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ゴールデンと過ごした日々

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愛犬タローと過ごした日々を思い出しています。
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ボクが父だった頃

ボクが父だった頃

タロー,きょうは父の日だってよ。

パパに何かくれないの?

きょとんとしている。

それでも一生懸命何を言われてるのか何をすればいいのか考えている。

父を追い越し,父より早く老いて,たぶん父より早く死んでしまう息子よ。

考えなくてもいいよ。パパはプレゼントなんか欲しくない。

プレッシャーが外れたことはわかるらしい。とたんに表情が明るくなる。

「ハグっっ!!」

具体的なコマンドには即座に

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さよならループ(後編)

さよならループ(後編)

ヒトも哺乳類である限りオスにも子に対する保護欲求がDNAに書き込まれていると思われる。食欲や性欲のように強い快感を伴うその欲求を仮に「お父さんスイッチ」と呼ぶ。

遠い初夏のある日,タローを飼い始めて2ヶ月目だったボクの「お父さんスイッチ」は突如オンになった。当初ボクは犬を飼うのが嫌だった。愛情も感じていなかった。妻との二人暮らしに慣れ,その生活に他の這い入る余地はないと思っていた。ところが子犬の

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さよならループ(前編)

さよならループ(前編)

「ループを何日預かっていただけますか?」

ゴールデンレトリバーのループと二度目に会った時,飼い主のリコがボクに聞いた。

「三週間全部オレたちが預かる。」

ボクは即答した。実際に犬の世話をするのは妻のドレミだがその意向を聞くまでもない。賛成するに決まっている。

ボクとドレミはかつて長い不妊治療を諦めた後にタローという名のゴールデンレトリバーを飼った。息子のように溺愛していたその子を3年前に亡

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