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ユーザーインタビューへの「不安」を、「自信」に変えるテクニック Part.1

はじめに


UX デザイナーのShoty(@shoty_k2)です。
いくら準備をしていてもインタビューは不安がつきものです。特にUXデザインにおけるユーザーインタビューは準備が7〜8割と言われていますし、私自身もそう思います。ただ、これからインタビューをしたいと思っている人や数回だけ経験がある人の大きな不安は、インタビューで具体的にどのような質問をして舵取りをすればよいかです。準備や分析に関する書籍・記事は多く拝見しますが、具体的な質問方法やボキャブラリ、こんな時はどうすればいいのかといったよくある質問への答えを教えてくることは少ないです。まさに、ユーザーインタビューはブラックボックス状態だといえます。

あなたはきっと「とりあえず、なぜを繰り返せ!」という言葉に、飽き飽きしているかもしれません。ここではインタビューへの「不安」を「自信」に変える、より実用的な会話術や方法を紹介していきます。


こんな人におすすめ

・顧客調査のためにこれからインタビューしたい or インタビューしはじめたが、うまく聞けているか不安な方
・面談・面接をされる方
・ライターなどでインタビューする方


ユーザーインタビューとは


サービスやプロダクトに対してユーザーから課題や潜在的なニーズ、背後にある価値観を引き出すための共感をともなった営みです。そのためには、ユーザーがどのような状況や文脈で、どんな想いや目的でどんな言動をしたかという事実(ファクト)を集めることが必要です。良いユーザーインタビューとはインタビュー目的に沿って、質の高いファクトが多く集めることだと考えています。


📖テクニック

質の高いファクトを集めるためには、インタビューの経験値も必要な一方ですぐに意識することで不安を自信に変えることができる、武器とその使い方もあります。この武器をつかってスタートダッシュで躓かないようになればと思っています。
今回は、ECショッピングサイトの利用実態調査を対面で実施する場合を例に説明します。
※対面ではなくオンラインでのリモートインタビューをしてみようと思っている方は、オンラインならではの注意点や事前準備があります。詳しくはこちらからご覧いただけます。


①話やすい関係性と環境を作りだす

初対面の人と話すことは、多くの方は得意ではありません。なので、まずは相手が話しやすい関係性と環境作りが大切です。

感謝と興味を持ち、本題につながるアイスブレイク

まずインタビューのために時間を作って来てくれた相手に感謝をし、興味を持ちましょう。人は敬意が感じれない相手や興味を持ってくれていない相手に、すすんで話をする気になりません。
とはいえ、どのようなアイスブレイクをすればいいのか困るという相談をよく受けます。個人的には相手がこだわっていそうなもの/こと×インタビューのテーマに繋がるかもしれない話をします。例えば

(私)「本日はお越しいただきありがとうございます。(中略:〜〜自己紹介等)。あっお荷物もそこに置いて大丈夫ですよ。そのスマホケース頑丈そうでいいです。実はこの前ちょうどスマホを落として画面にヒビがはいっちゃって…。最近、買われたんですか?」
(相手)「いえ、1年前ほどに買いました。私も一回割ってからショックで…色々調べてネットで買ったんですよ。」
(私)「そうなんですね。普段はインターネットでよくお買い物されるんですか?」
….

うまく出来すぎた話かもしれませんが、実際にこのまま本インタビューができそうな勢いで対話することが多いのでおすすめです。ただ、まだ関係性が構築できていないので、身につけているものに対して評価しすぎないように注意してください。(可愛い、かっこいい等)
相手のテンポに最初は合わせて話すと、なお効果が上がります。


斜めに座る

落ち着いて話をしてもらうためには、座る場所からこだわってください。個人的なおすすめは最初は相手に向かって斜めに座り、手元の操作を見せていただくときに横に移動することです。

