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カーオーディオとものの良し悪し

「一回のアップデートで最適だと錯覚してはダメだよ」

先日、仕事で出会った溶接工事職人のMさん(40代)から趣味の話を聞いていた時にふと言われた一言である。

彼の趣味は「カーオーディオいじり」で、スピーカーやサブウーファーと呼ばれる商品を交換したり組み合わせたりして、車内の音質をこだわっているのだと言う。
職業も活かし、自身ではんだ付けなども行なっているらしい。
元々は自分が音に興味があったわけではく、ロックバンド好きの奥様が新車のカーナビの音質に対して「気に食わない」と機嫌を損ねたところから、「絶対に納得する音質にしてやる」と火がついてハマってしまったという。

実際に私は彼の車に乗せてもらい、適当な選曲の洋楽を聴かせてもらった。詳しくはわからなかったが、重低音がかなり響いて車内が振動しているのは分かり、臨場感を味あわせてもらった。

「今の最適な音にするまでどのくらいかかったのですか?」
と尋ねると
「まだ全然最適だとは思っていない」
と即答された。

さらに「カーオディオを始める人でいきなり高い商品を一気に揃えて、音質が最高になったと満足する人がいる。しかし比較対象がたった1つしかない状態で、具体的にどの音域がどう良くなったかなんて言えないと思う。」と話し、続けて冒頭の一言を言われたのだ。

私はこのMさんの言葉を聞いて、全ての感じるもの作るものに通ずる大切な考え方だと思った。私もものを作る時より良くしようと”こわだる”過程はあるのだが、改めてそれはどう言うことか紐解いてもらえた気がした。

小さなアップデートを一つずつ繰り返すことで、変化が分かりやすくなり、理解しながらチューニングができる。
検証パターンが増えていくほど、自分の中の最適に近づいていく。
そして初めて、なぜ良いか?を言えるようになってくる。



この映画は面白い/つまらない、この料理は美味しい/まずい、この服はかっこいい/ダサい、安易に使っていたが変化がわかるほど私はパターンを知って比較できているだろうか。
私は月に100本程度芸人のネタを見るお笑い好きなのだが、数を見ていくうちに昔はつまらないと思っていたものを面白いと思える瞬間に出会ったことがある。こちらの見方のバリエーションが乏しかったのだ。

全ての通になるのは物理的に時間が足りないし、娯楽は深く考えず直感でいいとも思う。
ただ、ものの良し悪しとは現時点の自分がインプットした範囲で感じることができる暫定的な感想である、ということはちゃんと理解しておこうとMさんのこだわりのカーオーディオに学んだ。

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