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『フェルミ推定』のミスに終盤で気づいたときの対処方法【値が小さい時】

※当記事は約7分で読めます【約3,000文字】

1. 基本体系と5ステップについて

フェルミ推定を解く際、以下2つの考え方をベースとしています。

・『フェルミ推定の基本体系』

・『フェルミ推定を解く際の思考プロセス(5ステップ)』

この「基本体系」と「5ステップ」について、まだ知らないという方は、下記の記事にて説明していますので、先にご確認いただくことをお勧めします。

2. 5ステップを使った具体的な解答思考プロセス

<テーマ>
『日本にピアスはいくつあるか?』

(1)   前提確認

フェルミ推定のどの基本体系で考えるのかを確認します。

⇒今回は、「ストック」の「所有」の中の「個人」で解くことを確認。

※今回のテーマの中では、以下抽象的な概念について範囲を限定します。

・耳に付ける用途のみを想定。(他にもへそなど違う部位の可能性がある)
・両耳や片耳の場合もあるため、個数はセットを単位として1個とする。
・個人の所有物に範囲を限定(店側の在庫など市場に流通していないものは加味しない)

(2)アプローチ設定【横への因数分解】

求められている数字を出すための合理的な方程式を考えます。

日本におけるピアスの数=(a)日本の人口×(b)ピアス所有率×(c)1人あたりのピアス所有数

(3)モデル化【縦の要素分解】

横の因数分解で考えた方程式に対して、さらに縦の要素分解で細かく分けて考えることで、フェルミ推定の精度を上げて、近似値を導き出せるようにします。

(a)日本の人口を「性別」と「年代別」に要素分解
(b)(c)「性別」×「年代別」の区分でそれぞれの所有率と所有数を考える

上記、モデル化によって分けた要素を、それぞれ横の因数分解に当てはめます。

<男性と女性それぞれが所有するピアスの数を求める式>
(d)男性の人口 × 男性のピアス所有率 × 男性1人あたりのピアス所有数

(e)女性の人口 × 女性のピアス所有率 × 女性1人あたりのピアス所有数

(4)計算

<男女それぞれの各世代別人口の数>

・日本の人口:1億2000万人と考える。
・男女比率=1:1で考える。
・年齢:0歳~80歳までを年代別に区分する。※各世代同数とする

上記より、男女別の各世代の人口=1億2000万 ÷ 8(年代) ÷ 2
=750万人

※ここでは、少子高齢化まで加味すると複雑になるため、長方形型の人口ピラミッドをイメージする。

(b)所有率および(c)所有数について

日本の人口を男女と年齢の2軸でセグメントに分け、各セグメントの左側に所有率、右側に1人当たりの所有数を書き込む。(下記の図を作成するイメージ)

出典:東大ケーススタディ研究会で紹介されている数字

上図を参考に、

男性と女性それぞれで<所有するピアスの数を求める式>に代入すると

(d)男性が所有するピアスの数
 750万(人)×(5%+10%)× 1(個)=112.5万(個)≒100万(個)

(e)女性が所有するピアスの数
【750万(人)×(25%+ 25% +10%)× 2(個)】+【 750万(人)× 50% × 3(個)】
=2025万(個)≒2000万(個)

<男性と女性が所有するピアスの数の合計>

 日本におけるピアスの数=(d)100万個+(e)2000万個=2100万個

(5)現実性検証

【導き出した答え】
日本におけるピアスの数=2100万個

日本の人口が1億2000万人だとすると、およそ6人に1人がピアスを1個所有することになる。日常の感覚から、この数値は少ないと考えられる。

3. 軌道修正する際のアプローチ

(1)軌道修正する際の考え方

戦略コンサルのケース面接において与えられる時間は短いため、思ったような数字が導き出せなかったとき焦りますが、下記を念頭に入れておくと、ロジックのボトルネックについて見当がつきやすくなるため、軌道修正がしやすくなります。

<point>
①    数字が大きすぎる場合

因数分解で必要な要素が不足している可能性が大きい。
(例)市場規模などを考えるとき、シェア率を考慮できていない時、母数が大きくなるなど。

②    数字が小さすぎる場合
計算時に代入した実数の値を小さく見積もり過ぎている可能性が大きい。

③    数字の合理性に欠けると思う場合
縦の要素分解が足りていないことが多い。
(例)当記事の場合、電柱の数を求めるとき、都市と田舎で面積当たりの電柱の数が異なるという概念が抜けているなど。

(2)上記ピアスの数について軌道修正する場合の例

当記事では、軌道修正の必要があるパターンで「ピアスの数」について紹介しました。
せっかくなので、この場合の軌道修正のアプローチについても具体例で見ていきましょう。

今回は、pointに照らし合わせると、以下が該当すると考えられます。

②    数字が小さすぎる場合
計算時に代入した実数の値を小さく見積もり過ぎている。

そのため、所有率所有数について見直したいと思います。
このどこを見直すのかという仮説をその場でパッと考えられることが、戦略コンサルの面接の場などでは非常に重要です。
そして、その判断のために必要なことは頭の中での体系化(構造化)です。
ここで、基本体系として把握することの真価が発揮されるわけですね。

では、実際に修正の論点を確認し、数字に反映していきます。

<修正の論点>
・男性でも美容師やアパレル系など一部の人は30代以降もピアスを所有している。
・女性において、20代は特にファッションなどにお金をかけて多くのピアスを所有している。
・30代、40代になってくると結婚を境に子育てに忙しくなり、おしゃれに時間を使っている余裕がなくなることから20代より減少。
・50代でも、日常のお出かけ用と冠婚葬祭などの行事用にそれぞれ持っていることが考えられる。

男性と女性それぞれで<所有するピアスの数を求める式>に代入すると

(d)男性が所有するピアスの数
750万(人)×(5%+10%+5%+5%)× 1(個)=187.5万(個)
≒200万(個)

(e)女性が所有するピアスの数
【750万(人)×(25%+ 25%)× 2(個)】+【 750万(人)× (30%+ × 30%)× 5(個)】 +【 750万(人)× 50% × 8(個)】
= 750万(個)+ 2250万(個) + 3000万(個)
= 6000万(個)

<男性と女性が所有するピアスの数の合計>

日本におけるピアスの数=(d)200万個+(e)6000万個=6200万個

いかがでしょうか。
これだと、日本の人口の約半分の人が1つは持っているような数になりました。先ほどよりだいぶ現実的な数字になったかと思います。

このように、5ステップに基づいて論理的に進めていくことで、行き詰ったときにも、見直しが必要な個所の見極めなどが容易になってきます。
これが構造化やフレームワークを活用する利点でもあります。

実際の面接の場などでは緊張などから、普段はやらないようなミスを気づかないうちにしていることもあります。
そして、終盤の現実性検証の段階で「あれ!?」となり焦るようなこともあります。
そういったときにも冷静に対処できるようにするために、是非「軌道修正のアプローチ」についても覚えておくようにしてください。

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