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本:USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門

個人サマリ(読み終わった日 2020/09/07)
マーケティングとは?という問いに、シンプルに答えている本でした。非常に表現もわかりやすく、身に詰まされる話もあり、それらがこの本が売れた理由だと思います。
とにかく新入社員や就活中の学生、マーケティングにこれから携わりたい人など、「マーケティング」という日本でなかなか定着しない(理由は後述)学問の入門として超おすすめ。


■たった1つの考え方

・消費者視点
結論からいうとそれは「消費者視点」、ConsumerDrivenである。
つまり「どれだけ消費者価値につながるか」ということで、もしその商品・サービスが消費者価値につながらないのであれば、それは一切意味がないのである。具体的には「ゲストが本当に喜ぶもの」と「ゲストが喜ぶだろうと作る側が思っているもの」は必ずしも一致しておらず、USJにおいてはここを変えたということ。

・消費者視点が何故できないか
プロとしてその技術を毎日見ていると、どんどん目が慣れてしまい「感動の水準」が一般消費者のそれとどんどん離れていってしまうから。多くの消費者にとってわかりやすく面白いものが、彼らにとって刺激や品質が足りていないものに見えてしまう。
そうして個人や部門のパワーバランスを反映した「玉虫色の妥協案」へ行き着いてしまい、結果消費者価値としてのベストよりも遠くなってしまう。
その中でマーケターとは常に消費者理解の専門家であるべし。
そして「作ったものをうる会社」を「売れるものを作る会社」へ変えていくのである。



■日本におけるマーケティング

・シーズ発想の日本はマーケティングができていない
戦後の行動経済成長時代の日本は、経済全体が右肩上がりで、「良い製品を作れば売れる」と信じられてきた。しかし技術が成熟してきている昨今、その差別性が無くなってきている。圧倒的新製品は生まれにくく、小さな差別化にこだわるようになり、消費者のニーズからズレていってしまう。
一方、マーケティングとはアメリカの巨大な自由競争市場で、企業が生き残るための消費者最適をする知恵を体系立て学問にしていったもの。特に例えば「水」のようなローテク業界はその生き残りのために、知恵を絞る必要があり必然的にマーケティングが発達していった。

・「技術」と「マーケティング」
良いものを作ればうれる時代は終わり、いまは「売れたものが良いもの」という時代。
この時代マーケティング優勢で技術力を活用していくべきである。技術開発の向かうべき方向性と、開発すべきコンセプトを、マーケティングが最初に決定する。こうして「売れるものを作る」。



■マーケティングの本質とは

・マーケターとは誰のことか
マーケターとは「マーケティングができる人」のこと。
それは経営大学院の教授でも、代理店のプランナーでも、マーケ部の部員でもない。マーケティングを知っているだけでは、できるようにならない。
マーケティングができるようになるには、実践を積むしかないのである。

・マーケティングとはなにか
商品を売るのは営業であり、商品を売れるようにするのがマーケター。
商品を売れるようにするとは、顧客が商品を買っていく状態を作り上げること。つまり、自社商品が顧客に「選ばれる必然」を作ることである。

・マーケティングの本質とはなにか
消費者の頭の中、商品を買う場所、商品の使用体験
この3つの「消費者との接点」をコントロールすることで、売れる仕組みを作ることが本質としている。

1:消費者の頭の中を制する
認知率」 人は忘れる生き物であり、関心のあること以外はすぐ忘れる。
そのため、その存在自体を知ってもらうこと。
ブランドエクエティー」つまり消費者の頭の中にあるブランドに対する一定のイメージを競争に有利になるように築く。
この2つを上げることで、消費者の頭の中に自社の商品が選ばれる必然性を作るのが、頭の中を制するということ。

2:店頭を制する

配荷率」どれだけ多くの店頭で自社ブランドが扱われているか。
欲しいと思った商品が、お店に行ってもない状況を避ける。
山積」棚の外で商品を目立たせること。
殆どの消費者はブランドを仮に認知していたとしても、買い物をしている瞬間は忘れている。そうした人に「あ、これ買おうと思っていた」と思い出させるのがこの山積。
価格」マーケターが展開したい価格は、必ずしも店頭で実現できるわけではない。中長期的にブランドが発展するために必要な価格の考え方「価格戦略」を定め、それを実現するための具体プランを徹底的に詰めていく必要がある。

3:商品の使用体験を制する

消費者は商品に対してある程度の期待をもって購入したのであって、実際の使用体験が期待に対して上回る方向に設定できていればリピート率が上回る。つまりB&Dに対して、どれだけ消費者が喜ぶものを作らせられるかどうか。ブランドを既存しないが、価値も作らないような、体験が微妙なラインのものは、エネルギーに対して割に解決策にならないので世に出すべきではない。

