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「仕事を手放すこと」は大事な仕事、という話

こんにちは。Ubie DIscoveryでBizDevをしていますhossoです。
突然ですがみなさん、仕事、ちゃんと手放せてますか。

2020年6月にUbieに転職してから1年半ほど経ちましたが、スタートアップにおいて「仕事をいかに手放せるか」は、かなり重要なテーマだと感じています。

個人的に2021年を振り返ると、製薬事業およびtoC向けのBizDevから始まり、Public Affairsとして業法の調査・当局とのコミュニケーションをしたり、Legalとして社外のアドバイザーと協力して事業上の論点を一つずつ潰したり、経営企画的な仕事をしたりなどなど色々やってきました。

一方で、慣れない仕事も多いのでその時々で一番やらなくてはならない仕事に集中するためにこれらの仕事を手放しまくってきた1年でもありました。

この記事では、せっかくなので個人的な振り返りも兼ねて、仕事を手放すことの重要性や手放すために実践してきたことを書いてみたいと思います。

また主題ではないですが、それを可能とする環境的な要因=組織的な仕組み・カルチャーについても併せて考えてみます。

スタートアップで働いている方 / 働くことに興味のある方、組織設計・カルチャーを考える仕事をしている方など、もし参考になるところがあれば幸いです。

なお、いわゆる上司から部下へ教育目的も兼ねて権限移譲する、といったものとは文脈が異なりますので、その点ご了承ください。

仕事を手放さないことによる弊害

スタートアップにいると新しいことにチャレンジするのは結構簡単です。日々状況は変化し、やるべきこと・やりたいことがたくさん出てくるからです。
ただ、ことスタートアップにおいては時間の使い方はシビアです。スタートアップが本当に"崖の上から飛び降りながら飛行機を作っている"のであれば、"これが作れないと落下して死ぬ"といった本当に必要な仕事を優先度高くできないといけないはず。エンジンも操縦桿もないのに乗り心地を求めていい椅子を作ったりしている場合ではないのです。

とはいえ、本当に物理的に飛び降りている訳ではないので、一度担ってしまった仕事を手放すことって結構難しいですよね。そこで、意図的に仕事を手放すことを意識するのがなぜ重要か、仕事を手放せないことによる弊害をあらためて考えてみたいと思います。

全てが中途半端になる

やったほうがいいことなんていくらでも転がっているのでやろうと思えばいくらでも仕事は作れます。可能ならこれもやって欲しい、とかこれ誰かやれる人いない?と社内で言われることもあるでしょう。

ただ、投下した時間と成果の質・量はある程度比例しますし、特に一定の時間を割けないと出せる成果の最大量はがくんと落ちます。
また、日々社内外の状況が変化する中で、各仕事の重要性も当然ながら日々変わっていきます。気づいたら仕事の優先度が下がっていた、あるいは、乗りかかった船だからとか妙な責任感で優先度の低い仕事をやり続けてしまうこともあるかもしれません。しかし、それでは全社・チームとしての生産性低下につながってしまいます。

どちらも大事だからといってエンジンも操縦桿も一人で作ってると飛べずに落ちます。真に重要なのは、優先度の低い仕事をやり遂げることではなく、全社・チームの生産性を高く維持するために動くことです。

専門性がないために不要な負債を積む

これは椅子作りを優先してしまうというよりはエンジンの作り方を知らないのにエンジンを作っている場合です。

概して事業成長と人材採用のスピード感は合わず、欲しい専門性を持った人材が社内にいない、という状況は往々にしてあります。その場合は誰かが社内で論点整理しつつ社外の有識者を頼って(業務委託 etc.)解決していくことになると思いますが、専門家が社内にいる場合と比較して、十分なスピード感で適切にROI(Return on Investment)を判断していくことはかなり難易度が高いです。
社外からでは立場上ROI判断も保守的になりがちですし、そもそも情報が不十分な中で適切なリスク・リターンの把握・分析は困難です。さらに工数が限られることも多いです。ともすれば適切なタイミングで適切な対応ができないことで将来的な負債を積んでしまう(あるいは地雷を埋めてしまう)こともあり得ます。

