フラットな組織の負債と向き合ったUbie Discovery が、ホラクラシー組織を採用した理由
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フラットな組織の負債と向き合ったUbie Discovery が、ホラクラシー組織を採用した理由

Ubie (ユビー)

Ubie Discoveryチームでは、実証実験期間を経て2020年12月に「ホラクラシー」を組織形態に採用しました。
この記事では、一般的なピラミッド型組織ではなくホラクラシーを採用している理由や、メリット・デメリットなどをまとめます。ホラクラシーやUbieの組織に興味をお持ちの方に読んでいただけたらと思います。
※ UbieにはUbie Discovery/Ubie Customer Science/Opsという組織があり、ホラクラシーはUbie Discovery組織(事業/プロダクト開発チーム)のみに適用しています。

「全員が事業経営者」を実現するために意思決定権を分散させる

組織戦略の前提となる事業特性について少し説明します。
Ubieでは現在 toB (医療機関向け)の「AI問診ユビー」と、toC(生活者向け)の「AI受診相談ユビー(https://ubie.app)」を開発・提供しています。ただ、いずれも単体のSaaS/toCサービスとしての拡大だけを狙っているわけではありません。「患者と医療機関のマッチング」を起点に医療システム全体の生産性に寄与する事業群を生み出すべく、複数事業が相互にレバレッジを効かせて最速での拡張を目指しています。
そのため、「同時多発的に複数事業を拡張すること」に組織運営も最適化する方針です。その手段が、全員が事業経営者として最速で意思決定する体制の構築です。
※事業特性と組織戦略の関係性について詳しくはカルチャーガイド に記載しています

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また、もう一つの背景が「Ubie Discovery組織が担うビジネスは解決方法がまだ明らかでないこと」です。未知の領域で事業開発していく過程では、一見非常識でも尖ったアイデアを試していく必要があります。ピラミッド型組織で階層を厚くしていくと、いわゆる「はんこリレー」を生み、尖ったアイディアを試さずに埋没させるリスクを高めます。
これらの理由から、意思決定権の分散を可能にする組織形態はないものかと模索してきました。

組織のフラットさが意思決定速度を落とす

創業〜2019年頃までは、シンプルに代表以外にマネジメントメンバーを置かない、いわゆる文鎮型組織の形態をとってきました。メンバーはそれぞれ事業責任を持ってのびのびとスピーディに意思決定し、フラットな組織としてうまくいっていました。

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しかし30名を超えた頃から徐々に以下のような課題が発生します。
・誰が何を決めるか明確でないため、確認や合議が発生し意思決定速度が低下
・誰が何を決めるか明確でないため、唯一の役職付である共同創業者の2人に権限と仕事が集中
・誰が何の責任を持っているか明確でないため、しばしばお見合い状態でボールが落下
採用やアサイン、チームをまたがる業務など、スクラム開発の範疇外の業務についてこれらの傾向が顕著でした。
意思決定を分散させ同時多発的な事業開発を実現しつつ、上記の課題を解決する。これがUbieがホラクラシーを導入している目的であり背景です。

ホラクラシーは意思決定権の分散を可能にする

そこでホラクラシー導入を本格的に検討しはじめました。
ホラクラシーには以下の特徴があり、それが前述した目的にフィットしていると考えられたためです。

・上司による管理がなくてもカオスにならないようデザインされたシステム
・目的単位のサークル構造。内側のサークルに意思決定権を移譲
・親(外側)サークルであっても、子(内側)のサークルの意思決定に関与できない。親サークルは移譲するごとに権限を失っていく。実務的な領域の権限はむしろ子サークルが持つ
・誰もが組織の理想と現実のギャップを埋める責任と権限を持つ

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「誰が上」といった概念がないために、ホラクラシーはフラットな組織と表現されることもあります。しかし実際には上記のような階層構造であり、階層ごとに役割や権限も明文化されるので、フラットな組織とは言えないでしょう。
(詳しくはLAPRAS社代表島田さんの記事等をご参照ください。「ホラクラシー組織への誤解と本当の意味」)

ホラクラシーの概略

さて、もう少し詳しくホラクラシーについて説明します。
ホラクラシーは、自主管理型組織を主眼とする組織構造のバリエーションの一つです。「ティール組織を実現するためのフレームワーク」と言った方が分かりやすいかもしれません。歴史的には、組織における確実性と順応性をバランスさせる方法論の一つとして開発されてきました。
Ubieが採用している「ホラクラシー組織」は、広義の概念としてのホラクラシーではなく、Holacracy Oneの創業者であり「HOLACRACY(ホラクラシー) 役職をなくし生産性を上げるまったく新しい組織マネジメント」の著者であるBryan.J.Robertson氏が提唱する内容に準じています。
Bryanが提唱するホラクラシーは、以下のような特徴があります。

