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「ペア・UXデザイン」のすゝめ

はじめに

はじめまして、UX プランナーのShoty(@shoty_k2)です。
今回は「ペア・UXデザイン」についてご紹介します。

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「ペア・UXデザイン」とは

「ペア・UXデザイン」とは一体何か。その前に、ペア・〇〇といえば、ペア・デザインは聞いたことがある方は多いかもしれません。Oreilly出版している”Pair Design”ではペア・デザインを下記のように説明しています。

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<引用>
Pair design is the counterintuitive practice of getting more and better UX design done by putting two designers together as thought partners to solve design problems

※counterintuitive:反直観的な
出典:https://www.oreilly.com/content/pair-design/

ざっくり訳すと、「2人のデザインパートナーでより良いUXデザインをつかって、デザイン課題を解決していくこと」となります。ただ国内ですとペア・デザインと聞くと狭義の意味でのインターフェースやビジュアルデザインを想起されやすい傾向にあり、具体的にはランディングページ・バナー・UIデザインを共同で進めることを想起するかと思います。

今回ご紹介するのは、ペアで行うUXデザインの実践です。なのでペア・デザインではなく、「ペア・UXデザイン」という言葉を意図的に使用しています。そしてここでは「ペア・UXデザイン」を、調査・分析、スケッチ・ワイヤーフレーム作成などのアプローチで”より良い体験設計や課題解決を、2人でリアルタイムデザインすること”と定義させていただいています。

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なぜ、「ペア・UXデザイン」をやるのか

私が所属するUXチームは、自分を含めて2人です。もちろん案件の大小はありますが、2人で10個前後の案件に携わっています。少人数であってもUXデザインの価値を証明していくためには、2つのアタマで生み出せるものを最大化していくことが必要でした。一人で案件で行き詰まっていたときに、チームの先輩から、「2人で同時にやってみよう」と声をかけていただき始まりました。
次第に、2人で試行錯誤しているうちにペア・UXデザインの効果が少しずつ分かってきました。

■ペア・UXデザインの効果
①リスクを分散する
②チームの知識・スキルを相乗効果で高める
③複数案件に対して、短時間で最大限に貢献する

①リスクを分散する
新しく企画することや案件検討をすることを少しでもワクワクするように、恥ずかしながら私の脳内では「企てる(くわだてる)」と言っております。UXチームでは「企て」への参加方法は、2通りあります。

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案件に2人で最初から最後まで一緒に入る共犯型と、1人で案件に関わるが都度相談をして悩みを解決していく単独犯型となります。

そして2つの型を機能させるため、週に約4時間ほど時間を確保して2つのリスクを回避しています。

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物理的なリスク
1人が急に休みになったり緊急案件が舞い込んで来たときに、担当案件を一時的にスライドすることで、「できませんでした」という状態にならないようにしています。

心理的リスク
必ずしも常に同時に手を動かしているわけではりませんが、課題共有の時間を多くとっています。プロジェクトを具体的に進めるために、解決するべきユーザー課題やビジネス課題、チームが進化していくための課題、望んだキャリア歩むための課題...なんでもOKです。カウンセリングのスタートアップ企業であるcotreeの櫻本さんの記事に、

”「孤独」とは、課題を共有できないことである”
https://note.com/marisakura/n/n4615d36d2789

と書いていらっしゃるように、チームで課題共有をすると孤独を感じにくくなると思っています。


一人で課題を抱え込むと辛いですよね。UXデザイナーの仲間を増やしたいというチームもあるかと思いますが、仲間を増やす前に仲間を失わないことも非常に大切であると考えています。


②チームの知識・スキルを相乗効果で高める

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先輩から学びフィードバックをいただくことが多いですが、私は過去にマーケティングチームに兼務していたことや数値分析の経験や趣味ではハマっているUIデザイン等の、他領域の観点からも意識的に意見することを心がけています。また、他のプロジェクトでうまくいった事例や、検討過程であったマネージメントからの指摘をお互い共有し、二の足を踏まないようにしています。


複数案件に対して、短時間で最大限に貢献する
UXデザインのプレゼンスを組織内で高めるためには、複数案件で成果創出・貢献を続けることが肝になります。限られた時間のなかで多角的な観点を出し合い、それらを形作っていく作業をリアルタイムで進めることで質とスピードを担保することができます。

UXデザインで成果を出すための意識しているアプローチを、こちらのnoteで紹介しておりますので、ぜひ読んでみてください!


