時間の無い世界で、また君に会う 第8章 ジショウおじさん
〜前回までのあらすじ〜
時間の存在に疑問を持つ少年「トキマ」はある日、夜道で「時間をなくしてみませんか?」と書かれた一枚の紙を見つける。
紙に偶然載っていた住所を頼りに埼玉県の川越市に行き、そこで時の鐘を鳴らすと一時的に時間を無くすことができる力を持つ一人の少女"咲季(サキ)"に出会う。
ある日、咲季と池袋で遊んだ帰りに「次の日も会おう!」と待ち合わせをする。
しかし、起きてみると時間がなくなったままで、咲季はどこにもいなかった。
咲季を探す手がかりを見つけるために図書館で借りてきた本を漁っていると、「時切稲荷神社」という文字を偶然見つける。
僕はその神社について詳しく知るために地元の神社に向かった。
初雪がパラパラと降り出し、道の至る所に雪が積もりつつある日。
僕は滑らないように慎重に足を運びながら、少し早歩きで神社に向かった。
「ジショウさん!ジショウさん!」と神社の境内をキョロキョロしながら僕は声をあげる。
「なんじゃ騒がしいの」とスコップで雪をどかしながら木の影からちらっと顔を覗かせる神主のジショウおじさん。
「神社について聞きたいことがある!」と僕は大声を出しながら神社を走り回ってジショウおじさんを探す。
「それならお得意のインターネットとやらを使えばいいじゃないんか〜?」とジショウおじさんは木の影に隠れながら口に手を当てて大きな声を出す。
「時切稲荷神社について教えて欲しい!」と僕も口に手を当てて叫ぶ。
僕は耳をよくすまして、声を辿りにジショウおじさんの居場所を探す。
「あそこか!」と僕は大きな木の後ろに向かって走った。
「いた!ジショウおじさん!」と僕は指を差す。
「バレたか〜。さすがじゃのう!トキマ!」と笑顔なジショウおじさん。
「おじさんに聞きたいことがあるんだけど!」
「わかったわかった。ちょっといつものところで待っておれ」
ジショウおじさんはスコップで雪をどけて道を作り始めた。
僕は神社の奥の部屋に行く。
「懐かしいな。」と僕は部屋を見渡す。
この神社の部屋は僕が小さい頃よくジショウおじさんに遊んでもらっていた場所だ。
ジショウおじさんはこの神社に50年以上勤めている神主さんで、先祖代々続く神主さんの家系らしい。
ジショウおじさんと僕は小さい頃からの縁がある。
小さい頃に家族で神社に来た時、僕は大事なおもちゃをなくしたことがあった。
落としたはずの失くし物を泣きながら探していた時、一緒に探して、そして見つけてくれたのがジショウおじさんだった。
ジショウおじさんと話すと不思議と安心できて、何よりここぞと言う時には頼りになる人だった。
テストの点数が悪かった時には親に怒られない方法はあるか聞きに行ったり、悩み事があると決まってジショウおじさんのもとへ行って相談に乗ってもらっていた。
僕は静かに座って外を見る。
外ではジショウおじさんがスコップで雪をどかしていた。
仕事をしているジショウおじさんの近くには首が痛くなるくらいに大きな木が一本どっしりと立っている。
「あの木って確か樹齢1000年以上って言ってたよな。すごいよな〜」と木を眺める。
小さい頃によくあの木で遊んでいたことをふいに思い出した僕は小さく笑みがこぼす。
しばらくして、雪をかき分け終わったのかスコップを持ったジショウおじさんがストストとやってきた。
ジショウおじさんは部屋に入ると、お茶をたてて、お菓子と一緒に僕の前にそっと出す。
「で、なんじゃったっけ?」
「時切稲荷神社について教えて!」
僕は一口お茶を飲む。
「あ〜そうじゃったな〜。」
そう言うとジショウおじさんは話し始める。
「時切稲荷神社は岡山県の山奥にある神社でな。地元の人たちにはとっきりさまと言われていて、時間を決めて願うと、失くし物が見つかると言われておるんじゃ!」
「そんな神社があったんだ…」と驚きのあまりに食べかけのお菓子をこぼす。
「つまり止まった時間を動かす神社が時切稲荷神社と言うことじゃ。トキマも失くし物をしたのか?」とジショウおじさんは僕を鋭い目つきで覗き込む。
「う、うん…」と僕は目が合わないように下をむいた。
ジショウおじさんはなんでもお見通しだ。隠し事をしてもすぐに当ててくる。昔からそうだった。
「その失くし物はこの世界の時間が無くなったのと何か関係があるのじゃな?」とおじさんは僕に聞く。
「うん…」
僕はうなずくことしかできなかった。
「それ以上の詮索はせん。しかし、失くした物はしっかりと見つけ出すんじゃよ!」と僕の肩をポンと叩いた。
ジショウおじさんはお茶を飲み終えると立ち上がり、ポンと膝を叩くと外に出て雪かきを始めた。
僕も残ったお茶を飲み干して帰ろうとすると、コップの下に紙が挟まっていることに気づく。
「時切稲荷神社の地図だ…!」
僕は残ったお茶を飲み干すと、コップを置いて立ち上がる。
「ありがとう!ジショウおじさん!」と僕はジショウおじさんを横切って走っていく。
「気をつけるんじゃぞ〜!」とジショウおじさんは手を振る。
ジショウおじさんは最初からここまで予想していたのかもしれない。そう思いながら走った。
「あり得ない話だけど…ジショウおじさんならあり得るな」と僕はいつの間にかクスッと笑っていた。
「走れ少年よ。」
ジショウおじさんは走る少年の後ろ姿を暖かい目で見ていた。
〜to be continued〜
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