・治水工事のような「パーチェスフロー」
マーケティングの大きな仕組みとは、
「売上金額」
=「売上個数」
「平均価格」
=「消費者の数」
「認知率」「配荷率」「購入率」「平均価格」
これを前提に、治水工事のようにどこの川幅が問題なのかを明確に洞察し、工事し、水が流れる仕組みを作る。
それが「売れる必然を作る」マーケターの仕事である。



■戦略とは

・戦略とは
目的を達成するためにリソースを配分する「選択」のこと。
達成したい目的を叶えるために、ヒト・モノ・カネ・情報・時間・知的財産を何に集中するか選ぶ、「資源配分の選択」である。

・何故戦略が必要か
1:達成すべき目的があるから
2:資源は常に不足しているから
経営資源は達成したい目的に対し、常に圧倒的に足りず、この限られた資源をどれだけ無駄なく有効に使うのか考え抜き、選ぶことで足りるようにする。この選ぶことこそが戦略である。

・選択と集中の大切さ
数的有利は必ずしも大極での勝利を保証するものではない。
100という経営資源を、5つのマーケティング活動に均等に20ずつ分配したとて、どの戦局においても資源が足りず「勝てるライン」に届かないで負ける。そこを例えば3つの活動にしぼり4・3・3などに割り振ることで、5局中3局は勝てるようにすれば、その戦では勝利したことになる。
担当者はあれもこれもやらないと不安になるので、資源を中途半端に消費することが珍しくない。やると選ぶということは、同時にやらないことを選ぶこと。これが戦略の核になっていく。
※ビジネスにおいては、勝ち負けのラインが明確になっていない場合が多い。だからこそ絶対に負けられない戦局に資源を集めるべきなのである。

・戦略的思考とは
「目的」と「目標」の違い
「目的」:達成すべき使命
「目標」:目的を達成するために資源を投入する具体的なターゲット

「戦略」と「戦術」の違い
「戦略」:目的を達成するための資源配分の選択
「戦術」:戦略を実行するためにより具体的なプラン

戦略的思考はかならず「目的→戦略→戦術」と下方展開していく考え方のこと。戦術よりも戦略を明確にすべきであり、何よりも最初に目的を明確にすることが最重要。
※企業のような組織の場合、戦略がカスケードダウンされ、人にとっての戦術は、別の人にとっての戦略になりえる。(上司と部下の話が噛み合わないのがそれ)大切なのは、共通の目的を確認すること。目的からの距離が近ければ戦略レイヤーの話であり、遠ければ戦術レイヤーの話である。

・大切なのは戦略なのか、戦術なのか
結論、戦略のほうが大切である。
戦略の大きなミスは、戦術でリカバリーできない。
しかし戦術も蔑ろにしてはいけない。戦略が強ければ正しい方向へ進むし、戦術が強ければ遠くへ飛べる。最終的な結果を左右するのは、最前線の戦術なのだから。

・良い戦略とは何か
良い(美しい)戦略とは、相手と自分の特徴差を自信に有利になるように活用できているもの。その戦略の良し悪しのチェックとして、以下4つのSの視点を取り入れる。※すべてをクリアする必要はなく、目安3つほどハマった上に、どこか突出した強みを持っているのが良い。

4S:その戦略の良し悪しを判断する4つのS

Selective
やることとやらないことを明確に区別できているか

Sufficient
経営資源がその戦局での勝利に十分であるかどうか。不十分であれば、まだSelectiveになり、選ぶことで資源を足りるようにする。

Sustainable
その戦略が短期的ではなく中期的に維持できるかどうか。競合がすぐに真似たり、資源がすぐ枯渇してしまう戦略は良いとは言えない。

Synchronized
自社の特徴・強み弱み・経営資源の特徴を有効に活用できているかどうか

最も美しいのは「こちらの特徴上の強み」が向こうの「特徴上の弱み」にハマっている戦略である。


■マーケティングフレーム

・マーケティングフレームワークとしての全体像
戦略パートで話していた目的・目標・戦略・戦術をそれぞれマーケティングに当てはめると以下の通り。
 目的:達成すべき目的は何か?
 目標:WHO(誰にうるのか?)
 戦略:WHAT(何を売るのか?)
 戦術:HOW(どうやってうるのか?)
マーケティングにおいてはこの順に考えを決めていく。
そして全てに先んじて「自分のブランドをめぐる戦況分析」をすべき。
※目標・戦略・戦術など言葉が同じだが、戦略パートとマーケティングパートで意味は違う点注意。あえてわかりやすいようにレイヤーを揃えた書き方をするとこう。ということ。

