決戦街トーキョー
ヒリつくパルスが神経を走り抜け、巨大な脳髄の中でハルトは吠えた。なぜならそれは、失われた都民たちの慟哭だからだ。
「たかが!」
右腕を振りかざし、
「人口三百万風情がッ!」
拳を打ち抜く。
街律者ハルトの拳に連動し、巨大な……余りにも巨大な体躯が唸りを上げる。
それは人類の希望にして妄執。
人型の大いなる都市。
街律に従い命を喰らう、覇道の決戦兵器。
その名も!
決戦街トーキョー
第一話
砕け散る星は血の色
トーキョーは獣のように咆哮した。その赤熱する拳が大気を燃やし、決戦街ドバイの胸部を打ち砕く。
拳を戻すのと同時。ハルトは踏み込む。巨大な脚が山脈を踏み砕き、粉塵吹き荒れる暗黒の中、雷光が二体の巨人を照らし出す。
熾烈。星系を巡る戦いは熾烈を極めていた。
トーキョーは今、包囲されている。上空。荘厳なる光を纏い、宇宙空間に集結する敵性決戦街たち。地上。迫りくる決戦街ドバイ。
この刹那で一千万都民と三百万ドバイ市民、どちらかが滅ぶ。荒く息を吐き出し、左手を前に。右腕を引き絞って腰へ。容赦など……
するはずもない!
「奪うぞ……お前たちの命を」
一千万都民の生体力によって、トーキョーの右拳が峻烈なる輝きを放つ。
拳を、前へ。
瞬間、すべての音が、景色が消えた。螺旋の輝きがドバイを粉砕。沸騰した大地をも巻き込み大気圏を突破。灼熱が渦を巻き……トーキョーは、巨大な顎を開けてドバイ市民の命を吸った。
「フ、ハハ……!」
ドバイの絶望が、街律者の叫びが神経を駆け巡る。世界が揺らぎ、渦巻く灼熱を貫いて、無数の光芒が降り注いでいく。ハルトは嗤っていた。神々しくも苛烈な、巨人たちの……決戦街たちの降臨が始まったのだ。
灼熱を貫き降下する巨人たちの中に。奴だ。奴はいる。君臨している。荒々しく。雄叫びをあげるかのごとく。輝く翼を広げ!
その直撃は、惑星の自転すら歪めるであろう。
「決戦街、ニューヨーク……ッ!」
壮絶な予感に震え……過去の記憶が蘇る。
【続く】