斜めに座る理由は、以下の2つです。

  1. パーソナルスペースを確保できる

  2. 視線がぶつからない、外せる

1.パーソナルスペースとは他人が自分に近づいても不快に感じない限界の範囲のことであり、一般的に男性は縦に長く、女性は円形と言われています。

2.対面に座ると視線を常に合わせなければならず、相手に対して無意識のうちに敵対心を抱きやすく、心理的に距離を縮めるのが難しいと言われています。ほどよく視線を外すことができれば緊張感が和らぎます。


返報性の原理をふりかける

返報性の原理とは、「他者から何らかの『好意』を受けとった際に、お礼やお返しをしたくなる心理現象」です。ここで登場するのが、お菓子と飲み物です。インタビュー中は話して喉も渇きますし、時間帯によってはお腹が減っているかもしれません。もちろんアイスブレイクになるだけではなく、受け取った相手はお返しとしてインタビューへのコミットをあげてくれる可能性があがります。お菓子は食べにくいものや、噛むときに大きい音がするものは避けましょう。
注意点としてはあくまでも、"ふりかける”程度であることです。インタビューにご協力いただいた方に気持ちよく話してもらえるような気遣いにとどめ、お返しを期待しすぎないようにしてください。「役に立つことを話さないといけない」と思わせてしまうことがあります。
最初に謝礼について一瞬ふれ返報性の原理を使う方法もありますが、ここでは割愛します。


相手へ期待するスタンスを明確にする

インタビューに入る前に、相手に期待することを伝えましょう。

  1. 誰の話を聞きたいか

  2. どんな心持ちでいてほしいか

1.相手のことを知りたいと伝えることです。気がついたら相手が一般的論やあるべき論を語ってしまうことがあります。

2.こちらに気遣いすることなく本音を話してほしいと伝えることです。
具体的には

「本日は、Aさんが普段どのようにECサイトを利用されているのかお伺いできればと思っております。Aさん個人の率直なご意見をお伺いしたく、ざっくばらんにお話できれば嬉しいです。」

また、記録を取られていることを相手が意識し萎縮しているようでしたら、「記録されていると緊張しちゃいますよね。私の言葉も一緒に記録されているので、実は少し緊張しています笑」と同じ気持ちであることを伝えたり、冗談ぽく「記録のBさん気になりますか?今日だけはカカシだと思っていただいても大丈夫です笑」と伝えることもあります。(※Bさんとの関係性が高い場合に限る)


②自然な会話を心がけ、かんたんな言葉を使う

現場で普段つかっている言葉をついつい口走っていないでしょうか。相手にとってわかりやすく自然な会話になるように心がけるだけで、インタビューから得られる質が高いファクトが多くなります。

■DO NOT
「それではこのプロトタイプを起動いただき、気になった部分をフィードバックください。」
(相手)「ここ押してもいいんですか?」
「はい、自由に触っていただき問題ないです。ちなみに、どのような仕様だと思いましたか?」
(相手)「仕様ですか…(?)。あっなんかページが開くのかなと」
「それは、なぜですか?」
相手「なぜってぇ…リンクぽかったので…」

■DO
「それではこの試作のページを開いていただき、気になったことがあれば教えてくださいね。」
(相手)「ここ押してもいいんですか?」
「はい、自由に触っていただいて大丈夫です。ちなみに、押すとどのようなことがおきると思いましたか?」
(相手)「この商品を購入したらお得なキャンペーンにいくのかなって思いました。」
「どうして、そう思われたんですか?」
(相手)「先程上で見た商品のキャンペーンの画像と似ていたので、それと関連性を感じたからです。」


③「なぜ?なぜ?」禁止令

「とりあえず、なぜを繰り返せば大丈夫だ!」とアドバイスをされたことはないでしょうか。なぜを繰り返すことは不正解までいかないものの、個人的にイマイチだと思っております。