こう書いてみると、仕事を手放すこと=ROIが高い活動に各人が専念するための入口なんだなと思います。

仕事の手放し方

では具体的にどのように仕事を手放すのか。特別なステップはないものの、うまく手放すにはいくつかポイントがありそうなので、簡単に整理してみたいと思います。

仕事を手放すステップとポイント


1)仕事の優先順位を見直す

まず、いまどのような仕事を抱えているかを棚卸しして、それぞれの優先順位を考えます。
抱えている仕事の中で優先順位をつける相対比較ではなく、それぞれどのような背景で何を目的としているか、それにより何がReturnとして得られるか、そして自分がそれをするのが最適かを全社・チーム視点で俯瞰的に整理することがポイントです。

当たり前のようですが、特に忙しく仕事をしていると仕事をこなすことにどうしても集中してしまうので、定期的に実施することをおすすめします。
個人的には四半期ごと、あるいは期中でも全社・チームのOKRを見直すタイミングでは確実に、またちょっと手が回っていないなと自覚したタイミングでも仕事を手放すかどうかを意識的に選択肢に入れるようにしています。

なおこれは主題とはずれますが、もし仮に、余力もあるし全社やチームとして優先度も高くない仕事をしている場合は、他の仕事を見つけに行ったほうがよさそうです。

2)引き継ぎ先を確保する

あまり余裕がない中で優先度が低い仕事をしている場合、あるいは他に最適な人がいそうな仕事をしている場合は、積極的に引き継ぎ先を見つけましょう。あるいは本当に優先度が低いのであれば今すぐ手放しましょう。

他の仕事と一緒にやることが効率的であればその仕事をしている人にお願いをするなど、引き継ぎたい仕事とwill / canがあう人が候補になりそうです。(そしてその人も仕事の棚卸しと優先度を検討)

一方で、社内ですぐ見つかるならそれでいいですが、もし適任がいない場合は当然社外からの採用が必要です。ものによっては業務委託などで社外に仕事を切り出すことも選択肢にはなり得るかと思いますが、概してオンボーディング含めマネジメントコストもかかるため、本丸はやはり採用かと思います。

実際にPublic Affairs、Legalは専門家が社内にいなかったものの今年の秋口に両方採用ができ、Public Affiarsは元総務省のメンバーに、Legalは元4大事務所→三菱商事法務のメンバーにそれぞれ引き継ぐことが出来ました。

3)ラフに引き継ぐ

ここからがより重要です。引き継ぎ先を確保したら、仕事を引き継ぎましょう。

①簡単なドキュメントを共有・説明して、②ちょっとの期間の伴走(定例のmtgを入れたり)、を個人的には意識しています。引き継ぐ仕事と引き継ぎ先によって変えますが、社歴が浅い人には比較的丁寧めに、長い人にはまぁまぁ適当に(①だけの場合もある)。
ここで重要なのは、できるだけラフに引き継ぐことを意識する、ということです。

例えば引き継ぎのためのドキュメントも、完璧なものを作ろうとしてしまうとなかなか完成せず、また結局細部まで伝わらず、結果として引き継ぎに時間がかかってしまいます。そうではなくて、あえて重要な論点に絞り伝えることで効率的に引き継ぎができます。

また、引き継ぎの場を丁寧にやるよりも、その後気軽に質問してもらえるようにすることの方が大事です。ドキュメントに頼らず、わからなかったら聞いてもらう方が大体の場合は速いです。大抵のことは失敗しても取り返しがきくし死にはしないので、スピード重視でさっさと引き継いで自分がいまやるべきことにできるだけ集中できるようにしたほうがリターンは概して大きいです。(どこまでラフに行うかは重要度などに応じて判断ください)

4)情報の流入量を絞る

引き継いだらその仕事のことは忘れましょう。何のために仕事を手放すのか。それは本当にやるべきことに専念して生産性を最大化することなので、手放した仕事に気を取られていたら本末転倒です。
なので、手放した仕事に関連する情報が入ってこない / 取りにいいかない状況にすることが望ましいです。(もちろん手放す仕事とその後に残る仕事にもよります)

参考までに具体的に実践している方法を書くと、
・仕事を手放したことを明言する:Slackのチャンネルなどで、この仕事は優先度下げました / だれだれに引き継ぎました、と宣言しておくと、周りも認識できるし、自分もスイッチが入る感じでよいです。

法務メンバーが入社した後、ロールを抜けた際の実際のSlack投稿

・通知を切る:ものによってはSlackでキーワードメンションを設定してる場合や、チャンネル投稿に通知設定をしている場合もあると思います。そういうものは仕事を手放したら不要なので外しましょう

