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赤い靴を買った。

靴を買った。
真っ赤なエナメルの靴だ。

昔も同じようなものを持っていた気がする。
どんな形だったのか覚えていないけれど、確かにそれは赤い靴だった。

シューボックスの中には小さな頃から履いている靴が綺麗に並べられて、
それは投影機で映し出されたように色あせていた。わたしは一枚一枚を取り出して思い出を探して見るけれど、その赤い靴を思い出すことはできなかった。

それは本当に赤い靴だったのか、
そんな疑問がふつふつと湧いてきたが、確かにそれは赤い靴だった。

それは本当にわたしの靴だったのだろうか、
いや、確かにそれはわたしの靴だった。

あぜ道を歩いた。河川敷を歩いた。あとはどこだったろうか、
ああそうだ。夕焼けが綺麗な浜辺を、あの人の大きな足跡に重ねて歩いた。

いつだったろうか、あの靴を履かなくなったのは。
そんなことを考えてもしょうがない。

わたしは新しい赤い靴を手に入れたのだから。


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