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留学奨学金を目指す人へ①面接までにやるべきこと


はじめに

初めまして。早稲田大学国際教養学部の柳と申します。本記事は留学奨学金の獲得を目指す人に向けて、準備すべきことついて解説しています。細かい計画や人生設計が求められ、難しい局面も多いとは思いますが、一度真剣に自分に向き合った経験は必ず今後活きていきますし、何より自分のビジョンを自信を持って語れる面白い人になれます。留学を通して自分の視野を広げたい、夢を叶えたい皆さんの成功を願い、本記事を執筆しました。

筆者自己紹介

経歴

早稲田大学高等学院を卒業し、現在は早稲田大学国際教養学部に在籍。授業は基本的に全て英語で行われ、経済学や金融に関連する分野を中心に学習。
2023年の夏より1年間、トビタテ奨学金を利用してCaliforniaのSan Franciscoで1年間留学し、ファイナンスを専攻。過去には米スタートアップの日本進出支援を行うコンサルティングファームやSan Franciscoを拠点とするシードステージVC(ベンチャーキャピタル)での長期インターンを経験し、現在はレーターステージの香港系VCで投資案件リサーチを担当。2023年3月には友人と人材マネジメント会社を設立し、取締役及びCFOを兼任。

趣味など

料理や筋トレ、写真など多趣味。何にでも興味があって、面白そうなものはすぐに始めてみるタイプ。高校から英語に真面目に取り組み、留学前時点ではTOEFL 102, TOEIC 945。将来の夢は、起業家や投資家、業界のエキスパートが共に暮らし、密に関われるコミュニティを作ること。

準備事項①自己分析

留学奨学金の選考は、就活とほとんど同じです。奨学金団体の視座から見て、この人は団体のビジョンに合っているとか、将来団体に利益をもたらしてくれるとか考えながら自身の見せ方をうまく調整していきます。トビタテのように国家レベルの奨学金であれば、自分がいかに日本の将来に貢献できるかを示す必要があります。ここで言う「見せ方を調整する」と言うのは自分に嘘をつくと言うわけではなく、自分のビジョンをいかに相手に納得してもらえるように伝えるかと言うことです。自分ではやりたいことがわかっていて、自分のやっていることがどれだけ世界(日本)のためになるか確信していても、相手を納得させるのはそう簡単なことではありません。すなわち、奨学金の面接は、自身のマーケティングとセールスの場です。マーケティングにせよ、セールスにせよ、まず最も大切なのはその対象(プロダクトやサービス)を誰よりも深く知ることです。ここではあなた自身です。本章ではまず、その肝となる自己分析について解説します。

Step 1 自分の興味関心を深ぼる。 本当のパッションはどこにあるのか

自己分析で最も重要なのは本当の自分のパッションがどこにあるのかを探ることです。自分はなぜ大学で教育を学んでいるのか、なぜこの高校に行ったのか、なぜこのバイトをしているのかなど、ほとんどの意思決定の根底にはパッションがあります。ただ難しいのは意識の深層に位置する本当のパッションを掘り当てることにあります。さて、今あなたが通っている大学・高校と専攻分野を思い浮かべて、以下の問いに迷わず回答できるか試してください。

「なぜあなたはその大学・高校でその分野を学んでいるのか」

すぐに答えられなければ、あなたは自己分析の伸び代が充分にあります。逆にこの問いを詳細に答えられた人はこのStepを飛ばして、次に進んでください。ただ、この問いに素早く答えられた人にも改善の余地がある可能性もあります。それは思考の深さです。

例えば大学で教育を学んでいるAさんに、なぜ教育学を専攻しているのか聞きます。仮にAさんが「日本の教育制度に興味があるから」と回答した場合、まだAさんは充分に自己分析が行えていないと感じます。真に日本の教育制度に興味があって没頭する人もいるかもしれませんが多くの場合は後付け的な理由になっていると思います。仮に上記のような答えが出た場合、では自身で日本の教育制度についてどのくらい勉強しているのか、情報を取れているのか考えると良いです。普段から特段何もしていない場合、それは本当のパッションとは言い難いでしょう。