・スレッドやメールのループからも抜ける:とはいえ、前任者としてメンションされたりする場合もあるかと思います。その場合は当然必要な対応をしつつ、必要な役割を果たしたと思ったらスレッドの通知も切ります。本当に必要ならどうせ@メンションが来ると思ってばんばん通知を切るのがおすすめです。個人的にはこれを意識的にやり始めてからかなり生産性が上がった気がします

・情報ソースを整理する:優先的に見る必要がなくなったSlackチャンネルは、あまり目につかない位置に整理しましょう。チャンネルを抜けるとかもしてもいいかもですね。

特にSlackやメールのループから抜けるのは個人的には効果が大きかったのでみんなやったほうがいいと思ってます。
なお、完全に情報を絞りすぎると偶発的なコラボレーションも起きにくくなるのでそれはそれで能動的に何らか機会を作るのがよさそうです。

仕事を手放しやすい環境

もちろん個人としての意識づけが重要ですが、それを後押しする組織・カルチャーとしての土台が整備されていることも等しく重要です。
主なポイントは3つだと考えています。

仕事を手放しやすい環境の要件

組織制度やカルチャー設計の細かい仕様はそれぞれで各社最適なもの・組み合わせを考えるべきで、正解も多数あるかと思いますが、具体例としてご参考までにUbie Discoveryでの取り組みをご紹介します。
※ なお、以降はUbie Discoveryの中でもHolonと呼ばれる人材(スタンス)に限定して説明します。

A. 各メンバーが全社・チーム視点を持てていること

そもそも優先度は個人のレイヤーではなくチームや全社のレイヤーで決まります。組織として何がしたいのか、それがなぜなのか、を各個人が理解していることが当然大前提となります。
Ubie Discoveryでは四半期ごとにOKRを全社・チーム単位で設定し、オフサイトの場などでその背景を含めて議論し、認識を擦り合わせています。

B. 合理的な意思決定のために前向きに議論できること

仕事を手放すこと自体は個人の活動で出来る面もありつつ、他者との調整が必要となるケースも当然多いです。そのため合目的的に、全社・チームの目線で議論が出来ることが必要になります。ROI文化が根付いていることとも言えるかもしれません。

この点では、人材要件の明確な定義と徹底(採用時&入社後のFeedback)、カルチャーガイドカルチャーオンボーディング、そして評価なし・全社成長連動型の報酬制度あたりが主に下支えしている仕組みになりそうです。カルチャーとして明示的に手広くやりすぎないことの重要性が明記されており、心理的安全性を保ちながら仕事を手放す議論が出来るのは非常に体験が良いです。また、各個人が評価を気にせず純粋に企業価値の最大化を目指せるがゆえに、変に社内で対立構造ができることもありません。

C. 役割の帰属が明確であること
仕事を手放すことが、"ポテンヒット"を生むきっかけにならない様にすることも必要です。
Ubie Discoveryでは「ホラクラシー」という組織体系(ティール組織を実現するためのフレームワークの一つ)を採用しています。
ホラクラシーでは、組織に必要な目的単位で役割(ロール)が作られています。ロールを抜ける(役割を外れる)ことはそこにアサインされた人の自由ですし、状況変化などに伴いロール自体を統廃合することもよくあります。
本当に必要なロールであればそこに他の人がアサインされて仕事は進んでいきますし、不要であればロール自体をなくすこともあります。

必要なものだけが適切な形で存在するので、誰かが拾うべき仕事が知らぬ間に放置されてしまう自体も防げます。また、ロールがなくても必要であれば随時定義され可視化されるので、暗黙の期待でやってて手放しづらい、みたいなこともありません

Ubie Discoveryの取り組みはあくまで一例であり、また今後の会社・事業成長に応じて見直す可能性は十分にありますが、具体のhowはともかく上記3つの要件が担保され続けることは大事かなと感じています。

大玉を拾ってくださる方へ

Ubie Discoveryはまだまだ事業成長とやりたいことの拡大に採用が追いついておらず、大きな仕事を手放したくてうずうずしてる人がたくさんいます笑

興味を持っていただいた方はたくさんJDを用意してお待ちしていますので、是非採用サイトからご覧ください。

Meetyを開設しているメンバーも多いですので、何かあれば是非お声がけください。


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