マガジンのカバー画像

松本紹圭の方丈庵

このnoteマガジンは、僧侶 松本紹圭が開くお寺のような場所。私たちはいかにしてよりよき祖先になれるか。ここ方丈庵をベースキャンプに、ひじり仲間と対話と巡礼の旅に出ませんか? … もっと読む
¥2,000 / 月
運営しているクリエイター

#お寺

仏教の書店 / 葬儀の民主化 / 鎮守の森

書こうと思ったアイデアメモが溜まってきたけれど、一つ一つ断片的だけれど、そのまま出してみる。 ◆ 大学の講義で学生さんが、北海道の「いわた書店」のことを教えてくれた。わが故郷、北海道の書店のことながら、全く知らなかったので、恐れ入る。 なんでも、「自分の趣味趣向などのカルテを入力すると、1万円で、良い本を見繕って送ってくれる」というサービスで、テレビなどでも話題なのだとか。サービスがとても人気で、今年は3,000件くらい応募があった中から学生さんは選ばれて、本を送っても

「社会的処方」としてのテンプルモーニング

『「テンプルモーニング」アンケートから見る掃除と幸福度の関係』レポート、僕が研究員の末席を汚す蓮花寺仏教研究所の今年の紀要に掲載となった。データサイエンティストの大成弘子さんとの共同執筆。アンケートにご協力くださった皆様、ありがとうございました。研究成果は関連しそうな知人の研究者たちとも共有し、今後の発展の可能性を探っているところ。 アンケートから見えてきたことを、一般向けにわかりやすく大成さんがnote記事「朝のお寺の掃除は利他の実践である」にまとめてくれたので、こちらで

エコーする過去と未来

※本記事はnoteマガジン「松本紹圭の方丈庵」の定期購読者限定記事として執筆していますが、これからのお寺や宗教に携わる人にとって特に読んで欲しい内容なので、5/25まで期間限定で特別一般公開します。いつも定期購読してくださっている方には、改めて感謝申し上げます。 ◆ 前回のnote記事「「日本のお寺は二階建て」のリフォーム案」(2021.5.10)の続編となる記事なので、よければ先にそちらをお読みください。 ◆ 前回の記事で話したように、お寺の一階は、Time Sca

「日本のお寺は二階建て」のリフォーム案

※本記事はnoteマガジン「松本紹圭の方丈庵」の定期購読者限定記事として執筆していますが、これからのお寺や宗教に携わる人にとって特に読んで欲しい内容なので、5/25まで期間限定で特別一般公開します。いつも定期購読してくださっている方には、改めて感謝申し上げます。 ◆ これまでたびたび「日本のお寺は二階建て」論を語ってきたけれど、この度、翻訳中の『The Good Ancestor』からインスピレーションを得て、その二階建てをどのようにリフォームしていけばいいのかという方向

「ダスグプタ・レビュー」と鎮守の森

某県知事との連続勉強会、ここ最近のゲストも素晴らしく。 Grafferという会社がすごい。創業者で代表取締役CEOの石井大地さんのお話を伺った。 東京大学医学部に進学後、文学部に転じ卒業。2011年に第48回文藝賞(河出書房新社主催)を受賞し、小説家としてプロデビュー。複数社の起業・経営、スタートアップ企業での事業立ち上げ等に関わったのち、株式会社リクルートホールディングス メディア&ソリューションSBUにて、事業戦略の策定及び国内外のテクノロジー企業への事業開発投資を手

インターネットでお寺を開く@Clubhouse

Clubhouseが話題。 と今書くのがすでに時代遅れ感があるくらい、日本で急速に盛り上がりを見せている。言い訳をするわけではないけれど、個人的にはClubhouseをはじめとした音声SNSの勃興に前からずっと注目してて、昨年9月のnote記事でもClubhouseに言及していた。 Clubhouseは無料だけれど招待制のサービスなので、入会にはすでに入っている人から招待してもらう必要がある。日本では人気沸騰した直後の数日、フェイスブックやツイッターでは、入りたい人からの