では本当のパッションを見つけるための最適な手段は何か。それは自分自身に「なぜ」を問い続けることです。Aさんの場合は、まず1段階目の理由として「日本の教育制度に興味があるから」を挙げました。ここにさらなる「なぜ」を追加してみます。その時の問いは「なぜ日本の教育制度に興味が合うのか」です。Aさんは「もっと個のスキルを効率的に学ぶ方法があると思い、その方法を見つけたいから」と答えました。ここで1段階目と2段階目の回答を比較すると2段階目の回答の方が遥かに深く、その人の考えがよく現れていると思います。ただ、2段階ではまだまだ不十分と言えるでしょう。目安は上記の流れを5回以上繰り返すことです。以下ではAさんの事例を紹介します。

問1: なぜ大学で教育学を専攻するのか

回答1: 日本の教育制度に興味があるから

問2: なぜ日本の教育制度に興味があるのか

回答2: 個のスキルを伸ばすにはもっと効率的な方法があると思い、それを解明したいから

問3: なぜ個のスキルを伸ばすにはもっと効率的な方法があると思ったのか

回答3: 日本に来ている留学生と関わる中で、彼らが自身のアカデミックなスペシャリティを持っているにも関わらず、自分や日本の友達はジェネラリストであると感じたため、どの様にこのスペシャリティを伸ばせるのか知りたくなったから

問4: なぜ個のスペシャリティを伸ばすことが大事だと思うのか

回答4: 個の興味分野を伸ばせる環境こそが教育の真価であると考えるから

問5: なぜ個の興味分野を伸ばせる環境こそが教育の真価であると考えるのか

回答5: 中等教育課程で様々な教科を均等に学ぶ過程で、興味があった化学に割く時間がなくなっていくのを感じ、苦手教科が多かったこともあり、学校そのものに嫌気がさす様になった。当時化学に集中して勉強を楽しめていれば幼少期の夢であった研究者になっていたかもしれないと考えると日本の教育制度そのものに改善余地があると考えた。自分のアカデミックな関心をとことん追求できる環境こそが、教育のあるべき姿であると感じる。

ここまで5段階の深掘りを行いました。10段階ほど深ぼれるとより個人の経験などに基づいた説得力のある理由が見つかります。なぜの問いをどこで終わらせるのかという基準ですが、個人的には自身の経験が出てきた時が良いと思います。最終的にはここまで深掘りを行ってきた問いと回答を全て見返して組み合わせていき、アンサーを作り出します。以下、Aさんの最初の回答と新しく深掘りした回答を比べてみます。

【最初の回答】
「日本の教育制度に興味があったから」

【改訂版の回答】
「現状の中等教育課程における教育方針は個にあらゆる知識を均等に与えることにフォーカスしており、教育の真価である個の関心や実力を伸ばす環境とはかけ離れていると感じた。私自身、高校では化学に興味があったが、他の苦手教科に割く時間が多く、教育に対する興味を失ってしまった。教育学を専攻することは、現状の教育の目的や課題を学び、より個に適した教育環境について研究することができる最適の場であると感じた」

さて、ここまで来ると、なぜAさんが教育学を専攻するのかと言う問いに対して、自身の経験を交えて回答できています。本当のパッションは日本の教育制度全体ではなく、中等教育課程における個の特性を伸ばす教育方針の探究であることがわかります。

本当のパッションが見つけられると、自分について考えたり、勉強するのが今までより圧倒的に楽しくなると思います。日本の教育制度という幅広い分野に一気に飛び込もうとすると、あまり関心のない文献などを読み漁ることになり、いつの間にか本当のパッションを含む、「教育」そのものに興味がなくなることもあります。ただ、パッションが十分に詳細に捉えられている場合、やることも明確かつ勉強も楽しくなったりします。必然的に自分のキャリアビジョンや将来の夢が見えてきたりもします。

Step 2 将来のビジョン。なぜそれを目指すのか

前章で十分な自己分析ができている場合、このStepはあまり難解ではありません。自分のパッションを考えながら、それを達成できるキャリアパスは何かを考えるだけです。さて、キャリアビジョンを考える上で最も大切なことは、長期的な目線からの逆算です。まずは、自身のパッションに基づいて、人生でいつかは必ず成し遂げたい大きな夢を考えてみます。この過程ではまずは抽象的なものを想像するだけでも構いません。

