魔人大戦
和人はいつも同じ夢を見る。
煌めく星々。その中を漂う暗黒の星雲。その暗闇の中には血管のような赤い筋が浮かんでは消える。意思を持ったかのように蠢くそれは、禍々しく、そして美しい。郷愁にも似た感情が満ちてくる。
皇和人は普通の高校生だった。
成績は上の下。スポーツはそれなり。顔は美形の類。しかし特に目立つことなく日々を過ごす。そんな和人にも最近になって彼女ができた。芽衣という同級生が和人のことを好きだと言ってくれたのだ。
そんなある日、帰宅途中の通学路。
和人はそれを見た時「まるであの赤い筋のようだ」と感じていた。禍々しく赤く染まる夕焼けの空。夕日を背景に黒い影めいた長身の男が立っている。その足元には血を流して倒れる芽衣。芽衣の体は切り裂かれ、腸がはみ出ている。まるであの赤い筋のように…。
長身の男は…人ならざる邪悪な何かは言った。
「ようこそ、我らが皇太子。目覚めの時です」
和人の現実が、ぐにゃりと歪んだ。
【「魔人覚醒」に続く】
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