自治体の「政策評価」の再評価を―その4 チェック機能の弱さと外部評価の導入―

地方自治体に「政策評価」という仕組みが導入されて、約20年が経ちます。

政策評価とは、自治体が実施する政策や施策、事務事業について、それらが成果を上げているのかを把握するために指標を設定するなどして評価し、改善に結びつけていこうという仕組みです。

今回は、この政策評価のチェック機能の弱さと、それへの対応としての外部評価の導入について述べたいと思います。

1 アカウンタビリティ確保の手段としての政策評価

もともと政策評価は、当該政策が地域課題の解決方法として適切かを示す、つまり、税金を投入して政策を実施することの正当性を示すアカウンタビリティ(説明責任)確保の手段として期待されていました。
政策評価は、事業を実施している自治体職員が政策の評価を内部的に行うケースが多いことから、基本的に「内部評価」であるといえます。内部評価の場合、どうしても評価が甘くなり、客観性や信頼性の面で問題が出てきます。

この「内部評価」で発生する問題や批判に対応するために出てきたのが、第三者による「外部評価」です。外部評価は、政策についての専門知識を持つ学識経験者や地域団体の代表者等が、各政策について外部の視点から客観的に評価を行い、問題点等を指摘する形態が通常となっています。

2 外部評価の形骸化

しかしながら、外部評価が形骸化し、評価結果が政策に反映されないケースもあります。

以前から、行政には「審議会」と呼ばれる組織がありますが、これは「行政の隠れ蓑」と言われ、批判されてきました。審議会とは、自治体に付随する行政機関であり、学識経験者等で構成され、特定の政策課題等について議論する会ですが、その人選は自治体の裁量で決められることも多く、初めから結論が決まっており、政策の「お墨付き」を対外的に示すためだけに活用されているとの批判が未だに根強くあります。

この審議会と同様に、政策評価の外部評価も、政策の正当性を示すアリバイづくりのために使われるのではという批判があります。つまり、自治体の息のかかった学識経験者が、自治体の意向に沿うように甘い評価をする可能性があるという批判です。

3 事業仕分けの登場と批判、そして進化

このように、外部評価に対しても様々な問題や批判がありますが、それらの問題を解決しようという取り組みもいくつかあります。

2010年度予算編成のために民主党政権が導入し、当時の蓮舫参議院議員の「2位じゃダメなんでしょうか」発言で大きな話題となった「事業仕分け」も一種の外部評価です。事業仕分けとは、「仕分け人」と呼ばれる外部の有識者等が、公開の場で、事業担当者とその事業の必要性について議論を行い、その事業の「廃止」「縮小」「継続」等の判定を下すというものです。

ただ、事業仕分けは、コスト削減の側面ばかりが議論されている、判定を下す仕分け人がどのように選定されているのかが不明確、議論が一方的、判定が「廃止」となっても実際に行政が事業を廃止していないといった様々な批判を浴びました。

しかしながら、事業仕分けも進化しています。現在では、外部有識者が専門的な視点から議論を行い、その議論を聞いている住民が実際の判定を行う「市民判定人方式」が主流となっています。

また、他にも外部評価の発展的な事例があります。

たとえば、愛知県東海市では、住民協働により「まちづくり指標」を作成し、指標をもとに、住民と行政がまちづくりの進捗状況や成果を把握し行動する取り組みを行っています。

この仕組みのポイントは、政策目標の設定や指標作成の段階から住民が参加しているという点にあります。住民が日頃感じている生活上の課題とそれを測定する指標が住民によって選定されるため、住民と行政が同じ方向を見て課題解決に取り組んでいくことが可能となります。これは、「協働型評価」ともいえる仕組みであり、外部評価による欠点を補う手法といえます。

以上、政策評価における外部評価について述べてきました。外部評価自体は、アカウンタビリティを確保するうえで重要な取組であると思います。ただ、まずは自治体内部でしっかりと政策の評価を行い、改善していくことが重要であることに変わりはないでしょう。

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