Aさんの例だと、「個の特徴を伸ばせる中等教育を実現したい」などです。最終的に達成したい大きなゴールが見えてきたらまずはこのゴールを少し具体化してみます。例えば、中等教育の制度を変えられるのはどのような人かを考えてみればいいかもしれません。まず思いつくのは文部科学省で統一カリキュラムの作成を行う方々でしょうか。ただし、これは決して答えが一つに絞られる問いではありません。むしろあらゆる選択肢を考慮してから自分に合うゴールを設定すればいいのです。文部科学省以外にも例えば、文科省のカリキュラム作成にアドバイスを行う有識者や学者、教育系Youtuberだって今の時代はカリキュラム作成に影響を与えることができる可能性もあります。ここでいくつか自分の大きな夢を叶えるための選択肢ができました。そこから興味の惹かれる職業・役職を仮の大きなゴールとして設定してみましょう。

次にこれに小さな夢を追加してマイルストーンを作成します。いきなり文部科学大臣になりたいみたいな大きな夢だけを持つと実際にはどの様にそこに辿り着くのか分からず、途方に暮れてしまいます。さて、Aさんが文部科学大臣を目指すとすると、どの様な経験・スキルが必要になってくるのでしょうか。国家総合職試験や国家一般職試験の合格や、現場での経験が必要だと思うなら教員になるなど、大きな夢に向けたパスは様々です。できるだけ詳細に、例えばここから1年先の夢、5年先の夢、10年先の夢と言ったように小さなマイルストーンを置いていくと、自身のキャリアビジョンに対する解像度がグッと上がってきます。最終的にはなぜ大学でこれを専攻しているのかまで遡って繋げられると、説得力も格段に上がります。

(付録)なかなか自己分析が進まない人へ

さて、ここまでは自己分析から自身のキャリアパスを考える方法について解説しましたが、そもそも自分の夢がない、得意分野や関心がないと思っている人も多いと思います。ただ、私個人として、15年〜20年生きてきた中で、自分のパッションがないと言うことはほとんどあり得ないと考えています。すなわち、自分のパッションや夢がないと考えている人の多くは、自分に向き合う時間を確保することで自分の過去の経験や信念からパッションの種を見つけ出せる可能性があります。

例えば、高校生の時にがむしゃらに月100時間バイトしていたBさんがいたとしましょう。まず考えるべきは何のためにバイトをして、何のためにそれだけ頑張ったかと言うことです。ここでは単にお金を稼ぎたかったからでも全く問題ありません。まず最初の簡単な問いを見つけられたならあとは「なぜ」を問いまくれば必然的に本当のパッションが見えてきます。

お金を稼いだ先にある目標は何か。誰のためにお金を稼ぐのか。どの様な経験が、今の自分を形成したのか。過去のあらゆる意思決定を細かく振り返ることで、自分の深層に眠るパッションの種が見つけられるかもしれません。

面接に向けて

Step 1 自分の見せ方をアジャストする

さて、ここまでで自分の自己分析、キャリアビジョンが詳細に見えていれば、面接に合格するための話題はすでに自分の中にあると確信して良いでしょう。先述のマーケティング・セールスに例えると自身(売り込む対象)の理解は十分です。

ではここからはどの様に実際のマーケティング・セールスを行なっていくかと言うことです。いわば、どの様に相手を説得して、自身を選んでもらえるかを考えると言うことです。

重要なのは、ひたすら客観的な視点に立って考えてみることです。奨学金をもらうということは、あなたが将来団体や日本に便益をもたらすという期待に基づくものであり信頼の証でもあります。すなわち、自分のビジョンが自己中心的な考えになっていては、面接官の心には響かないでしょう。

客観的な視点に立って自己を見るという過程では特に難しい点はありません。ここまでで見つかったパッションや夢が、将来どの様に世の中の役に立つのかを考えるだけです。世の中のためにXXXをしたいなどの最初から周りにインパクトをもたらすパッションや夢が持てていればこのStepは不要かもしれませんが、なかなかそこまで他人のためにを最優先に物事を考えられる人は多くありません。Aさんの例を再度考えると、「個の特徴を伸ばせる中等教育を実現したい」という夢が将来他人にどの様なインパクトを与えるのかを考えるのです。全く難しい問いではありません。例えば個の特徴が中等教育過程で伸ばされることで、将来有力な研究者を輩出できるとか、その結果として日本全体の研究力を底上げできるとかです。他者へのインパクトを伝えるのと伝えないとでは面接官の捉え方は180度変わります。如何に他者のことを考えて、大きなことに取り組み、将来結果を残すかということはどの奨学金団体でも重要な要素であると認識しているはずです。