1:戦況分析
戦況分析とは「市場構造」つまり「自然の摂理」を理解して、それを味方につけるためにやる。この市場構造(摂理)に逆らうことは、地雷を踏むようなもの。戦場において地の利を得るために地形を調べるのと同義である。

代表的な分析手法「5C
Company:自社の全体戦略・自社の経営資源・自社の強み弱みを把握する
Consumer:消費者を量的・質的に理解すること
Customer:協業して市場価値を作り上げるパートナーを理解すること
Competitor:ライバル社だけでなく広義においての競合も理解する
Community:社会がビジネスに与える外部要因・法・税・世論・景気など

2:目的の設定
戦況分析をすすめながら、最初にすべき仕事。目的設定においては3つの点が重要である。この目的は携わる人達のモチベーションに大きく作用し、人的資源を大幅に増やす可能性を秘めている。

・実現可能性
適切な目的とは、高すぎず低すぎずギリギリ届く高さを狙う。
あまりにも高いと、人はやる気をなくし、あまりにも低いと、誰も努力をせず機会ロスが起きる。

・シンプルさ

要素がたくさん含まれた目的は機能しない。それぞれ優先順位を明確にし、人が理解できる、覚えられる、思い出せること。

・魅力的かどうか

1人1人が奮い立つような魅力をそなえれば、どんどん人を巻き込むことができ、魅力的な目的は人的資源を激増させることができる。

3:WHO 誰に売るか? (目標)
限られた資源を投下する、目標を決めるということ。
資源を消費者全員に投下すれば、1人あたりのリソースは薄くなってしまう。まずは消費者の中から「戦略ターゲット」を選び、その次に「コアターゲット」を選ぶ。そうすることでマーケティング予算を集中して投資していく。そしてターゲットは目的達成に照らして小さすぎないようにすることに留意すること。そしてそれらターゲットのインサイトを突いていく。
(インサイトを突くには、ちゃんとこのターゲットを理解していること。)

コアターゲットはどうやって見つけるか
1:ペネトレーション
カテゴリーの中で自ブランドの世帯浸透率を増やせるグループ。いわゆる空白地帯。

2:ロイヤルティ
既存使用者の中で、そのカテゴリー内で自ブランドの消費割合を伸ばせるグループ。マイレージやポイントで浮気する機会を圧迫させるのはそれ。

3:コンサンプション
既存使用者の中で1回あたりの消費量を増やせるグループ。

4:システム
既存使用者の中で使用商品の種類を増やせるグループ。いわゆるブランドで揃えさせる、シャンプーユーザーにそのブランドのリンスを買わせること。

5:パーチェスサイクル
既存使用者の中で購入サイクルを短くする理由を作れるグループ。

6:ブランド・スイッチ
競合ブランドの使用者の中に、ブランド変更可能性の高いグループ。

4:WHAT 何をうるか?(戦略)
WHATの使命は、自ブランドの消費者価値を選ぶこと。自分たちが本当に売っているのは何か考えること。
ブランド・エクエティーの中で根源的な便益の構成部分のことをWHAT。つまり消費者がお金を払ってそのブランドを買う理由である。

5:HOW どうやってうるか?(戦術)
HOWはWHATをWHOに届けるための仕掛けのこと。いわゆるエグゼキューション。一般的にこれらを整理したフレームで有名なのは「4P」(4Pの説明は割愛)。
HOWにおいて、ここでもWHOの理解が最も重要。なぜなら、これがあればHOWは、自分のセンスで判断するのではなく、深く理解した消費者の視点から判断すれば良くなるから。

■マーケターにおけるキャリアプラン

・会社と結婚しては行けない。職能と結婚すべき。
・その業界の年収の上限と下限は、市場構造を把握すればわかる。
・「好き」な仕事でなければ成功することは難しい。
・弱点を克服するのではなく、強みを伸ばすことで、弱点を隠す。
・キャリアとは人の競争ではなく、自分自身の持って生まれたものをどれだけ引き出し、挑戦しつづけるかである。
・マーケターに向いている適正としては
1、リーダーシップのある人
2、考える力が強い人
3、人の心の中を読み解くのが上手な人(EQが高い人)
4、精神的にタフな人


所感
マーケティングに多少なりとも携わる身として、非常にシンプルかつわかりやすく、漫然と学んでいたマーケ理論がどのレイヤーに位置しているか整理された感じがした。またよくあるマーケ理論本のようにいろんな事例から帰納的に解説するのとは違って、すべてUSJでの成功体験をベースに語ってくれるので、それもわかりやすさの1つと感じた。

関連図書

■戦略:数学とマーケティングを融合させた、森岡式戦略本

■戦術:USJを回復させた森岡式アイデアの生み出しノウハウ

■キャリア:後半にかかれていた森岡式キャリア戦略




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