創世巨人のゼナン
「おはよう、被検体49号。言葉はわかるよね」
突如現れた異界の科学者。彼のもたらしたクローン技術は世界を変えた。最強戦士のクローン、伝説的剣士のクローン、選ばれし勇者のクローン…その力は邪を圧倒し、人の世は平和になった。
…はずだった。
「僕の名はマガタ。人間に滅ぼされた魔王のクローンだ。
そして彼は偉大なる夜の一族、その始祖のクローン。あっちのは大陸を腐海に沈めた魔導士のクローンで、僕らを造った女だ。
そして君は…驚くなよ、この世界を創世した邪悪な巨人、そのクローンだ。君はチビだが力は最強なんだぜ! 名は素体に基づいてゼナンにしよう…って、おい、おい!」
ゼナンと呼ばれた少年は突然跳躍し、天井を突き破って上空高くへと舞い上がっていた。
眼下には広がる緑。はばたく鳥たち。風の音。地平線の向こうから柔らかい朝の光が差している。
「うわぁああ…⤴」
ゼナンの声がはじけた。
「僕は産まれた! この素晴らしい世界に!!」
【次回「人間にばれちゃった」に続く】
きっと励みになります。