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NPO法人設立の手引き ver2.0

1.はじめに

東京都庁へNPO法人を登録することを前提にした、NPO法人設立の一連の流れを提示することを目的とした記事です。右も左もわからずにNPO設立の情報収集を行いながら設立準備を進めると非常に多くの時間を費やすことになります。しかし、最短ルートでやることが明確であれば、1日で設立のための都庁への申請を終えることも可能です。そこで、今回の記事は以下の点に特化して書きました。

・設立にあたり無駄を全て削ぎ落すことで、この記事を読むだけでNPO法人を設立できるように必要なエッセンスのみ提示。

・多くのwebサイトで散見される設立方法を図で分かりやすく見える化。

・ゼロから作ると非常に手を焼いてしまう都庁提出書類の共有。

・筆者の直近の法人設立の経験を基に、よくある間違えの紹介。

(あくまで東京都での申請方法である点にご留意ください。県ごとに申請方法が若干異なります。)

2.NPO設立の全体像

NPO設立にあたり、準備は以下の図に示すとおり、大きく2つあります。今回は左側のⅠ設立の準備に関して説明します。言うなれば、左側はNPOの箱に当たります(今回の説明の対象)。そして右側はその箱の中身になります。

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下の図はNPO化に向けたスケジュールの一例です。基本的に、Ⅰ設立の準備とⅡ運営の準備を同時進行で進めていくことになるかと思います。

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NPO法人設立の一連の流れは大きく4つのステップに分かれています。
(①設立発起人会)*
②設立総会
③東京都庁へ認証申請
④法務局への設立登記

*設立発起人会は任意のものであり、必須ではありません。こちらでは、NPO法人を設立する意義や活動の方針など発起人の間で意思決定を行う最初の集まりです。議事録等は必要ありません。

こうした一連の流れは東京都 NPO法人ポータルサイトに記載の都庁作成のガイドブック(認証)で詳細に知ることもできます。また、都庁への提出書類のフォーマットもこちらのサイトでダウンロードできます。こちらのガイドブックがバイブルになります!!こちらを必ずご準備ください!!

東京都 NPO法人ポータルサイト
http://www.npo.metro.tokyo.jp/

また、設立に向けた相談、書類の作成方法について相談を受けたい方は、以下の場所に問い合わせることで可能です。書類提出前には一度チェックしてもらうことを強くお勧めします。

1.東京都生活文化局都民生活部管理法人課NPO法人担当
http://www.npo.metro.tokyo.jp/

2.東京ボランティア・市民活動センター
https://www.tvac.or.jp/

3.設立総会の準備と注意点

設立総会では、都庁に申請する場合は、以下の8点を議決する必要があります。サンプルは上記の
東京都 NPO法人ポータルサイトにあるため、そちらを下地にすれば問題ありません。
(1)第一号議案 特定非営利活動法人の設立について
(2)第二号議案 特定非営利活動法人の定款について
(3)第三号議案 設立当初の役員について
(4)第四号議案 設立当初の資産について
(5)第五号議案 事業計画及び活動予算について
(6)第六号議案 設立当初の入会金及び会費について
(7)第七号議案 確認書の確認について
(8)第八号議案 法人設立認証申請について

設立総会の参加者は社員のうち、参加できる人で構わないそうです。人数の規定はありません。また、スカイプ等での参加も可能です。社員の定義は、6章の「よくある間違え」を参考にしてください。

4.東京都庁へ書類の提出と注意点

提出書類は全てで下記に記載の11種があります。すべて上記の都庁のサイトでダウンロードしましょう。提出先は東京都生活文化局都民生活部管理法人課NPO法人担当になります。都庁へ提出後は約3ヶ月の縦覧期間となり、認証が降りたら法務局で登記となります。サンプルは上記の東京都 NPO法人ポータルサイトにあるため、そちらを下地にすれば問題ありません。

1.設立認証申請書
2.定款
3.役員名簿及び役員のうち報酬を受ける者の名簿
4.各役員の就任承諾書
5.役員の住所又は居所を証する書面
6.社員のうち10人以上の者の名簿
7.確認書
8.設立趣旨書
9.設立について意思の決定を証する議事録の写し
10.設立当初の事業年度及び翌事業年度の事業計画書(2年分)
11.設立当初の事業年度及び翌事業年度の活動予算書(2年分)*

