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【後編3〜最終回】なんと、古典ミステリの名作も無料で読める📚クリスティ、クイーン、ヴァン・ダインなどなど

やっと最終回です。

はっきり言って、ここまで引っ張るほど読みがいのある内容ではないんですが、なんかつらつらと書いていたら興が乗ってしまったというか。

ようするに、Kindle Unlimited はとくに「古典」を無料で読むのにおすすめだよ。それの古典ミステリ版(すごくしぼってますが)だよっていうのが本稿のテーマです。

最終回はヴァン・ダイン


S. S. Van Dine
(ウィキペディアより)

神経衰弱により、安静にしていないといけないという療養期間(2年間)の間、なんと2,000冊ものミステリ小説を読破し、その体験をもとに独自の創作法を体系化。

この当時ですでにそれだけの数のもの(ミステリ、推理小説)が書かれていたとは。

まぁ、日本でいえば芥川龍之介の『羅生門』なんかもその範疇に入りますしね。そう捉えれば、いわゆる「ザ・ミステリ」以外も含めると、それくらいはあってもおかしくないですか。

切腹』なんかも。
(超名作です)

松竹映画『切腹』
仲代達矢主演

脱線&枕はこれくらいにして、ヴァン・ダインです。

彼の功績、ミステリ作家としての価値は大量の作品を渉猟して独自の体系(売れる、読まれる作品を書くための)を「ロジック」で構築したことでしょう。

こちらはデビュー作ということもあり、トリックや話の運び方よりも、探偵役や主要な(以降の作品でも出てくる)登場人物たちのキャラクター造形、関係性の提示にわりと力点が置かれてます。

探偵役(本業は違う)の「ファイロ・ヴァンス」は、以降のミステリ小説の探偵役のひとつの鋳型になっています。(京極夏彦さんの『京極堂』なんかも、多少なりとも影響を受けているのではないかと)

いわゆる「ペダンティック(衒学趣味)」ってやつも特徴のひとつ。

京極さんといえば、驚愕とともにさっそうと現れたこのデビュー作。

切ないラストも含め、すべてを兼ね備えた極上のエンタメ小説になってます。(映像化にはもってこいのように思えますが、見事に残念な結果に)

ヴァン・ダインに話をもどすと、彼の理論からいえば、ひとりの作家が面白い(売れる、読まれる)作品を書けるその上限は半ダース(6)くらいのものだそうです。

実際、彼はその倍を執筆していますが、言う通り、後半にいくほど残念なことになっていくので、やはり彼の主張に従って初期の6作に的をしぼれば十分かと思います。

この『グリーン家殺人事件』は外せない。他の作家たちにも多大な影響を与えてます。日本では浜尾四郎が「まんま」な作品を書いてますね。

浜尾四郎といえば、短編がよいです。とくに『殺された天一坊』。

ヴァン・ダインにもどって、この『僧正殺人事件』もなかなか。

ラスト、決してやっちゃいけない(探偵役が)ことを鼻でわらいつつサラッとやってます。あまりにあっさりとなんで、犯人かわいそうってくらい。

この後に『甲虫(カブトムシ)殺人事件』や『ケンネル殺人事件』が続きますが、こちらはわたしは未読なので割愛します。

以上です。

ようやっと終わりました。

いくつか再読して感じましたが、古典に魅力や価値を認め、あるていどのリスペクトがないと、それほど面白くは感じないかもしれません。

斬新、奇抜なトリックとか、派手な場面展開、盛り込まれた衒学趣味、際立つキャラクター造形なんかだけでいえば、より現代に近づくほどに「面白い、売れる」作品はあるわけで。

それでも、そうした作品たちも、今回紹介したような古典中の古典(そのさらに古典があるわけですが)があって生まれたものです。

そんな意味で源流にあたってみようかなと思える「余裕」のある方。ロマンを感じ、楽しみたい方には一助になるかと思います。

最後に、Kindle Unlimited の対象ではないですが、ミステリつながりでもう一冊。

本作はここ2〜3年で読んだ中では私的ベスト5に入ります。

なんの先入観も、前知識もなく書店のポップにひかれて(珍しく)読んだのですが、看板に偽りなしでした。

おりをみて、これについても書いてみたいと思ってます。

音(音楽)を活字でここまで生き生きと、リアルに、臨場感高く(そして詩的であり、格調高い)表現した作家は稀有でしょう。

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