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日進月歩 ~Road to MBA~#61

2020/12/8:テクノトレンド2③
 火曜日はテクノトレンド2となり、引き続き経営組織論・ソフトウェア開発プロセス・生産管理(ソフトウェア)・テクノロジー( IT ビジネス関連)を専門分野にしている平井先生の講義の3回目です。本日はゲストスピーカーである株式会社パルコデジタルマーケティングの川角様をお招きし、小売業界におけるテクノロジーの活用をメインに講義をいただきました。

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Ⅰ:NewYorkへの視察から感じたこと
 まずは米国最大級の高級百貨店である「NORDSTROM」を視察した内容についてご紹介いただきました。NORDSTROMとはどういった企業なのか、特徴を以下に簡単ですがまとめてみました。

【特徴1】
従来の百貨店以外に、低価格帯のアウトレット(NORDSTROM rack)や、在庫を持たず顧客に合った商品を取り寄せ提案するパーソナルストア(TRUNK CLUB、NORDSTROM Local)、オンラインストア(NORDSTROM.COM)など、多彩なチャネルを形成している点
【特徴2】
オムニチャネル拡張に積極的に投資し、全体売上に占めるEC売上高は30%以上になっている
⇒複数のチャネルを掛け合わせて顧客を囲い込み、全体最適を追求している

 この他にも、NORDSTROMの接客は「伝説」と言われるくらいに超一流である。ホームレスの女性が店内に入っても販売員が笑顔で温かく迎えて試着をすすめた様子を、神父さんが見て語り継いだという逸話によって伝説として謳われるようになっている。従業員には入社時に必ず『Nordstrom's Employee Handbook』が渡され、そこには規則が1つだけ書かれている。

どのような場面でも、自分が良かれと思う判断を有効活用してください。それ以外には規則はありません。

 このような顧客に対しての接客サービスに加えて、店舗にもいろいろな工夫をしている。(A)フロアのど真ん中にBARを設置し、お酒を飲みながらリラックスして買いものが出来る空間を作る。(B)デジタルを活用して、タッチパネルで商品を選ぶとVRで試着や口紅の試塗が出来たり、選んだ香水の匂いが楽しめたりという演出を作る。(C)ECを拡大している中で返品についてもQRコードを利用して簡単にできる仕組みを作る。他にも様々な取組みによって、総合的に顧客へのエンゲージメントを高めている。

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 次のキーワードは、”エシカル”である。なぜエシカルな企業が評価されるようになったのか、このトリガーになるのが「SDGs」であり、世界でも注目されている。歴史ある全英オープンでペットボトルを全て排除したり、米国テック企業のCEOがパリ協定への新たな取組みに署名するなど、各企業も積極的に取り組む姿勢を示しており、逆に流れに乗っていない企業が淘汰される時代が始まっている。これは、既に環境破壊が起きてしまっている現状も大きな後押しとなっていると感じている。

▶エシカル企業の取組み例
1)EVERLANE:中間業者を通さず、各商品の実際の原価や利幅を公開することで、透明性の高い小売の分野で優れたトップ企業
2)allbirds:製品のカーボンフットプリント(温室効果ガス)をゼロにする(天然素材やリサイクル素材などを取り入れて、環境への負担を減らす)
3)CUYANA:リーンクローゼットを通じて、優しく使用された高品質のアイテムをハートの虐待的な状況から癒されている女性に渡す
4)Swell:美しさと持続可能性、そして必要とするコミュニティに還元する製品をつくる(使い捨てのペットボトルを無くす環境に配慮した商品)

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Ⅱ:withコロナ/afterコロナにおけるデジタル化

 最も大きな新型コロナウイルスで変化があったのは、「消費者の行動」ではないだろうか。緊急事態宣言の影響も受けて感染をしないように、会社の働き方改革も進み、人は外出を控えて在宅時間が増えるようになっていった。その変化によって、ブランドはお客様と店舗で繋がることが出来ない状態となってしまった。要するに、デジタルでしかコミュニケーションが取れない状態となっているということである。

大切なのは「あらゆる手段でお客様とつながり続けること」で、必要なことは「テクノロジーによる新しい顧客体験の創出」である

 このような新しい顧客体験の創出事例も米国や日本でも出てきており、講義内でもいくつか事例をご紹介いただいた。オンライン接客の導入が着目されており、米国ではEVERLANEやMirrorの事例、日本ではAdastriaの事例から各企業の戦略や方向性などを議論していった。
※自宅にいながらショップ店員に相談しながらお買い物ができる等


Ⅲ:今後の実店舗の利活用について
 このような状況下で実店舗はどうなっていくだろうか。講義内では、実店舗は”触る”ことが出来る付加価値を提供していくものに変わっていき、購入についてはECに流れるのではないか。店舗で在庫を持つことがいらなくなり、配送コストの削減や過剰生産も無くなることで、環境配慮ができる。店舗も人が集まる場所に「期間限定で出店」するなど、地代をかけずに最小ロットの在庫を持つ機能のみに変更していくのではないか。
 アパレル業界における3R(REDUCE・REUSE・RECYCLE)の考え方、日本のしまむらのビジネスモデルやシェアリングサービス、今後のアパレル業界の方向性について議論し、D2Cにおけるデジタルマーケティングの可能性とデジタルだけでないアナログの必要性について議論ができた。

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        立教大学大学院ビジネスデザイン研究科   平岩 宗

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