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J1第4節 川崎フロンターレ対柏レイソル データレビュー

お久しぶりです。ということで今シーズン初のレビューです。今シーズンは昨シーズンと同様に毎試合書くことはできませんができる限り書いていきたいと思います。そして昨シーズンはプレイヤーレビューと題して各試合で最も活躍したフロンターレの選手をMOF(Man Of the Frontale)に選出し、その選手をメインにレビューを書いていました。しかし今シーズンからはそうではなく、私の好きなデータを使ってレビューしていこうと思います。しかしデータレビューと言っても、データオンリーの記事ではありません。データオンリーだと思い込みや、数字に表れない部分を見落としてしまう可能性があるからです。これまでどおり各試合のレビューをしつつ、データを使っていこうと思います。是非とも今シーズンもよろしくお願いします。

記事内でしようするデータはデータサイトから引用するものと、独自で集計したものがあります。特にEPPPPSは初見のかたにはわからないかもしれません。簡単に説明すると、EPPはどれだけ効果的に(相手守備組織の中に)パスを通せたか、PPSはPass Per Shotsの略でシュート1本あたりにどれくらいのパスを通したかを表しています。以下に記事を貼っておきますので詳しくはそちらをご覧ください。

EPP

PPS


1.スタメン

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2.前半~柏のテンポに持って行かれてしまった~

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上図(パスヒートマップと読んでいます)は両チームが相手守備組織の各エリアにパスを通した本数を表しています。パス数が多いほど色が濃くなります。またEPPとPPSも上に掲載しています。

EPPはフロンターレが柏を上回っているため効果的にパスを回せていたのはフロンターレ。しかし今季の45分平均は50.4なので普段よりは苦しんだ前半だった。それはPPSにも出ており今季の平均は36.1なのに対し、前半は75.5なのでシュートに至るまで普段の約2倍のパスを要したと言える。柏は前半シュートを1本しか売っておらずPPSは190と高い数字になっている。

パスヒートマップを見るとお互いトップの後ろのスペース(フロントエリア)が最も多くなっている。柏は右サイドより左サイドのに多くパスが入っている。この原因は攻め残っている家長サイドを使いたかったからか。
フロンターレ今季の45分平均は両サイドでファジーゾーンに20回、ハーフスペースに13回。しかし前半のファジーゾーンへのパスが平均を大きく下まわっている。ここが前半上手くいかなかった原因。ではこれを詳しく見てく。

・柏のファジーゾーンを上手く使わせない守備

フロンターレがいつものようにビルドアップをするのに対し柏は2トップが中央を閉じてサイドに誘導する。

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4分頃は江坂がシミッチにマンマークで守るように見えたが、その後の10分からは呉屋と二人でシミッチを挟む形で守っているように見えた。
そうするとフロンターレはシミッチを使った短いパスで中央を突破することができないのでSBにパスを出す。CBには常に強くプレッシャーをかけなかった柏だが山根と旗手のSBにパスが出ると、仲間とクリスティアーノのSHがプレッシャーを強める。
そのときに縦を切る立ち位置をとる(15分10秒や28分20秒)のでWGにボールが入らない。これがファジーゾーンにパスが入らなかった原因。WGへのパスコースを切られたSBはIHへのパスコースを探すが柏のボランチが監視しているので詰まってしまうことが多かった。旗手がクリスティアーノの逆をついて個人突破するシーンが前後半で数回あったように個人突破頼みになっていたように思う。

このような状況になり車屋と山村は中央へ無理にパスを出すようになる。そこで柏のボランチに刈り取られてしまうシーンが多かった。前半の途中から家長が外に張るのではなく内側に入ってプレーするようになった。こうすることで中央で数的有利を作りだす狙いがあったと思う。ただこれもなかなか上手くいかない。そんな中で上手くいったシーンが2つ。

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1つめは13分30秒のシーン。問題点はSBに対して柏のSHが縦切りをしてくるためSBのパスの出しどころがないこと。このシーンでは旗手が斜めの動きでハーフスペースに入ることでパスを受けれた。また先述した家長が中に入ってきたことで染谷をピン止めし旗手にプレッシャーがかからなかった。

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2つめは21分40秒のシーン。プレーが切れたところではあるが碧がDFラインに落ちることで山根をファジーゾーンに押し上げる。この時碧が速いパスを送ったので、仲間のプレスバックが間に合わず山根から脇坂へと横パスが入った。数日前にファジーゾーンの重要性の記事を書いたらまさにそれがこのシーンに出たので是非ご覧ください。

この2つのシーンはどちらもSBが高い位置をとることで上手くいった。このとき1つめでは脇坂が、2つめでは碧がSBの位置からボールを配球している。このようにIHがクロースロールでDFラインに落ち、SBが高い位置を取るようなポジションチェンジをすることで柏のSHが縦切りする守備を回避することができた。ただこれを再現性高く行うことができずに苦しんだ前半だった。

・ひっくり返してくる柏のロングボール

軽く柏の攻撃について。柏は昨シーズンオルンガを使ったカウンターが武器であった。そんなオルンガが移籍した今季はどうか。比較的ビルドアップをする頻度があがったように見える。しかしこれはビルドアップで攻撃しよう!ではなく相手を自陣におびき出してロングボールでひっくり返すという疑似カウンター。前から積極的にプレスをかけていくフロンターレは間延びしてしまうのでこれが効果的だった。

そのロングボールで狙われたのは主に間延びしたライン間。フロンターレはハイプレスをかけるのでIHが柏のCHに後ろからついていく。またシミッチが前に出て行きスペースを空けていた。ここにいる江坂などへのロングボールが多かった。

