という話題にも繋がるのですが、「ウィメンズ」というアイテムがそもそもしっくりこない、という方もいらっしゃいますし、ご自身のジェンダー・アイデンティティとして、「ウィメンズ」と括られたアイテムを着ること自体、耐えがたい、という方もいらっしゃいます。既存のスーツ量販店だとサイズが合わせにくい、という方(小柄な方など)が、オーダーという選択肢を求めて来店されることもあります。また、「メンズ」が着たいかというとそうでもないけど…という方も、相談ベースで来てくださいます。

ーまだはっきりと着たいもののイメージがないけど、とりあえず相談、といったように?

そうです。ご自身のアイデンティティ的にもどうしたらいいか分からないという方もいらっしゃいますし、とはいえ、欲しいものが「メンズ」か、と言われると分からない……という方もいらっしゃったりします。就活用となると、「メンズ」「レディース」と分かれやすいので、相談に来てくださったのかな?と想像することもあります。

ー就活用だと、心配事も多いので、「やっぱり黒に近い色で、既存のラインナップから形が離れ過ぎないように……」というようなオーダーは、多いのでしょうか?

仰る通りで、「色は黒の方がいいんじゃないか」という方や、ボタンの向きを気にされる方もいらっしゃいます。

FABRIC TOKYOが扱っているのは「メンズ」パターンで作るスーツなので、「ウィメンズ」スーツとボタンの向きが違うことが面接で引っかからないだろうか……と気にされる方はいらっしゃいます。

ーあまり個性的でない形のものを求める方が多いのでしょうか?

就活用で来てくださる方だと、「自分はこれでいくんだ」と決めて来ている方もいらっしゃいますが、どちらかというと、「不安だし、これで行って変に目立たないか、悪目立ちしないか」と気にされる方が多いです。思いとしてはおそらく、目立ちたい訳ではなく、あくまで自分が落ち着いて就職活動ができるスーツを探されているのではないかと思います。

ーとても分かります。

そこを探されているのかな?と思うので、そのような場合はできるだけ「大丈夫ですよ」とお話しするようにしています。



ー渋谷MODI店は、2021年8月から「All-Gender Store」としてリニューアルし、常時、メンズパターンのスーツをオーダーできるとお聞きしていますが、渋谷に訪れにくい場所に住む人にはどのような選択肢があるんでしょうか?

他の地方の店舗でも受け付けられるような期間限定イベントの試みを行っています。(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000162.000013830.html)イベント期間外でも、カスタマーサポートや店舗にお電話頂ければ、渋谷MODI店以外の店舗でも、スタッフのシフト調整をしてお応えすることができます。

ー社会のジェンダーバイアスや、スーツにおけるハッキリとした男女二元感に対して感じることはありますか?

FABRIC TOKYOは、「メンズスーツ」という、どうしても二元化された物を扱ってはいるのですが、期間限定イベントや渋谷MODI店には、二元化できない、本当に多様なお客様がいらっしゃることを、対応していてすごく感じます。洋服は二元化されていたとしても、それを着る人や、着る人のなりたい姿、どのように相手に見られたいか、ということは二元化できるものではないですし、もっといろんな種類があると思うんです。それは、誰かに決めつけられるものではない、というのはもちろん、FABRIC TOKYOのスタッフとして、そういう思いで苦しんでいる方がいらっしゃったら、相談ベースでも良いので来て下さったら嬉しいなと思います。

ー店舗内で、このように椅子と机のあるスペースはとてもウェルカムな雰囲気があっていいなと思います。(参考:https://fabric-tokyo.com/stores/shibuya_modi

ありがとうございます。

ー上記の質問に関連して、どんな社会になっていってほしいですか?

FABRIC TOKYOのスタッフとしては、いらっしゃるお客様に対して決めつけをせず、寄り添えるようにしたいと思っています。元々、ブランドコンセプトとして「Fit Your Life」ということを掲げているので、お身体や体型に寄り添うだけではなく、お客様一人ひとりの価値観やライフスタイルなど、いろんなものにフィットするものをお届けできるということを願っています。このオールジェンダーストアやイベントを通して、働くすべての人に、気持ちや価値観に寄り添えるようなものを提供できれば、ブランドとしてもお客様にとっても嬉しいことなのではないかと思います。それができていたら、これからもでき続けたら、いいなと思います。

私個人としては、私もどちらかというと、二元化されていた就職活動のスタイルが苦手で、苦しんできた方ではあると思うので、もっとこういう、二元論でまとめきれないものとか、曖昧な部分だったり、グレーな部分だったりとかが、もっと出しやすく、そのような人々に寛容な社会になったらいいなと思っています。


とても元気がもらえる言葉、ありがとうございます。

【メンズパターンで作る、すべての性別の人のためのオーダースーツ】FABRIC TOKYO 渋谷MODIにてインタビューを行いました(その3)
に続きます!

※ヘッダー画像:FABRIC TOKYO 渋谷MODI店の一角、机と椅子のあるスペースでのインタビューの様子。手前の店舗スタッフの方は、ストンと落ちた直線的なシルエットのオリーブの上下スーツを着用している。

【取材協力先】
・実施店舗:FABRIC TOKYO 渋谷MODI店
・公式HP:https://fabric-tokyo.com/
・店舗HP:https://fabric-tokyo.com/stores/shibuya_modi

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