*活動予算書は、少し複雑なので補足をしますと、予算書はⅠ経常収益とⅡ経常費用に分かれます。Ⅰ経常収益とは、寄付金や事業収益など、NPO法人の口座にプラスになるものが該当します。一方、Ⅱ経常費用とは人件費や交通費など、NPO法人の口座からマイナスになるものが該当します。Ⅱ経常費用はさらに細分化され、1.事業費と2.管理費に分かれます。
1.事業費とは、事業(例.イベント開催)でかかる費用を指します。例えば、イベントの開催の際に発生した交通費などが該当します。
2.管理費とは、事業以外でかかる費用を指します。例えば、普段のミーティングに参加する際の交通費などが該当します。
そして、活動予算書ではⅠ経常収益-Ⅱ経常費用>0となるような予算を作る必要があります。(赤字にならないことを示す。)

また、活動予算書は、その他の事業を含むバージョンと含まないバージョンの2種類があるため、設立する法人の活動形態に合わせて選択する必要があります。その他の事業とは、法人税のかかる収益事業を指します。NPOというと、法人税のかからない特定非営利活動がイメージされることが多いですが、実は大きなNPOほどその他の事業に該当する法人税のかかる収益事業で利益を出しています。法人税のかかる収益事業の定義は、法人税法で定められた34業種に該当すると税務署に判断された場合になります。例えば、環境NGOが本来の活動と関係のない事業(例.物品販売や不動産販売業)を行った場合は課税の対象になります。

以上を踏まえ、NPO法人ポータルサイトにあるガイドブックp47-49に記載の活動予算書の作成方法を読むとすんなりと理解することができると思います。

私が作った活動予算書のサンプルを下記のURLからダウンロードしてみてください。既にexcelの表に計算式を入れてありますので、数字を入力すれば自動で算出できるようにしました。最初に入っている数字は適当です。
https://drive.google.com/open?id=1pD99VrOvw-kwJ0l1zBxskwSBaoeZxm1N

5.法務局への設立登記

東京都に申請後、約3ヶ月の縦覧期間をを経て、無事認証されると、最後は2週間以内に法務局へ書類提出をする必要があります。こちらの書類に関しても東京都 NPO法人ポータルサイトにフォーマットがありますので、そちらを参考にします。

1.設立登記完了届出書
2.登記事項証明書
3.設立当初の財産目録

これらを法務局に提出したら、無事NPO法人の設立完了となります。

6.よくある間違え

・社員と職員の違い

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株式会社とNPO法人では社員の意味が違うため大きな混乱を生んでいます。NPO法人でいう社員とは、株式会社でいうところの取締役にあたります。NPO法人の社員は総会での議決権を持ちます。社員と職員は兼任可。
http://xn--npo-1n9d898kzrruty.com/yakuinqanda/

上の図で示すとおり、NPO設立には10人以上の社員が必要になります。こうした社員は給与はなく、また社会保険も適応外となります。社員の規定は特になく、NPO法上で誰でも社員になることができると定められています(外国籍や難民も可)。

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上の段が社員10人になっており、その中から3人以上の理事(そのうち1人が代表理事)を選任することができます。また、一人の幹事を選任します。理事と幹事を併せて役員といいます。また、役員の3分の1の人数までは役員報酬を出す事が可能です。

・NPOの社員は会社との兼業できない?
会社によって異なりますが、NPOの社員は会社と兼業可能です。社員は基本的に給料は支払われず、社会保険も適応されません。そのため企業と兼業との形にはなりません。しかし、企業によっては、コンプライアンスの問題や、会社との優先度などの問題から、会社の職員にNPOの社員になることを禁止するところも少なくはありません。

・社員住所は情報公開される?
社員の住所を都庁への申請書類の中で提示する必要があります。こうした住所は確かに情報公開されますが、限定的なものとなります。具体的には都庁の窓口での閲覧が可能です。しかし、都庁に入る際には身分証明が必要なため、誰でも気軽に出入りできる場所ではないので、比較的安全とはいえます。

→(追加更新)2021年のNPO法改正で社員の住所が公開されなくなりました!!流石におかしかったですよね...。

・定款はサンプルのままでいい?
定款は、サンプルをもとにすれば作成はそれほど困難ではありませんが、サンプルのままでは現実に即していないケースも散見されます。例えば、理事会の開催について、skype参加も可能である、などの文言を挿入しないことで、直接集まる必要が出てしまうことがあります。都庁提出前に上記の書類作成相談を受けることをオススメします。


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