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これは18分のシーン。柏がGKからビルドアップを始めたのでフロンターレはハイプレス。このとき柏のCHが降りていくが、江坂が前線に残る。これに対してフロンターレはシミッチを含めた中盤3枚がハイプレスに参加するので赤い四角形の部分にスペースができる。そこに向けて多少アバウトでもロングボールを蹴ると柏がボールを回収する。

ルーズボールを回収された結果、間延びしたライン間を使ってサイドに展開されるという展開が続いた。特に家長が守備に戻らないので柏の左サイドへ展開されると数的不利でクロスやハーフスペースにパスが通されてしまった。これがさきほどのパスヒートマップにも現れている。

試合を通して柏は26本のクロスを上げたが成功数は5本。苦しんだ前半に失点しなかったのはSBが良いクロスを上げさせず、CB特に車屋が空中戦で負けなかったから。車屋は空中戦4/6回勝利している。

3.後半~選手交代で活性化~

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後半フロンターレはシミッチ、脇坂、長谷川を下げて塚川、橘田、三笘を投入。柏は選手交代なし。

前半両チームで140回だったボールロストが後半は172回とよりオープンな展開になり両チームともPPSは30前後で約30本のパスでシュートにまで至るように。そんな展開のなかでEPPはフロンターレが39.8で柏が23.1とフロンターレの方が効率良くパスを通せたことでシュートが増えた。
前半同様柏はロングボールの回収を目指す。しかし前半とは逆に後半は右サイドが中心。クリスティアーノと旗手のマッチアップが多く見られた。ここのデュエルで旗手が勝てたのは大きかった。ちなみに旗手の地上戦は9/11勝利。
フロンターレは前半少なかったファジーゾーンへのパスが三笘の左サイドで増えた。得点も三笘のドリブルから。

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上図は後半両チームのシュートを打ったゾーンを表しています。ちょっと雑かも...
柏も後半シュートが増えたもののエリア外からが4本で最も多く、後半もフロンターレの守備陣が光ったと言える。柏は今シーズンPA右からシュートを1本も売っておらずここは改善点か。
フロンターレは中央からのシュートが最も多い。これは主に三笘がドリブルで深い位置まで運びそこからのパス。三笘様々だ。

・効果的だった選手交代

後半から入った三笘は攻撃面で塚川は主に守備面で変化を見せた。
シミッチはオンザボールで生きる選手なので、守田が上手かった自分が動いて他の選手へのパスコースを作る動きがあまり得意ではない。それに対し塚川はシミッチよりはできると思う。CB間に落ちたりハーフスペースに移動したりとその流動性が効いてた。
ただ塚川が入ったメリットはそれよりも守備面だと思う。前半ではシミッチが空けたスペースをロングキックで狙われていたが、塚川はシミッチに比べてハイプレス時に江坂を意識しておりセカンドボール回収に効いていた。既に紹介した18分のシーンと62分15秒のシーンを比べると一目瞭然。ただこれは鬼さんの指示でもあるかもしれないのでシミッチが悪いとも言い切れない。シミッチに競らせてCBは裏ケアっていうこともできるし。
その結果柏のロングボールはサイドが増えそこで潰すことができた。

三笘はオンザボールでは地上戦7/11勝利で、オフザボールでは裏ぬけやハーフスペースでもボールを受けていたことが効果的だった。特に三笘が入ったことのメリットは、2人を相手にしても抜けるのでファジーゾーンを取らなくてもそのまま前進できてしまう点。48分50秒のようなシーン。

・前半で垣間見えた突破法をアレンジしてビルドアップ

前半に紹介した上手くいったシーンは2つともSBが高い位置を取ることでできたと書いた。言い換えれば脇坂と碧がDFラインに加わって3バックのような形で攻撃が始まった。それを少しアレンジして後半は上手くいったように思う。

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58分30秒のシーン。碧がアンカー落ちで3バックを形成してビルドアップ。それに対して柏は2枚なのでACを抑えるだけでCBにプレッシャーがかけられない。柏のSHは442ブロックから飛び出してCBにまでプレスに行くか迷い車屋はフリー。左利きで縦パスを入れられる車屋が左ハーフスペースでボールを持てば、ズバッと縦パスを入れることができる。この時SBの旗手もファジーゾーンを取れているので三笘が反転できた。

上のシーンは碧がアンカー落ちで3バックを形成したが64分35秒と65分25秒は片方のSBが残る左右非対称の3バックを形成してビルドアップしている。それまではランダムに3バックを形成していたが、この時間帯以降はこの形が続く。鬼さんから指示があったかどうかはわからない。フロンターレが中盤を落とさないで3バックを作るのは珍しかったので取り上げた。
車屋や山根がいるしこれからはシティのように相手に合わせてビルドアップを2+3か3+2を使い分けられると良さそう。

4.まとめ

前半は苦しんだ中で後半に選手交代で流れを変えることができたのは良かった。ただ前半の飲水タイムから戦術的に3バックでビルドアップなどできたことはあった気もする。やっぱり三笘に頼らずに勝てるようにならなければいけない。一方で収穫もあった試合だったと思うので次に繋げられたら。

今回久しぶりのレビューでさらに新しい取り組みもでもあったためわかりにくいところもあったと思いますがこれからトライアンドエラーでやっていきますので是非よろしくお願いします。あと数試合分のデータが集まったらデータプレビューも最下位するつもりなので是非。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

5.データ引用元


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