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「シェアのゆくえ」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.4 (3/7)

若者はさっそく、スタートボタンを押す。

なんとも簡単で、たわいない問いがいくつも続いた。たとえば、識別力診断と称して、どうみてもはっきりと区別できるグレーと黒、二枚の画像が並んでいて、より黒い画像を選べとか。注意力診断と称して、枠内にびっしり敷きつめられた〝国〟という漢字の中に、部首がくにがまえですらない、〝町〟という漢字が混ざっていて、一つだけ違う文字を選べとか。そういった具合だ。そろそろ飽きはじめ、もうやめようかなと思ったそのとき、チャッチャラ~と、バラエティ番組でよくかかる能天気な効果音がなった。ついに結果が出たらしい。

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画面には、

〈百点満点!神レベル!あなたはもっとも世の中に貢献できる人です!この結果をみんなにシェアしよう〉

と表示されている。

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「やっぱり、あいつより高得点だ!すぐに結果をシェアして、みんなにおれの優秀さをかもさないとな」

若者はさっそく、

〈満点!どうやら神レベルとのこと(笑)〉

とコメントをつけて、その能力診断をSNSにシェアした。するとページが切り替わり、

〈シェアありがとうございます。高得点を取った〝特別〟なあなたは、こちらをクリック〉

というテキストがあらわれた。

「特別ね。ふふふ」

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若者はそのリンクをタップした。すると、画面がぐにゃぐにゃと不思議な動作をはじめた。低予算なSF映画でどこかへワープするときにでもあらわれるような、陳腐にもほどがあるエフェクト。それにも関わらず、ばかばかしいそのアニメーションを、若者はまじめにみつめていた。もはや彼の心は、なにかでかいことをやってやるという、変なやる気に満ちていた。

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「シェアのゆくえ」 (4/7)につづく

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