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人生初のサーフィンに相応わしい1日


お昼頃、あまりの暑さに14時までと決めて、30分限定で海に行こうと突然思い、家から徒歩1分のビーチへ行く事に。

日本随一のサーフスポットにも関わらず、仲間にサーファーは1人もいない。

家の裏庭に廃材の如く放置された5本のサーフボードから、何気なく一番手軽なボディボードを持って海へ向かった。

こんなにも近くに海があるのに、選んで海へ行くのは久しぶりだった。

意図的に海を感じると、普段の何倍も感じる…

圧倒的自然、圧倒的に綺麗な海、圧倒的な開放感…

最高に気持ちがいい!!

気持ちよさから、気がつけばすぐに服を脱ぎ、サンダルを脱ぎ、持っている荷物を全て置いて、波打ち際へ向かっていた。

足をつけると、気温の割に結構な冷たさだった。

汗をかいた状態で入ればもっと気持ちいいのではないか?

そう思い、無駄に持ってきた荷物を置いて、普段行かない方向へ走り始めた。

10分ほど走ると、50mほど先から、視線を感じる。

目の前まで来ると、謎のおっちゃんが絡んできた。

『俺も一緒に走っていい?』
『もちろん!走りましょう!』

よくわからないが、意味も理由もない、突発的な出会いに懐かしさと楽しさを覚えた。

俺は海保だ、ラッパーだのと、冗談ばかりいい、お前可愛いなと、俺の事をからかってくるおっちゃん。
でも、気がつけば打ち解け、サーフィンやらないの?という話に。

『俺の家、ここから見えるあの屋根の隣の家だから、おいでよ』

言われるがままに、荷物は遥か向こうにおいたまま、裸足のまま、道路を渡り、家まで向かう。

冗談ばかり言うおっちゃんだから、サーファーなのかどうかも正直わからない。

そして、しばらくすると家からお酒を片手にサーフボードを持ってきた。

そのまま海へ戻ると、おっちゃんの友達が海岸で寝ていた。

『口開けな』といい、俺の口にほろよいの白いサワーを流し入れる。

『教えてくださいよー!』
とお願いすると、おっちゃんはそのまま波に乗る真似をして、『こんな感じ』と一言。
まずはタバコを吸ってから体操から始めるんだと、また冗談を始める。

久しぶりに一本欲しくなり、おっちゃんの友達のショートホープを貰おうとすると、おっちゃんに遮られ、こっちの方がいいとガラムを渡された。

ガラムの甘い香りに、始めておっちゃんからサーファーの雰囲気を感じた。

ようやく、おっちゃんがボードを持って海へ向かい始める。

ボードを持って海へ入ったが、なかなか波に乗らない…

この人まさか乗れないんじゃないか?

そんな事を思って帰りの時間を気にしていると、おっちゃんが遂に波に乗ろうとした。

そして、ボードの上でバウンドするかの様に、横に向かってスーーっと波を乗りこなしていた。

『まじか!!すげぇ!!』

おっちゃんの友人に聞くと、実はここが地元のサーフィンの先生だった。

戻ってくると
『こんな感じ!』
と、また適当なコメント。

本当にこの人先生なのか?笑

『貸してやるからとりあえず、やってみ』

おっちゃんの適当な教え方で、右も左も分からないが、とりあえずやってみた。

……

……

あれ?

……

めちゃくちゃ、ムズイ…

息も切れ、心も折れかける…

だけど、おっちゃんの方を見ると、もっと奥へ行け!!と、こちらにジェスチャーをしている。

無我夢中で波にぶつかった。

『この波は乗れそうかな?』

『あの波は潰れちゃうかな?』

『あの波はちょうど良さそうだな』

おっちゃんとの出会いと同じ様に、刹那的で一期一会だった。

悔しくて何度も繰り返したが、結果、一度も波を乗りこなす事は出来なかった。
それどころか、ただただ、ボードに振り回されて溺れていただけだった。

波打ち際まで、息を切らしながら戻り
『いやー、悔しいな』
と独り言を言うと、
おっちゃんはキラキラした目で『でしょ!?サーフィンは難しいんだよ!』

おっちゃん云く、俺の波乗りシーンは
しょうもないTikTokを見ているようで面白かったらしい…

自然と共に、自然体で、自然のまま生きているおっちゃんと、自然を通して、自然に出会えた。
それが、無性に嬉しくて、楽しかった。

『また気が向いたらここにおいでよ。いつでも教えてあげる。』

あえて、名前も連絡先も聞かなかった。
この自然な感じがすごく心地よかったから、大切にしたかった。
また自然に再会したい。

今日も昨日の場所まで20分だけランニングしようと手ぶらで行ったけど、おっちゃんはいなかった。

また会えたらいいな。

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