・個人ではなくサークル・ロール・プロセスに対する権限移譲
・管理者ではなく、法律(憲法)に則ってチーム運営
・組織構造は有機的に変更

Ubieの価値観を組織に浸透させていくシステム

サークル、ロール、憲法などと言われても即座にイメージはしづらいかもしれませんが、具体的には以下のようなことが起こります。

・【役割明確化】誰が何のために何をやっているか明確に定義される
・【権限移譲】定義されている目的の範囲であれば、誰かに相談することなく自分で業務推進・意思決定することができる
・【有機的な組織】異動や組織改編が頻繁に行われる
・【会議体】憲法に則り、権限と義務を行使するための会議が行われる

こうした特徴は「同時多発的な事業開発」というUbieの特性や組織思想と相性が良く、Ubieのバリューを体現した各メンバーの事業推進を助けてくれます。「組織はシステムに従う」と言いますが、ホラクラシーはUbieの組織的思想を拡張するためのシステムでもあると考えています。

▼Ubieのサークル構造イメージ

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導入後のポジティブな変化

ホラクラシーについてUbie Discovery組織全体の習熟度はまだ充分とは言えないものの、2020年1月より徐々に規模拡大しながら実証実験を行ってきたので、すでに実質的なメリットを享受しています。

▼メンバーの意見(2020年7月に実施した社内アンケートの抜粋)

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ホラクラシーには規定のセレモニー(会議体)があるため、導入前は会議コストが大幅に増加する懸念もありました。しかし実際には、規定の会議が追加されたにも関わらず、週あたりの会議時間が全社で25%削減されました。もちろん削減要因はホラクラシーの導入だけとは言い切れませんが、本質的な権限移譲が着実に進んでいるという手応えがあります。
ほかにも、前述した「共同創業者の2人に権限と仕事が集中」「お見合い状態でボールが落下しがち」などの課題も解消されつつあります。

MediumやGitHubはなぜホラクラシーをやめたのか?

さて、ここまで目的やメリットを中心に紹介しましたが、デメリットやリスクもつきものです。そうでなければ世界中の先進的な企業がこぞって採用し、日本でもすでにもっと多くの企業が実践しているでしょう。なぜそうなっていないのでしょうか?
結論から言うと、ホラクラシーは「組織に機動力とイノベーティブなテーマが求められる場合に機能する。そうでない場合にはデメリットがメリットを上回る」組織形態です。逆にいうと、機動力とイノベーティブな活動が重視される小規模な組織においては、デメリットは無視できる範疇にとどまります。
以下が根拠となる複数の先行事例です。

ハーバードビジネススクールのイーサン・バーンスタイン准教授の論文(「ホラクラシーの光と影」)では、以下のように書かれています。※意訳を含みますので詳細は原典をご参照ください

現場レベル(ミクロ)のデメリット
・業務が断片化。役割が多くなり優先度付けや調整が大変になる
・報酬が複雑化。役割が具体的なポートフォリオ化するので適切な報酬設定が難しくなる
・役割の複雑化。社内外で採用が難しくなる

経営戦略レベル(マクロ)のデメリット
・(ホラクラシーは現場でユーザーを見て変化を取り入れることに長けている反面、)全体を見てトップダウンで意思決定するには既存の組織形態の方が向いている

それでも組織全体に自主管理(ホラクラシー)を導入するべきケース
・素早く軌道修正出来るメリットがコストを上回り、
・誤った軌道修正が破壊的ダメージにならず、
・明解な管理が重要でない場合である

この論文はUbieでの体感値とも近く、デメリットも「分かる!」と膝を打つ内容です。役割の優先度づけや社内でのアサイン等については、現在も運用の工夫を検討しています。(「それでもホラクラシーを導入すべきケース」の条件も、まさにUbieにぴったり合っています。)
また、この論文で紹介されているザッポス社の事例は「組織がある程度大きくなってからホラクラシー組織に移行する難しさ」を示しています。UbieはUbie Discovery組織が60名程度で準備期間をしっかり確保し、本来の組織思想と親和性も高かったので混乱は起こっていません。しかし、数百名規模になってから思想を変更するとなると、その難しさは想像に難くありません。

ほかに、ブログサービスで知られるMedium社は以下の理由でホラクラシーをやめています。(Management and Organization at Medium)

・サークルをまたぐ大規模な意思決定・調整が難しい(時間がかかったり決定が分断されたりする)
・記録管理やガバナンスへのコミットは透明性を高めるが、コストが高い
・責任の明確化・詳細化で共同体としてのオーナーシップの感覚が失われる

GitHub社は階層がないためにハラスメントが生まれたと公表しています。
Why GitHub finally abandoned its bossless workplace
Why Holacracy Is Such a Poor Management Structure
この事例については階層がないこと「だけ」が原因とは考えにくいですが、ガバナンス観点で工夫が必要である点は頷けます。

