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生態系/協生農法/ネットワーク理論

り稀有な「独立研究者」として独自の活動を続ける数学者の森田真生さんのお話を聞いた。

以前も京都の法然院で開かれた勉強会でお話しされた時にお会いしたのが初めて。今回もまた法然院にて、コロナ後初めてのオフライン講演会を開かれるということで、楽しみにしてました。あいにく仕事が入ってしまって現地参加できなかったのだけれど、梶田住職が気にかけてくださって、映像をシェアしてくださり聞くことができた。森田さんは、頭のキレが良すぎるのか、とにかく喋るのが早い。英語も堪能で、たまに英語で喋ると、日本人の英語なのに聞き取れなかったりする。今回は聴衆がご年配だったおかげで、だいぶ抑えてくれたのだろう、ついていくことができた。

今回は数学の話メインではなくて、「生命の時代」というテーマで僕たちが今生きている世界の状況を数字で示しつつ、「計算」というアプローチによる世界把握の限界と、それでは捉えきれない全体性への回帰が語られる。気候変動、人口爆発、種の絶滅・・・ご本人も言うように、前半は気持ちが暗くなる話。でも、ちゃんと数字で状況を把握した上で、ちゃんと気が滅入ったところから始めることは、大事だと思う。

興味深かったのは、生態系が崩壊するモーメントについての話。生態系は、ジェンガのようなものである。地球は案外がっちりしていて、多少のダメージを加えても、いくらかバランスが崩れても、特に大勢に影響はない。しかし、それはジェンガのようなもので、ある程度までは大丈夫でも、ある閾値を超えると「ガラガラガッシャン」と一気に行ってしまうという。

では、その限界点はどこかといえば、そのタイミングを計算によって正確に算出できる予測モデルを人類はまだ持っていないし、現在持っているモデルの妥当性も怪しい。例えば、北極の夏の氷が完全に消滅するタイミングは、最近更新された計算モデルを用いた最新の研究結果によると、かつての予想より大幅に早まって2035年だとされている。「まだ、最終的な結論は出ていない」と言いながら予想の計算ばかりしているうちに氷が溶けてしまう問題もあるし、計算モデル自体が間違っていた場合、今回のように前提が崩れて予想が急に変わることもある。

同じことが北極の氷だけでなく、生態系全体に言える。ガラガラガッシャンがいつやってくるのか、誰にも分からない。分からないが、近づいていることだけは確か。そして、それがやってきてからでは、手遅れであることも。とにかく、時間がない。

「希望もあります」と、森田さんが紹介してくれたのが、ソニーコンピュータサイエンス研究所(Sony CSL)の舩橋真俊さんが取り組む、協生農法。

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