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ついに映画公開! 改めて振り返りたい『アクアマン』のヒーロー&ヴィラン

約1年の延期を経て来年1月公開となるDCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)の最終章『アクアマン/失われた王国』。今回は新作映画の公開と新刊『アクアマン:ディープ・ダイブス』の発売を記念して、DCを代表する海洋ヒーローのアクアマンと重要な関連キャラクターたちの基本的な設定を解説していきます。

文:傭兵ペンギン


アトランティスの王「アクアマン」

アクアマンがコミックで初めて登場したのは1941年の「More Fun Comics」誌の#73。スーパーマンやバットマンの初登場からわずか数年後というタイミングで登場を果たし、それ以来DCコミックスの看板スーパーヒーローであり続けている大変歴史のあるキャラクターなのです。

『アクアマン:ディープ・ダイブス』より

そのため設定の変化はたくさん経ているのですが、現在の設定は人間の灯台守と海底王国アトランティス人の女王の間に生まれたアーサー・カリーという男で、アトランティスの王として世界を守るスーパーヒーロー。アトランティス人と同じく強靭な肉体を持ち、水中でも呼吸が可能で、凄まじい速さで泳ぐことができるだけでなく、海洋生物とテレパシーで交信するという独自のパワーの持ち主。また、アトランティスの支配者の証であり強力な力を秘めたトライデントを手に戦うことでも知られています。そしてジャスティス・リーグの創設メンバーであり、その常連メンバーとして長らく活躍を続けています。
 
このあたりの設定はジェイソン・モモアが演じる映画版から大きく変わっていないので、映画ファンにも馴染み深いものになっているでしょう。ちなみに、その映画版がコミックに与えた影響も大きく、映画の公開後、コミックでもアクアマンの上半身にはタトゥーが入るようになりました(コミックではとあるエピソードの中で、海の神からもらった贈り物という設定です)。
 
映画『アクアマン/失われた王国』では前作では対立した弟のオーシャンマスター/オームと協力して冒険するストーリーが展開される様子。コミックでのオームはアクアマンの長年の宿敵ですが、近年のストーリーでは(一時的に)ヴィランをやめて地上で暮らし始めるストーリーもあったので、映画ではどういう関係に描かれるのか楽しみですね。
 
そして実はコミックでは最近新たなアクアマンが登場したのですが……それはもうちょい後に紹介します。

海底王国の王女「メラ」

映画版ではアンバー・ハードが演じるメラの初登場は1963年の「Aquaman」誌の#11。アクアマンというキャラクターの基本的な設定が改めて確立されて始まった単独シリーズの中で、その相手役として登場し、それから約1年ほどでアクアマンと結婚をしスーパーヒーロー夫婦となったキャラクター。

『アクアマン:ディープ・ダイブス』より

現在の設定では、映画版とそこまで大きく変わらず、海底王国ジベルの王女で、夫であるアクアマンと共に世界を守るスーパーヒーロー。アクアマンと同じく、強靭な肉体や水中での呼吸能力などに加えて、周囲の水を自在に操るというパワーの持ち主。また、本来は敵国であるアトランティスの王を殺すために幼少期から訓練されていたことで、類まれなる戦闘能力の持ち主でもあったりします。
 
ジャスティス・リーグのメンバーとなったり、オーシャンマスター/オームと協力してアトランティスを守ったりとヒーローとしても活躍しながら、地上の海底の国々の友好な関係を維持しようと最大限の努力をする熱意ある指導者としても描かれてきています。

アクアマンの宿敵「ブラックマンタ」

映画ではヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世が演じるブラックマンタの初登場は1967年の「Aquaman」誌の#35。長い歴史の中で設定が大きく変わってきたキャラクターですが、常にアクアマンの前に立ちはだかる宿敵と言える常連スーパーヴィラン。

『アクアマン:ディープ・ダイブス』より

現在の設定で彼はデヴィッド・ハイドという名のトレジャーハンターのスーパーヴィラン。かつてアクアマンの血を奪うために雇われた際に、彼の家を襲撃してアクアマンの父トーマスを死に追いやり、その報復の中で(人違いで)アクアマンに父親を殺されているという因縁深いキャラクター。
 