メリット・デメリットを踏まえたホラクラシーとの付き合い方

Ubieでも、遅かれ早かれ同じ課題にあたると想定しています。それを踏まえて、以下の3点を前提にホラクラシーと付き合っていく方針です。

1)他の仕組みとの連携や、運用の工夫
他の仕組みとの併用によってカバー出来る課題も多くあります。例えばOKR(フォーカスや優先度付けが可能)やスクラム(透明性、検査、適応)の徹底運用によって、「業務が断片化し優先順位がつけにくくなる」という課題の大部分はクリアできます。
他のシステムとの組み合わせや運用の工夫により当面の課題はクリアしていけそう、というのが現在の所感です。
2)機動性やイノベーティブな機能を重視する組織を切り出し、その範囲のみにホラクラシーを適用する
UbieはUbie Discovery/Ubie Customer Science/Opsの3組織に分かれており、制度・要件・カルチャーなど全て別個に最適化しています。ホラクラシーはあくまで、0→1の発明と1→10の事業化を担う=イノベーションを重視するUbie Discovery組織のみに適用します。
今後、事業が成熟するほど組織拡大はUbie DiscoveryよりもUbie Customer Science組織が中心になります。ホラクラシー対象組織は比較的「小規模でイノベーティブな機能を重視している状態」を維持しやすいと考えられます。
3)いずれはホラクラシーをやめて、自社の理想のフレームワークを開発する
現在は、組織や事業の不確実性やリソースなどに照らしてメリットが大きいためホラクラシーを採用しています。ただ、具体的な時期は未定ですが、いずれはUbieに最適化した独自の組織運営システムの研究開発を想定しています。
先述したMedium社でも、ホラクラシーの代わりに独自の組織運営フレームを導入しています。

冒頭で触れた通り、Ubieでは事業戦略・事業特性に照らして「意思決定の分散」を最適なスタイルと捉え、その手段としてホラクラシーを採用しているに過ぎません。現在はこのフレームワークに全社で真剣に取り組み、恩恵に授かりながら分散型組織を学習している段階です。中長期的には、手段に固執するつもりはなく、事業・組織フェーズごとに柔軟に変化していきます。

ホラクラシー組織で幸せになる人、ならない人

OKRやスクラムなどと同様に、ホラクラシーも実践して初めて分かることが多く、実践なくして真髄は理解できません。ですが、もしあなたがUbieへの入社を検討して下さっている場合、「やってみれば分かる」と言われて困るのももっともかと思います。
以下でホラクラシー組織に合う人・合わない人の見解を記載するので、ご自身の特性に照らし合わせてみて下さい。ここまで記載してきた課題感や思想に共感があり条件にマッチしている場合は、安心して飛び込んでいただければと思います。

前提条件
ホラクラシーの仕組みの中で全員が何らかの意思決定権を移譲されるので、以下の要件を満たす必要があります。

・マネジメントされずとも自律的に課題を見つけ業務推進できること
・ホラクラシーの思想と原則を理解し使いこなす論理的思考力があること
・目的に合わせて自身の考え方・動き方を変えるUnlearn力があること
※これらはUbieの採用要件に含まれるので、選考通過された方は前提条件をクリアされていると考えて頂いて差し支えありません
ホラクラシー組織が合う人
考え方や特性としては、以下のような方がフィットしやすいです。

・目的思考で、手段にこだわりがない
・環境の変化を好み、自身を変化させることが得意
・自分で意思決定することが苦ではない
・性善説でチームメンバーを信頼できる
ホラクラシー組織が合わない人
逆に、以下のような考え方の方は、ハッピーになりにくいかもしれません。

・キャリア形成において「CXO」や「部長」のような役職名を重視している(ホラクラシーでは実質的な意思決定権が移譲されるが、一般的な役職名とは紐付かない)
・安定した組織で落ち着いて同じ役割を遂行したい
・事業責任や意思決定責任を負担に感じる
・マイクロマネジメントを志向する

まとめ

<サマリ>
・同時多発的な事業拡張に組織体制を最適化
・意思決定権を分散させ、意思決定の質とスピードを高めるためにホラクラシーを選択
・機動力とイノベーティブなテーマが求められる組織において特に機能する。
 必ずしも幅広い企業・人にフィットするものではない

2021年1月現在、Ubieではこういった理由でホラクラシー組織を採用し、組織基盤としています。感想や質問などありましたら、ぜひUbieのメンバーに教えてください。(Twitterでも!)

GoogleやNetflixの組織運営が現在世界中から注目されているように、Ubieもこの同時多発的な事業開発を成功させた暁には組織開発事例として注目されるはずです。日本ではまだ珍しいこの組織運営に、共にチャレンジしませんか?

-----ご案内-----

Ubie で働くことに興味がある方は、Ubie Discovery採用サイトに詳しい情報を掲載していますのでご覧ください。

-----御礼-----

Ubie Discoveryでは、LAPRAS社のnunukiさんtakahamaさんにホラクラシーの導入を支援いただいています。日本では先行事例が少なく暗中模索の中、すでに多くの文献を和訳し実践されてきたお二人の深い知見には大いに助けていただきました。この場を借りて御礼申し上げます。

Ubie (ユビー)
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