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「UFOはまだ来ない」石川宏千花著 ※追記アリ

空想科学系のSF作品かと思ったら、どちらかといえば冒険と大人になったエピソードのない「スタンド・バイ・ミー」、あるいは中学生版の映画「ミーン・ストリート」のような作品だった…。ミーン・ストリートは30代にもなって定職に就かない地元仲間たちの話を描いている(主人公はマフィアの構成員で真面目っぽいが、プータローの親友に巻き込まれて人生を台無しにしてしまう感…)話だけど、男同士がつるんで色んなことに巻き込まれる感じは確かに共通していると思うし、それを日本の10代の男子に当てはめるとこういう感じなのかな?

「UFOはまだ来ない」作者の石川宏千花さんは前職で自分も携わったイベントに、まだ自分が異動した年にいらっしゃって、直接お話をしたとか運営にかかわったが故に知っているわけではないのだけれど…まぁ、何かと話題に上ることが多かったので、時間のそれなりにある(といってもいつまでもこんなことしていられない…/笑)今だから、ちょっと読んでみようってことで…地元の図書館にあった単発の作品を見つけてきて…。


率直な感想…物語としては様々なエピソード…学生時代のあるある、教育現場における大人からの「いじめ問題」…あるいは仲間の中で描かれる「死生観」…これらを10代の読者向けにどのように落とし込んでいくのかって考えたとき、2人の男子中学生の視点で描いてくる感じは興味深かった。特に「入れ墨」に関するエピソードの描写は、妙に自分の地元も含めて「非行少年少女」の巻き込まれる感じがして、結構ハッとさせられたよね…。

ただ、「スクールカースト上位」という意識のある2人の主人公の設定故、ある意味クラス内の諸問題には無敵であるのだけれど、同時に無敵すぎるが故に2人への「共感」「感情移入」という意味では、若干距離があるようにも感じられる読者も冒頭では多かったんじゃないかなとも思ったけど、逆に言うなら、そういう強力な力のある主人公でなければ、物語がいい方向に展開していかないのが現実の学校生活なのかなとも感じるし、そういう意味ではむしろ「リアル」なのかなとも感じるよね…。

彼らが結局、それだけの地位を手に入れて生活を守っても、そこに居座ることなく学校外の生活に楽しみを求めるのも「リアル」だし、立場は違えど当時の自分たちと重なる点でも「リアル」を感じられるというかね…(割かし同性間で物語が完結していく感じも含め…)。

にしても、主人公を含めて学校内でリア充っぽくって、運動にも音楽にも恵まれている仲間同士なんて本当に羨ましい…(笑)こういう言い方はあまりよくないと思うけど、少なくとも自分たちはそういうエリート集団とは違って、どちらかといえば若干冴えない印象だけど校内に少しの居場所のある人間だったから…。その意味では、彼らにそうした「理想」を託す読者もいるのかなと思うよね…。

個人的には2人からつながるさまざまな物語が非常に興味深かったので、とっても良かったと思います。あるいは、この作品が面白いと感じるなら、↑で挙げたようなスタンド・バイ・ミー、ミーン・ストリートやイージー・ライダーのような作品もきっと興味深いと思うので…ぜひぜひ。

余談ですが、今回使わせて頂いた画像…UFOがお金をばらまくってどういうことなんだろう…?印象的。

※以下は追記になります。

先ほど思い出したんだけど…この作品に登場する先輩と同級生2人の絡み方が、なんだろう…ちょっとさ、「ボーイズラブっぽい」って感じたのって邪推かなぁ…。俺は現代アニメ的なトレンドの作品って実は無知な部分が多くて、それっぽい的な視点や知識の上でしか分からないのだけど…なんだろう、結構体がライトに交錯する…いや、触れ合うとまではいかないけど、若干距離が自分たちの思う友情よりも近いように感じられて…。「人懐っこい」人物という描写のために、ああいう表現を用いた可能性もあると思うけど、その辺りって認識や概念の違いなのか…興味深いよね。

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