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幻想殺し

神が死んだのは、もう遥か前。1990年代にロックが死に、2000年代に恋愛が死んだ。そうして、2010年代にはついに心が死んだ。心は、良心と言い換えても良いかも知れない。良心の喪失は、すなわちサイコパスへの道である。となれば、次の2020年代に死ぬのは精神だろう。精神とは、私淑するワイニンゲル先達の言葉に倣えば『動物(性的)以上のなにか』である。かつて、偉人たちはこの『動物(性的)以上のなにか』を追い求め、人生の意味を問うた。ゴッホは耳を削ぎ落としてまで向日葵を描き、ニーチェは発狂しながらツァラトゥストラを書き、宮沢賢治は雨ニモマケズのメモ書きを密かにトランクへ忍ばせた。向後10年で、これら先人たちの努力は水の泡に帰すのだろう。サイコパスには、過去もなければ未来もない。動物と同じく、単にぼんやりと場当たり的に今に流されるだけである。これは「カルペ・ディエム(いまを生きる)」とは似て非なるもの。記憶を持たぬから、嘘も吐き放題。咎めたとて、本人は覚えていないからどうしようもない。「キチガイにはなんでも許してやらねばならない」と書いたのはゾラである。なにを言っても無駄なのだから、やがては言葉も機能を果たさなくなるだろう。信じていたものが悉く喪われていく。

2021年、なんとか元気をだして生きていきたい。

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