滅びの時に
神聖都市ウルト。
その地下に張り巡らされた回廊の闇の中、一人の男が歩んでいた。彼の名はラグナ。ウルトの若き神官長である。
蛇や鷲、そして聖なる猛獣に変容していく人間…ラグナの持つ灯が壁を照らし、神秘的なレリーフが浮かんでは消える。闇と静寂の中、回廊に流れる水音だけが響いている。
回廊最奥の広場状の空間、その中央には巨大な石柱がある。石柱には半人半獣の神人、8頭の鷲、そして20匹の大蛇が渦を巻き天に昇る様が描かれている。その前に傅き精霊アブーの声を聞く。それがラグナの日課であった。
その日、ラグナはある違和感を抱いていた。空気が緊張に包まれている…。
そしてそれは訪れた。
突如として轟音が鳴り響き、驚くラグナの前に巨大な影が浮かんだ。影の目が開き、赤い眼がラグナを見つめる。このようなアブーには未だかつて出会ったことがない…。そしてアブーは轟く声でラグナに告げた。
「我は今、人間の滅びについてお前に告げる」
【「滅びのビジョン」に続く】
(画像引用元: commons.wikimedia.org)
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