Step 2 ストーリーパターンを複数用意する(上級)

最後に少し難易度の高いテクニックを紹介します。それは、面接官によって話す内容を変えられる様にするということです。留学奨学金では団体により、その理念や目的が異なっています。そうなると当然ながら面接官の経歴や信念も異なります。面接官に本当に刺さる話をするのであれば、個々の面接官の立場からストーリーを形成することが重要です。想像される面接官の経歴や現在取り組まれていることに即して話すことができると、説得力が上がるだけではなく、話も弾むのでうまくいくことが多いです。

ここでは、先ほどのパッションとマイルストーンをより多角的に考えます。まずパッションですが、深掘りしていく段階で、パッションの根源は自身の経験にたどり着いていると思います。その経験の引き出しをさらに多くしてみると良いです。今のパッションに即する経験は細かく過去を振り返ると結構あったりします。マイルストーンはこれからの未来の話なので簡単です。大きなゴールに辿り着く手段がさまざまであることは前述のとおりで、そのパスを面接官の経験や取り組みにできるだけ近いように話せばいいのです。例えば、Cさんは現在就活に取り組んでいるとします。自分のゴールが「自身のベンチャーキャピタルを立ち上げる」だったとして、コンサルを受けるなら定性的な分析と事業戦略を学びたいと言えばいいし、投資銀行なら定量分析と財務のプロになりたいと言えば良いのです。どちらのパスにせよ最終的な目的には到達できますし、一貫性もあります。未来のことなので自身で柔軟に考えられます。仮にあなたの中でパスが一つに絞れているなら、あえて他のパスも検討してみると、意外な切り口が出てきたりもするかもしれません。さまざまな経験やマイルストーンを用意できたらあとは面接官によって使う経験やマイルストーンを変えるだけです。

Step 3 面接の練習方法

私は元々コミュニケーションが得意で誰とでも気軽に話せるので正直過去に面接の練習をしたことはありません。ただ、年齢差関係なく誰とでも話せるのは私の天性の才能ではなく、普段のインターンシップ等で大勢の前で話す機会があったり、経験豊富な年上の方と話す機会が多いので、ある程度は慣れだと思います。

私の経験上、特定のイベントに向けた面接練習で得られた知識やスキルは普段のコミュニケーションに慣れている人のそれと比べると小手先のテクニックでしかありません。それは面接の練習は一般的に、話の内容や細かいテクニックにフォーカスするものであり、それでは他人の立場から考えることや他人の意思を読み取る練習にはならないからです。実際の面接では勿論話の内容や口角が上がってるか、みたいなことは大切ですが、何より状況に応じて臨機応変に反応する能力や、時には自分の流れに持っていけるような経験に即した根本のコミュニケーション能力が不可欠です。

したがって、まだ面接まで時間が十分にある人は、先輩と飲みに行ったり、気になる企業の人にメッセージを送ったりして、ひたすら色々な人と話す経験を積むことが大切であると感じます。

ただ、面接の練習にも意義はあります。普段のコミュニケーションと面接の場では雰囲気も話の進行の流れも違いますからね。面接の練習相手は留学経験がある人なら基本的に誰でもいいと思います。もし練習相手が見つからなければ、私が喜んでお手伝いいたします。本稿の最後に連絡先を記載してありますので、お気軽にご連絡ください。

終わりに

ここまでお読みいただきまして、ありがとうございます。留学準備は非常に手間のかかる大変な作業が多いですが、その先に待つ体験はあなたの人生のターニングポイントになります。私の留学はもう終盤に差し掛かっていますが、さまざまな国籍の人と共に生活したことやビジネスの最先端で活躍する人とのコミュニケーションは、改めて自分自身に向き合うきっかけになり、大きく成長することができたと感じています。皆さんの成功を心よりお祈り申し上げます。

また、続編の「留学奨学金を目指す人へ②」では、頻出質問に対する回答の組み立て方や、私がトビタテ奨学金に合格した際に使用した書類・面接質問への回答を公開しております。ご興味がありましたらぜひ併せてご覧ください。

最後に、エントリーシートや面接の採点・練習にあたり、相手が見つからない人はぜひご連絡ください。短いセッションになるかもしれませんが、可能な限りお手伝いいたします。下記メールアドレスに、お名前・希望するセッションの内容・可能日時(3つ以上ご提示ください)をお送りください。
shotayng1123@gmail.com



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