見出し画像

問題解決のための二つのアプローチ - 原因追及と解決探索

はじめに

ビジネスの現場では、日々様々な問題に直面します。売上の低迷、品質トラブル、納期遅延、コスト超過など、問題は多岐にわたります。

こうした問題を放置すれば、企業の業績や評判に深刻な影響を及ぼしかねません。

そのため、問題を迅速かつ的確に解決する能力は、ビジネスパーソンにとって必須のスキルと言えるでしょう。

問題解決力の高い人材は、どんな困難な状況でも最善の道筋を見出し、チームをゴールに導くことができます。

まさに企業の生命線を握るのが問題解決のプロフェッショナルなのです。

問題解決のアプローチには、大きく分けて二つの方向性があります。

一つは「原因追及アプローチ」、もう一つは「解決探索アプローチ」です。

原因追及アプローチは、問題の根本原因を特定することに注力します。

他方、解決探索アプローチは、問題解決の糸口を探ることを重視します。

本稿では、この二つのアプローチについて、それぞれの特徴と具体的な手法を解説していきます。

原因追及と解決探索、二つのアプローチを使い分け、組み合わせることで、問題解決力に磨きをかけていきましょう。



原因追及アプローチの概要

原因追及アプローチは、問題の根本原因を特定するためのアプローチです。

問題が発生した際に、その原因を徹底的に追究し、真の原因(真因)を突き止めることで、再発防止や抜本的な解決につなげることができます。

原因追及の具体的手法

なぜなぜ分析

なぜなぜ分析は、問題に対して「なぜ」を繰り返し問いかけることで、真因を探る手法です。

一般的には5回の「なぜ」を繰り返すことで、問題の本質に迫ることができるとされています。

なぜなぜ分析を行う際は、事実に基づいた分析が重要です。

主観的な判断や予想ではなく、客観的なデータや証拠を基に分析を進めることが求められます。

特性要因図(フィッシュボーンチャート)

特性要因図は、問題の原因を体系的に整理するためのツールです。

特性要因図では、問題を「特性」として設定し、その特性に影響を与える要因を「4M」の視点から洗い出します。

4Mとは、

「Man(人)」
「Machine(機械)」
「Material(材料)」
「Method(方法)」


を指します。これらの視点から原因を幅広く検討することで、問題の全体像を把握することができます。

ロジックツリー(Whyツリー)