「なぜ」を繰り返すことがイマイチな理由

  1. 自然な会話ではなく、ときに非難的印象を与えるから

  2. 人は言動の理由をこじつけてしまうことがあるから

1.普段友だちや同僚と会話するときに、「それは、なぜですか?」と相手の回答に対して4-5回連続で聞くことはなかなかないと思います。まるでロボットと会話しているような不自然さと圧があり、たくさん「なぜ」と言われると萎縮して話しにくくなってしまいます。

ユーザーの意識と行動モデル


2.人は常に強い意志を持って言動を選択していると思いがちですが、実際は90%前後はほぼ意識せずに外部状況に影響を受けて自動判断しています。極端な例ですが、「なぜ道を渡らずに止まったのか」という問いがあったとします。「歩行者や車は道路を通行する際は、信号機の信号などに従うことが義務があり、道路交通法では赤色の点灯は歩行者は横断してはいけないので、止まったんだ。そうすることで自分を危険から身をまることができる」なんてことは考えず、無意識に止まっているのです。

いちいち考えていたら脳が爆発してしまうので自動化は大切でありますが、それは外部から影響を受けていることがほとんどです。一方でやっかないことに人は自分で決めたいいう自律性が強く、過去起こった出来事に理由を尋ねられると強制的に論理的な思考をして理由を捏造してこじつけてしまうことがあるのです。これを逆手にとると、そのときどんな環境や状況にユーザーがいたのか把握が質が高いファクトを集めにつながるかもしれません。


無生物主語が助けてくれる

では、どうすればいいのでしょうか?学生時代に英語の勉強で苦しめられた、あの「無生物主語」が助けてくれます。

例文
Why did you come here?
→What brought you here?
(どうしてここに来たのですか?)

Why are you here?
→How come you are here?
(どうしてここに来たの!?)


これは先述した、人の言動が外部状況に影響されるモデルをまっすぐ表した構造になっています。ただ日本語に直訳すると不自然さがありますので、実際にインタビューで使うときは、WHY(なぜ)を5W1Hの他の仲間に言い換えてみるとよいでしょう。

なぜそうしているのですか→いつからそうしているのですか?(WHEN)
なぜそう感じたのですか→どこでそう感じたのですか?(WHERE)
なぜそれを買ったのですか?→それを買った決め手は何でしたか?(WHAT)
なぜそれをしないのですか?→何がそれを妨げているのですか?(WHAT)
なぜそう思うのですか?→どのようにしてそう思うようになったのですか?(HOW)

個人的に万能な質問文はどうして、そう思われるようになったんですか?」です。「思われる」は敬語に聞こえると同時に、何かしらの出来事や状況があなたを動かしたのではないかというニュアンスを含めることができます。相手もその時の状況を思い出しながらエピソードを語ってくれます。

人の想いとは曖昧なものです。いきなり”なぜ”と言われても言葉にするのが難しいものです。このような切り口から気持ちを紐解いてあげることで、自然と深い対話ができるようになります。

おわりに

いかがでしたでしょうか。ユーザーに向き合うことの楽しさを実感できるように、まずは1つでいいので活用していただけたら嬉しいです。近日公開予定のPart2では、よくみなさまから相談をいただく

  • 深堀りってなにをすればいいのかわからない

  • 沈黙になるのが怖くてどうすればいいのかわからない

  • 話が本題から大きくそれてしまって軌道修正できない

  • 相手の反応が薄くてつらい

  • ついつい誘導的な質問になってしまう

など…….これらの悩みに答える、具体的なテクニックを紹介していきます。

TwitterのDMでインタビュー時の困りごとがあったら教えてください。



今回の記事の内容が「かんたんすぎたよ!もっと刺激的な情報を!」という方は、下記も参考になさってください。

・インタビューを聞きながら並行して分析を行う方法を紹介しています。

・解決したい課題を見つけているものの、その仮説を検証する手段がなく困っている方は、ジョブ理論やUXリサーチの考え方を取り入れた、仮説検証プロセスを実践できるサービスもご覧ください。(私はUXリサーチとアドバイス、デザインのレビューを担当しています)


Twitter: @shoty_k2


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