どのように実践するのか

具体的にどのようにペア・UXデザインより良い体験設計や課題解決を、2人でリアルタイムデザインすること)を実践するのか、ユーザーインタビューの事例を使って説明します。

ここで突然ですが、この二人は何をしているでしょう?
(左:私 @Shoty , 右:チームの先輩)

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これはグループインタビューを別室で視聴中、片方がユーザーの言動をポストイットに書きながら、同時にもう1人が言動の背後にあるユーザーの想いや価値に基づいてグルーピング・構造化している様子です。

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ここで行っているのは上位下位関係分析(ラダリング)という手法です。インタビューや観察で見つけた事象を切片化し、それらを「ユーザーが何のためにしているか・どのような想いでしているのか」で似たもの同士でグルーピングし、そのグループを抽象化して最終的にユーザーの本質的な要求価値まで昇華させます。この手法を詳しく知りたい方は、ワニを使ってわかりやすく説明しているこちらのブログを参考にしてみてください!
参考:ワニが好きな理由を上位下位関係分析してみた


「そもそも、定性調査をやらせてもらえる雰囲気ではない」という悩みを見かけることがあります。たしかにユーザーインタビューは設計から分析まで時間がかかり、定性調査の価値が組織に十分に理解されていない場合は、プロジェクトに組み込むにあたり特に”スケジュール”という大きな壁があります。

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インタビューの全文書き起こしは超ハードですし、その後の分析と調査レポート・改善提案まで時間がかかります。なので実査〜ラフな分析をインタビューが終わるまでに同時にやってしまおうという試みです。通常の調査スケジュールと比べると、ぐっと期間を短縮することができます。

ここからは、このリアルタイム分析の長所と短所、各工程をもう少し詳しく説明していきます。

■リアルタイム分析の長所と短所
長所

-インタビュー終了直後にチームを巻き込みんで議論しやすい
-次のインタビューセッションで深堀りするべきことが分かる
-調査期間を短くできる

短所
-分析の精度が7-8割になる
-とにかく疲れる
※全集中しますが、呼吸が乱れることはありません

Day0 - 実査、言動の切片化、ラフ構造化 -

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ユーザーの言動を「何のためにしているか・どのような想いでしているのか」をベースにグルーピングし、ラベルをつけていきます。ただ言動の切片がある程度集まらないとグルーピング開始できないので、インタビュー序盤はユーザーの人となりを理解と、言動の切片化を一緒に行います。

ここで非常に大切なことは得られた情報を、LATCH(Location、Alphabet、Time、Category、Hieralchy)に基づいて分類しないことです。次々とポストイットが増えていきますが、表面的に分類をせずに背後にある想いで分類することを心掛けます。ここでは真剣衰弱でトランプの位置を覚えるように、各ポストイットの内容を頭にいれながら進めます。また切片化する担当者は、何かに発見や気づきにつながりうる言動を意識しつつも、大量にポストイットを書いていくことが必要になります。

Day1 - 本質な要求価値の抽出と構造化 -

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Day0で作った内容を、無限のデジタル模造紙「Figma」に移植。その後、グループをさらに抽象化して最終的にユーザーの本質的な要求価値に書き換えていきます。さらに、それぞれのニーズや本質的な価値がどのような関係性にあるのか構造化します。ここでは、Figmaを使うことでお互い遠隔地からZOOMをつないでリアルタイムに取り組むことができます。

Day2 - 分析結果まとめと調査設計の振り返り -

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チームメンバーに分析結果や改善方針を共有します。「鉄は熱いうちに打て」というように、プロジェクトメンバーがユーザーインタビューに興味があるうちに共有することで、圧倒的に次のアクションにつながりやすくなります。また、分析すると調査の反省点が見えくるだけではなく、足りない部分を次はどのようなアクションで補っていくべきかと、建設的に議論ができます。

さいごに

今回はユーザーインタビューを例に「ペア・UXデザイン」の実践方法を説明しましたが、他にも情報設計とワイヤーフレームの作成を2人でリアルタイムで行うこともありますし、あらゆる場面で実践できます。

私たちも初めからうまくできたわけではなく、実験的に小さい課題に共に向き合うことから一歩を踏み出しました。在宅勤務が増えてくると画面越しで「頭」しかうごかしていないことも多いですが、まずは30分でいいので「頭」・「心」・「手」をうごして一緒に課題に向きってみることから始めてみるのはいかがでしょうか!!

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Twitter: @shoty_k2

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