音の巡礼、はじまる。

ご存じ、今年4月から始まって以来、力を入れて続けているテンプルモーニングラジオ(TMR)ですが、その背後には遠藤卓也氏あり。TMRの企画の相談からサウンドエンジニアまで、二人三脚のような形でやっています。 遠藤さんとはもう学生時代からの付き合いなので、思えば人生の半分以上ずっと交流の続いている長い友人であり、「誰そ彼」というお寺の音楽会を共に始めたり、今では仕事も一緒にする仲間なのですが、僕が最近「音」の可能性に注目しているのも、二人での盛り上がりも大きいです。音楽好きの遠

どうか、お寺を継がないで。

先日、未来の住職塾の企画で、U30世代を中心に若手宗教者の当事者ミーティング(オンライン)を開いた。当事者ミーティングとは、北海道浦河町のべてるの家などで盛んに行われている、当事者の人同士が集ってそれぞれ自分の感覚や経験をそのまま言葉にしてお互いにシェアするミーティングだ。アジェンダが決まっていて結論を出すことを目指すビジネスミーティングとは違って、一人一人の素直なナラティヴが大切にされる。 事前に男女2名ずつ4名の方にスピーカーをお願いして、当日順番に口を開いてもらったが

誰の土地でもない“神の島”

久高島を知っていますか? 沖縄本島の東南部の沖にあるこの離島は、琉球王朝時代から神聖な“神の島”として大切にされてきました。 この島の大きな特徴は、土地の所有者が存在しない、ということです。日本国の法律において所有権の設定されない土地は存在できないはずなので(詳しい人教えてください)、存在しないというのは正確ではないかもしれません。「“神の島”は誰の土地でもない」という理念を日本国の法律の枠組みに収めるために、「総有」という形態をとることによって、その理念に近いものを実現し

月参りは「お寺の一階と二階」をつなぐ橋

この記事はマガジンを購入した人だけが読めます

Temple Morning Radio

ポッドキャストの番組を始めました。 お寺の朝から始める、安養な生活。あなたのウェルビーイングがととのう、テンプルモーニングラジオ。平日毎朝の配信です。 週替わりで全国各地のお寺から素敵なゲストをお招きして10分くらいのトーク。続いて「今日のお経」コーナーでは、全国各地のお坊さんから届いたバラエティ豊かなお経を日替わりでお送りします。不肖私、松本がパーソナリティを務めます。 Spotifyが便利です。もちろん無料。ぜひ登録してみてください。 Spotifyで聴く Anchor

「家にいるのに帰りたい」人へ

ホームがブラック化する悪夢 オルデンバーグのサードプレイス議論によると、第一の場所がホーム(家庭)、第二の場所がワークプレイス(職場)、そして第三の場所として挙げられるのが、教会、カフェ、クラブ、図書館、本屋、公園など、とされている。 しかし今、何が起こっているかというと、第一の場所であるホームに、第二の場所であるワークプレイスが、雪崩れ込んでくるという事態だ。 「家にいるのに帰りたい」 方丈庵でのMTGで、いくつか話を聞いた。都心のオフィスで働く友人は「在宅にテレワー

発心

西脇唯真(ゆいま)さんのnoteを読んでください。 なんと初々しく、清々しく、美しい、発心。 自分が大学を卒業して僧侶になるときには、とてもこんな素直な発心(ほっしん)は持っていなかったと思う。 どうしたら人はこんなに真っ直ぐに育つのか。 唯真さんは、僕がお坊さんになって間もない頃、確か中学の修学旅行だったか、愛知県からわざわざ東京・神谷町の光明寺を訪ねて来て、中学生ながら色々と仏教のことやお坊さんのことを質問してくれたことがありました。お寺の子弟として、将来の進路を考え

非常事態の仏教

落ち着かない日々が続きますね。世界を見れば死者数も日に日に増えていて、それに対して祈ることしかできない自分があり。予定がことごとくキャンセルとなりますが、キャンセルするにも労力はかかるので、自由時間が増えるわけでもなく。焦りが募るばかりで、まがりなりにも宗教者としてこのままでいいのだろうかと、自問自答する日々が続きます。みなさんいかがおすごしでしょうか。 こんな時、仏教ではどう考えればいいのか。法然院の梶田住職からお話しの機会をいただいたので、「非常事態の仏教」と題して自分