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野田祥久郎
2018年6月6日 22:52
ぼくたちはバーカウンターの高い椅子に座っていた。 ウイスキーグラスの氷は半分解けたところで、彼女はグラスの氷を人差し指で転がしながらその中を見ている。丸く滑らかな氷は白熱灯に反射していた。「なにしてるの?」ぼくは聞いた。「光の反射を見ているのよ」「光の反射?」「そう」彼女は一言つぶやく。「白熱灯の光が氷に反射するでしょ? 氷の表面を指で変えればまた新しい光が反射する。同じ氷なのに光