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「夏に喰われる」Chapter2

大した遠出でもないが、
大きなリュックにやれ懐中電灯だの、水筒だの、
ついには頑張って貯めた小遣いなんかをつめる。
それはまるで、ちょっとした冒険のつもりでいて
詰め込んだガラクタは、何かの期待や、
夢だったんだと今では思う。


昔懐かしい、なんてことないビー玉や
おもちゃの双眼鏡、お菓子のおまけなんかは、
部屋の隅で埃をかぶりながらも
まるで宝物のように部屋の隅で埃を被っている。
いつのまにか埃がかぶってしまったものは決まって
ある時突然、意味もなく格好良く、
キラキラして見えるから成長は不思議だと思う。


畳の匂いと、纏わりつく暑さで目を覚ますほどに
暇という暇を謳歌する。
乾涸びた素麺を視界の端に、扇風機に宇宙人宣言。
太陽が鳥居の朱色の彩度を上げ、
青空が建物を縁取って
夏が街中のコントラストを上げていく。


濡鴉の長い髪の君を愛おしく思い浮かべて
夏休みをほんの少し恨めしく思いながら
開けた瓶ラムネからサイダーが溢れ出ていく。
炭酸の中で転がるビー玉が、君の瞳のようだとか
恥ずかしい事を少し思うのだ。

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