ロジックツリーは、問題をツリー状に分解し、原因を階層的に整理する手法です。

問題を大きな要因から小さな要因へとブレイクダウンしていくことで、原因の構造を明確化することができます。

ロジックツリーの一種であるWhyツリーは、特に原因追及に特化したツリーです。

問題に対して「なぜ」を繰り返し問いかけ、原因を掘り下げていきます。

これにより、根本原因に到達することを目指します。

原因追及アプローチは、問題解決において非常に重要な役割を果たします。

なぜなぜ分析、特性要因図、ロジックツリーなどの手法を活用し、

問題の真因を特定することで、効果的な対策を立案し、問題の再発を防ぐことができるのです。


原因追及アプローチの適用例と留意点

製造業での品質不良問題への適用

製造業において、品質不良問題は深刻な課題です。

原因追及アプローチを適用することで、不良の真因を特定し、再発防止につなげることができます。

例えば、ある工場で製品の寸法不良が多発したとします。

なぜなぜ分析を用いて「なぜ寸法不良が発生したのか?」と問いかけ、原因を掘り下げていきます。

「作業者が工具の使い方を誤ったから」

「作業手順書が不明確だったから」

「設備メンテナンスが不十分だったから」

といった原因が浮かび上がってくるでしょう。さらに「なぜ」を繰り返すことで、真因にたどり着くことができます。

原因の裏付けデータを取ることの重要性

原因追及で特定した原因については、必ず裏付けとなるデータを取ることが重要です。

データに基づかない憶測では、真の原因を見逃してしまう恐れがあります。

品質不良の事例では、不良率の推移データや、作業者ごとの不良発生状況、設備の故障履歴などを確認します。

これらのデータを分析することで、特定した原因の妥当性を確認できます。

原因の特定とデータによる裏付けを繰り返すことで、確度の高い真因究明が可能となります。

人の心理面への原因追及は避ける

原因追及においては、人の心理面への追及は避けるべきです。

「作業者のやる気が足りない」

「モラルが低い」

といった心理面の問題は、表面的な現象に過ぎません。

仮に心理面が原因だとしても、なぜそのような心理状態に陥ったのかを掘り下げる必要があります。

教育が不十分なのか、適性に合わない作業なのか、労働環境に問題があるのかなど、根本原因を追究すべきです。

心理面への安易な原因追及は、問題の本質を見誤り、有効な対策を打てなくなるリスクがあります。

原因追及アプローチは、品質不良問題をはじめとする様々な課題解決に有効です。

ただし、データを重視し、人の心理面への追及は避けるなど、適用にあたっての留意点をしっかりと理解しておく必要があります。


解決探索アプローチの概要

解決探索アプローチは、問題解決策を探索的に見出すアプローチです。

原因追及アプローチが問題の原因を特定することに注力するのに対し、解決探索アプローチは問題解決の糸口を探ることを重視します。

解決探索アプローチの特徴は、原因志向ではなく解決志向・未来志向であるという点です。

問題が発生した原因を分析するのではなく、

「どうすれば問題を解決できるか」

「理想の状態は何か」

といった視点から、解決策を模索していきます。

解決探索の具体的手法

解決探索アプローチでは、以下のような具体的な手法が用いられます。

ブレインストーミング

ブレインストーミングは、グループで自由な発想を促し、多様なアイデアを出し合う手法です。

批判や評価をせずにアイデアを出し合うことで、斬新な解決策が生まれる可能性があります。

ロジックツリー(Howツリー)

