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母が腕を骨折した時の話

ちょうど約1年前の2021年2月19日の夜中。11時40分ごろ大きな音と悲鳴が聞こえた。階段で母が倒れて血を流していた。私は動揺した。娘がいてくれて本当によかった。

なんとか、夜間の救急診療を行っている病院を検索し、コロナ禍だから、総合病院より整形外科のほうが患者が限られてていいだろうと、隣の大きな町の整形外科にタクシーで連れて行った。その病院は、どうも先代の先生が有名な先生で、2代目先生が継いでいる病院らしかった。

当時、普段めったに出かけることない80代中盤の認知症気味の母の用意をなんとか整えて、整形外科についたのは2時頃だったかと思う。親切な当直の男の先生に対応していただき、レントゲンを撮って女医の院長先生に見ていただいた。右腕の手首から7~8㎝のところの骨が2本とも折れていて、すぐ入院して手術すべきだといわれた。

え、母が数人部屋で入院?今この認知力の状態で、家じゃないところで一人で泊まるなんて無理無理無理。社会生活なんて無理無理。
手術?え、この骨粗しょう症気味の母の細い腕にプレートやボルト入れるの?骨折って、じっとしてればつくんじゃないの?

「手術は、早くしないと効果がない。腕のようなQOLに最も高く関与する部位なら、さっさと手術して便利な生活に戻るのが標準の治療」とのこと。なるほど。きっと普通の若い人はそうだろう。「自然につけると言っても非常に時間がかかるし、高齢だともしかしたらつかない可能性もあるし、ある程度ゆがむ可能性もある。」全く正論だ。気持ちが動いた。でも、うちの母は箸を持つぐらいしか手を使わないから、時間がかかっても何も困らないんだけど。うちの母の頑健な体質であればきっと骨はつくと思うんだけどな…。

「ま、今は夜中で簡易の対応しかできないので、明日朝もう一度来てください。」簡易とは腕の固定が簡易という意味で、痛み止めの薬などもらって出直すことになった。夜中に専門家に見ていただけて本当に良かった。今思えば大病院だったら夜間は整形外科の先生に当たらなかったかもしれない。

家に帰ってきて数時間でまた病院に行かなければならない。母にはダイニングのテーブルで突っ伏して仮眠してもらった。翌日は土曜日だった。また、朝一番揃って女三代で病院に行った。病院は昭和なマンションのような建物だ。快晴の青空。今度は、どこかのベテランの名医の先生が対応だった。ギブスをしてもらった。(東京のクリニックは別の病院の先生が週何回か当番で診療に来るというというところがよくある)

平素平和な我が家では大事件に大きく動揺していた。母だって、厳寒の2月で体調も視力も認知力もよくないから転んだのだ。冷えというのは本当に体に良くない。その後は、まずはトイレに行くのに大騒ぎ。痛みもあるし混乱しているので、誰かがついて誘導しないといけない。普通にトイレの頻度で私か娘が対応しないといけないので、夜中は娘、日中は私のシフトで数か月対応した。そこでまず買ったのは、前あきのマジックテープの下着とちょっとトレーニングウェア風の前あきの上下。これで通院を通した。私が買ったのはちょっと機能性に寄りすぎ、おしゃれは二の次になったが、便利で助かった。同じような境遇の方のためにお店のリンクを貼っておく。

(アスクルにも扱いがあります)

月曜日にまた診療に行くと、院長先生に私の煮え切らなさにあきれられてしまった。腕の骨折なら当然手術なのに、いまだに手続きも入院もしていないなんて。「これ以上、納得がいかないのに押し付けてもいい結果にならないので、ご希望があれば別の病院に紹介状を書きましょう。」と言われた。その瞬間必死で調べた。なんと歩いて行ける近所に手の専門医の先生がおられた!大学病院でも診療しておられて、ピアニストなど繊細な手の使い手の治療をしておられる。「ここだ!」

結局、救急の病院には突き放されてしまったが、先生の決断が早くて結果よかった。そこは率直な物言いの先生のためか、口コミの評判はあまりよくないが、標準的な治療として、診療も対応もとてもちゃんとしている。先生の言い方とか建物が古い(きちんと管理されている)とか表面的なことで口コミに悪くかかれるのはひどいと強く思った。うちが変わり者なだけで、先生の言ったことは全てまっとうだ。

かくして、近所の先生のところに向かった。クリニックは広いスペースに先生の理想を感じる配置、設備。物腰の柔らかい年配の先生は非常に丁寧で、先生も「母は高齢だし、細い腕にボルトを入れるのは負担があるので、ギブスで経過を見ながら治療していきましょう」と言ってくださった。「よかった、やれやれ」と向かいの蕎麦屋さんでお昼を食べた。

昭和のテレビドラマに出てきそうな蕎麦屋さんで、母の痛々しい様子はお店の人の目を引いた。せっかくの外食だし食べやすそうということで、母には天丼を頼んだ。しっかり完食で、細身で痛々しい姿の母が、食が細そうな見かけなのにすごい食欲なので、店のおばさんも大将もびっくりしていたのが記憶に残っている。

その後、1週間に1回ぐらいクリニックに通って、最初はギブスを作り変えていただいたり(健康保険では2回しか作り変えられないらしい)、経過を見ていただいて、治癒していった。クリニックは看護師さんも十分な人数がいて、手当も極めて丁寧にしてくださる。

特に、寒い時期だったからよかったけれど、暑い時期なら前腕を全部覆うギブスは蒸れそう。週一のギブスを外しての診療の後はきれいに腕を拭いていただいた上、持参したクリームを塗ったりする余裕もあって、本当に丁寧に手当していただいた。また、私は前にタイで買ったバジル入りのアルコールジェルを持っていて、それを腕に塗ってもらうと消毒効果もあり香りもよくてよかった。

2か月以上、たっぷりかかったと思うが、丁寧に治療していただいて、歪みも全く目立たず、今では骨折したことを本人が全く忘れるほど(記憶力に難ありなので)痛み・違和感なくくっついた。先生に感謝、強い母に敬服。


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