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アルトルイストになるために

環境保全に関する第一人者をお招きしての勉強会。
以下、講師のお話から自分メモ。

コロナは健康や経済など被害があったけれど、悪いことばかりではなかった。人と人との繋がりの大切さに気づかせてくれた。
社会には4つの資本があるので、それぞれ見てみよう。

1つ目の人的資本にとっては大きな喪失があったことは言うまでもない。
2つ目の社会資本(ソーシャルキャピタル)にとっては、良い面もあったのではないか。人がより強く結び合うようになった。これはガバナンスに非常に大きな影響がある。
3つ目の生産(金融)資本は大きなダメージを受けて、これからも回復には1年以上の時間がかかると思う。多くの人が楽観的に見ているが、私はそうではない。
4つ目の自然資本には、コロナは二つの面がある。CO2の削減や、水の浄化など、経済活動の停滞によって自然環境が回復するという良い面があった。一方、ロックダウンによってアフリカやアジアの一部などで希少動物(陸・海)の保護が行き届かなくなった結果、密猟が増えて絶滅危惧種の危機が増している。

コロナの影響は、4つの資本すべてを見る必要があるが、自然資本をちゃんと管理していくことの重要性が再認識された。21世紀に入って、人類はこれまで4つのコロナを経験している。2003年のSARS、2009年のH1N1、2013年のMARS、2019年のCOVID-19。死亡率と感染力の掛け算において、今のところは両方高いものはなかったのが幸いだが、今後、掛け算の結果が極めて大きくなるウィルスが登場しないとは言えない。

今、今回の教訓を活かしているのは中国だ。例えば、野生動物を人間が食べることが原因である可能性があるということで、中国は野生動物の市場を閉じている。今後、私たちがそのように過去の経験から学ぶことが必要になる。公共医療にしっかり投資をしている国は、状況が比較的よかった。今後、公共医療をはじめ、公共の資本を強化することがますます重要になるだろう。その時に、自然資本も整えていくことに大事になる。

企業活動も変わる。株主の利益を最大化することを目標に活動してきた企業が多いが、そのようなプライベートな富を見るだけでなく、公共の資本に貢献することが大事になるだろう。4つの資本に対して企業活動のパフォーマンスを測るように変えていく必要があり、それを推進する新しいシステムを我々は開発してきた。まさにコロナのおかげで開発が遅れたが、なんとか発表を世界環境デーに間に合わせることができた。

今後、どんな分野に投資していくべきか、説明したい。我々はInclusive Green Economy(包摂的なグリーンエコノミー)というテーマを掲げている。大きくは、Green EconomyとInclusive Economyの2領域に分けられる。Green Economyは、Buildings, Agriculture, Fisheries, Energy Supply, Forestry, Tourism, Transport, Waste, Water, Manufacturing&Industry, Citiesといった項目。Inclusive Economyは、Inclusive Education, Inclusive Health, Inclusive Finance, Inclusive Infrastructure, Inclusive Consumptionといった項目。グリーンエコノミーだけだと、環境要素に寄りすぎてしまい、人や社会の要素が抜け落ちてしまう。それを補うために、包摂的なエコノミーという概念を重ねた。

滋賀県の琵琶湖は、一番悪い時期から回復したという素晴らしいストーリーを持っている。世界で最も古い湖のひとつでありながら、一時期は石鹸の汚染で環境が破壊された。そこから市民の取り組みによって回復した。

都市のサステナビリティの重要性は高まっている。都市は資源の浪費家であり、地球のエネルギー消費やゴミの排出の大きな部分を占める。今後、都市エリアの無秩序な広がりが進むと、エネルギー効率が下がって地球環境に悪影響を与えるだろう。なるべく人がコンパクトに住める都市のあり方を模索する必要がある。もうひとつ、世界的に各種災害のリスクが年々高まるのに重ねて、都市の広がりによるその被害の拡大が見込まれる。

これらの問題に対して、いかに緊急対応していくか。良いニュースとしては、TEEB(The Economics of Ecosystems & Biodiversity)の研究が進み、成果が共有され始めている。健康的な生態系が持続可能な都市の基盤になると考える。都市の中での自然の存在は、より住み良い街づくりのためにも非常に重要だ。それを実現する上で、企業の役割も大きい。私たちは、公共的な4つの資本に対して企業がどのように貢献しているのか測定する仕組みを開発した。大企業向けにはI360X(TM)、中小企業向けにはSME360X(TM)がある。世界に中小企業は4億社あると言われているので、その環境への影響は大きい。2020年1月のダボス会議で発表することができた。すでにSMEの方は、シンガポール、オーストラリア、フランス、ドイツなどで事例が生まれている。持続可能な都市づくりのための公共交通システムに関しては、ブラジルのクリティバのバスシステムなどの事例も。

企業にとっては大変な時代だが、新しいチャンスもある。ITのおかげで企業の運営の仕方は変わってきた。産業構造も変わる。5Gなど通信への投資が進むが、商業不動産の投資は落ち込んでいく。一方で、住宅不動産、それも都市の外にある豊かな環境の住宅不動産の価値は上がっていくのではないか。

などなど、議論は多岐に渡った。

今回の勉強会の個人的ハイライトは、講師と10年も前からお付き合いのあるAさんからの鋭いコメント。

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