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消えてしまいそうな日本語「筆が乗る」
文章を書く行為は、時代が進むにあたって、文字を打つという表現がぴったりと当てはまるようになってきた。
進化する技術のおかげで、書くよりもはるかに早く文字を打ち込み、表を作る事が出来るようになってきた近年、その傍らで消えてしまいそうな日本語に思いを寄せる。
それは「筆が乗る」という日本語。
ここ最近の私の記事では、ずいぶんと文章を書くという行為について書いているが、その中で「筆が乗る」という表現を使っては見たものの、なんだかしっくりこなくて別の表現に変えた事が2、3回あった。
私の「筆が乗る」というイメージに合わない。
「筆が乗る」という言葉を聞いて、どんな様子をイメージしますか?
私がイメージする「筆が乗る」という言葉は、原稿用紙に向かって、ペンが止まるところを知らず、すらすらと踊るようなイメージだ。
実際、「筆が乗る」という言葉の意味を調べてみると、
【「筆が乗る」とは、作家や書家などが調子よく書くさま、すらすらと勢いよく筆を走らせる様子を表現する言い回しです。筆が乗っている時は悩む事も無く、ひたすらに思い浮かぶ物を文章へと書き出している感じで、筆が乗らない時はこちらから無理矢理に場面を動かしている感じ】
という事で私のイメージはあながち間違っていない事が分かる。
「筆が乗る」の他にも、類語で「筆をとる」「筆を走らせる」という言葉があるけれど、今の世の中、文章を書く人の中で、筆と紙を使って創作をする人はどれだけいるのだろうか。
プロット組み立てたり、何か思いついてことをノートにメモする人はまだ多いだろうけれど、実際に物語を書くとなると、きっとパソコンを利用しているはずだ。
言葉がなくなっていく事自体は珍しい事ではない。
言葉は生き物だから、その時代に合った言葉にどんどん入れ替わっていく事はなんら不思議ではないから、仕方のない事だと思う。
今や絶滅危惧種に位置するガラケー時代にあった、「着うた」や「チェーンメール」という言葉を今はほとんど使わないように、それは世の理だろう。
ただ、問題は、「筆が乗る」や「筆を走らせる」という言葉の代わりになる言葉がまだ出てきていない事だ。
「筆をとる」の言葉の代わりは、なんとなくイメージがつく。
「パソコンを立ち上げる」とか「ワードを開く」とか、今でいくとこの辺りの言葉が妥当ではないだろうか。
でも、「筆が乗る」「筆を走らせる」という言葉に変わる言葉は難しい。
「パソコンに打ち込んでいく」という言葉はなんとなくニュアンスが違う気がするし、「文字を入力していく」という言葉も、イメージした時に、「筆が乗る」「筆を走らせる」に比べて、スピード感やリズム感が感じにくい。
今の時代に合わせるとしたら、「踊るように文字が並んでいく」とか?
「頭の中の言葉が次々に可視化されていく」とかかな?
全然埋まらないワードの画面を見つめながら、そんな事を考える翔英です。
何か良い言葉があればぜひ教えて欲しい。
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