ロジックツリーの一種であるHowツリーは、解決策をブレイクダウンして実行プランを立案する手法です。

「どのようにすれば解決できるか」

を繰り返し問いかけ、解決策を具体化していきます。

クネビン(カネヴィン)フレームワーク

クネビン(カネヴィン)フレームワークは、問題や状況を以下の4つの領域に分類し、それぞれの領域に適した対処方法を提示するフレームワークです。

1.単純(Simple/Obvious)な領域

原因と結果の因果関係が明確で、誰にでも分かる問題。ベストプラクティスを適用し、「把握→分類→対応」のプロセスで対処する。

2.複雑(Complicated)な領域

専門知識があれば因果関係の判別が可能な問題。「把握→分析→対応」のプロセスで、専門家の知見を活用して対処する。

3.複雑(Complex)な領域

原因と結果の関係性が複雑で、事前に予測することが難しい問題。「探索→把握→対応」のプロセスで、仮説検証を繰り返しながら対処する。

4.混沌(Chaotic)な領域

因果関係が不明確で、状況の理解が難しい問題。「行動→把握→対応」のプロセスで、まず行動を起こしてから状況の把握に努める。

このフレームワークを活用することで、直面している問題の性質を見極め、適切な意思決定や問題解決のアプローチを選択することができます

解決探索アプローチの適用例と留意点

新商品開発などの革新的な取り組みにおいて、解決探索アプローチが有効に機能する場面があります。

既存の枠にとらわれない発想が求められる際に、解決探索アプローチを適用することで、画期的な解決策を見出せる可能性があるのです。

ただし、解決探索アプローチを適用する際は、いくつか留意点があります。

まず、発想を広げるためには、メンバー構成の多様性が重要です。様々なバックグラウンドを持つメンバーが集まることで、多角的な視点からのアイデア創出が期待できます。

また、出されたアイデアの中から、実現可能性の高い解決策を選択することも肝要です。斬新なアイデアであっても、実行できなければ意味がありません。

解決策の絞り込みの際は、実現可能性を十分に吟味する必要があります。

解決探索アプローチは、原因追及とは異なる発想で問題解決を図る手法です。

未来志向で解決策を模索することで、これまでにない画期的な打ち手が生まれるかもしれません。

適材適所で解決探索アプローチを活用することが、問題解決力を高めるカギとなるでしょう。


二つのアプローチの使い分けと組み合わせ

問題の性質による使い分け

原因追及アプローチと解決探索アプローチは、問題の性質に応じて使い分ける必要があります。

原因が明確な問題に対しては、原因追及アプローチが有効です。

例えば、製品の品質不良が発生した場合、なぜなぜ分析などを用いて真因を特定し、その原因を取り除くことで問題を解決できます。

一方、原因が不明確な問題に対しては、解決探索アプローチが適しています。

新商品開発のように、ゴールが明確でない場合は、ブレインストーミングなどで解決策を広く探索することが重要です。

二つのアプローチの組み合わせ

原因追及アプローチと解決探索アプローチは、組み合わせて活用することで、より効果的な問題解決が可能になります。

まず原因追及アプローチで問題の真因を特定し、次に解決探索アプローチで真因に対する対策を立案するのです。

真因が明らかになれば、適切な解決策を見出しやすくなります。

この組み合わせは、QCストーリーにおいても活用されています。QCストーリーの要因解析で原因追及を行い、対策立案で解決探索を行うことで、問題解決を効率的に進められます。

以上のように、原因追及アプローチと解決探索アプローチは、問題の性質に応じて使い分け、また組み合わせることで、問題解決力を高めることができるのです。

私たちは、二つのアプローチの特徴を理解し、問題に応じて柔軟に活用していくことが求められます。



問題解決プロセス全体の流れ

問題解決のプロセスは、大きく分けて以下の4つのステップで構成されます。

①問題の発見・定義

まず、問題を正しく認識し、明確に定義することが重要です。問題の所在や影響範囲、解決の必要性などを明らかにします。

②原因分析(原因追及アプローチ)

問題の原因を特定するために、原因追及アプローチを活用します。代表的な手法として以下があります。

  • なぜなぜ分析:「なぜ」を繰り返し問いかけ、真因を追求

  • 特性要因図:問題の特性に影響する要因を体系的に整理

  • ロジックツリー:問題をツリー状に分解し、原因を階層的に分析

③解決策の立案(解決探索アプローチ)

原因分析の結果を踏まえ、解決策を探索的に立案します。代表的な手法として以下があります。

  • ブレインストーミング:自由な発想で多様なアイデアを出し合う

  • クロフォード法:アイデアを書いた紙片を集めて整理

  • クネビンフレームワーク:現状を「継続」「改善」「挑戦」の視点で整理

④解決策の実行と効果検証

立案した解決策を実行に移し、その効果を検証します。PDCAサイクルを回すことで、継続的な改善を図ります。

以上が、問題解決プロセス全体の基本的な流れです。

原因追及アプローチで問題の真因を突き止め、解決探索アプローチで創造的な解決策を見出すことが肝要です。

そして、実行と検証を繰り返すことで、問題解決力を高めていくことができるのです。


まとめ

原因追及アプローチと解決探索アプローチは、問題解決において欠かせない二つの重要なアプローチです。

原因追及アプローチは、問題の根本原因を特定することに注力します。なぜなぜ分析や特性要因図などの手法を用いて、問題の真因を突き止めることで、再発防止や抜本的な解決につなげることができるのです。

一方、解決探索アプローチは、問題解決の糸口を探ることを重視します。ブレインストーミングやクネビンフレームワークなどの手法を活用し、創造的な解決策を見出すことを目指します。

この二つのアプローチを、問題の性質に応じて使い分け、また組み合わせることで、問題解決力を高めることができます。

原因が明確な問題には原因追及を、原因が不明確な問題には解決探索を適用し、さらに両者を組み合わせることで、真因の特定と効果的な対策の立案を実現できるのです。

そして何より重要なのは、問題解決プロセス全体を意識し、PDCAサイクルを回すことです。問題の発見から解決策の実行、効果検証までを一連のプロセスとして捉え、継続的な改善を図ることが肝要なのです。

問題解決のプロフェッショナルを目指すなら、原因追及と解決探索、二つのアプローチの特徴を理解し、それらを柔軟に活用する力を身につけましょう。

そして、PDCAのフレームワークを活用しながら、問題解決プロセス全体をマネジメントする力を磨いていくことが大切です。

よろしければサポートお願いします!いただいたサポートは研鑽費として利用し、クライアント様に還元させていただきます!