特にスーパーパワーは持たない常人ではあるものの、優れた身体能力と天才的な頭脳の持ち主で、自ら開発した強力な兵器を搭載する特殊な潜水用スーツでアクアマンなどのスーパーヒーローたちと互角に渡り合ってきたヴィラン。中でも強力なのが特徴的なデザインのヘルメットの目から繰り出されるレーザーで、映画版でもその威力を発揮していましたね。
 
次なる映画『アクアマン/失われた王国』では、ブラックマンタがメインのヴィランとして登場し、呪われし秘宝「ブラック・トライデント」を手に入れアトランティスを危機に陥れるという展開である様子。この「ブラック・トライデント」自体はコミックには登場していないものですが、おそらく映画シリーズに多大なる影響を与えている2011年の「Aquaman」誌で登場した幽王の笏がベースになっているものでしょう。
 
幽王の笏はアトランティスの古の王であるアトランの持っていた王笏で、強力な地震を引き起こすパワーを持つもの。アトランはこの王笏を使ってアトランティスを海底に沈めた張本人でもあり、そんな王笏をブラックマンタが盗み出すというストーリーが展開されました。映画の予告を見る限り、「ブラック・トライデント」もかなり強力そうですが、果たしてそれを使ってブラックマンタは何をするつもりなのか……。
 
ちなみに、『アクアマン/失われた王国』の予告にはアクアマンとメラの子と思しき赤ちゃんが登場していますが、コミックのブラックマンタはアクアマンとメラの子を殺したことでも有名なキャラクター。予告の中のセリフでブラックマンタはアクアマンの家族を狙うと宣言してるので、赤ちゃんがどうなってしまうのか非常に心配です。

アクアマンのサイドキック「アクアラッド」

そんなブラックマンタに関連して、映画には(まだ)登場していませんが、紹介しておきたいのがアクアラッド。アクアラッドというキャラクターがコミックで初登場したのは1960年の「Adventure Comics」誌の#269。

『アクアマン:ディープ・ダイブス』より

当初はアクアマンのサイドキックとして登場した少年スーパーヒーローで本名はガースといい、アクアマンと同様のパワーを持っていました。アクアマンとヒーロー活動をしつつ、後に誕生する若手ヒーローチームのティーン・タイタンズの創設メンバーとなりました。それから大人になって(ロビンがナイトウィングと名乗るようになったように)テンペストとして現在も活躍を続けています。
 
そして2010年のクロスオーバーイベント『ブライテスト・デイ』の中で新たなアクアラッドが登場。こちらはジャクソン・ハイドというアメリカ人の若者で、強力な肉体と水中での呼吸能力に加えて、水を操る能力や電気を発生させる能力の持ち主。

現在、彼はブラックマンタ、メラと同じジベル人のルシアとの間に生まれた子供という設定に。本当の父親については知らないまま地上に逃げた母と義父に育てられてヒーローとなり、ティーン・タイタンズの一員として活躍します。
 
その後、実の父との直接対決などを経て成長をし、2022年の「Aquaman: The Becoming」誌のストーリーで活躍する中でアトランティスの人々から”アクアマン”と呼ばれるようになり、アクアマン/アーサー・カリーからもそれを認められ、新たなアクアマンを名乗っています(二人のアクアマンがいるという体制)。
 
そんなわけでジャクソンはブラックマンタと関連が深いので、もしかしてもしかすると『アクアマン/失われた王国』で言及やサプライズ登場がありえるかも。また、2020年にはジャクソンのパワーの覚醒とボーイフレンドのケニーとの恋愛を描くヤング・アダルト向けのコミック『You Brought Me The Ocean』が発売され好評価を獲得し、HBO MAXでドラマ化されるとの報道も行われています(ただし、DCは幾度となく計画を変更しているので実際どうなるかは不透明)。
 
ちなみにアクアラッド/ジャクソン・ハイドはコミック版の初登場とほぼ同時に始まった、アニメシリーズ『ヤング・ジャスティス』の中心的なキャラクターとしても有名。DCコミックスの若手ヒーローチームの活躍を描く物語で、(名前や設定がコミックとは若干異なりますが)非常に面白いシリーズなのでオススメです。執筆現在ではケーブルテレビ局のカートゥーン ネットワークで放送中。しばらく前までNetflixなどでも配信されていたので、いずれまた見られるようになる日が来るかも……?

アクアマンの活躍が楽しめる短編集『アクアマン:ディープ・ダイブス』

11月24日(金)発売『アクアマン:ディープ・ダイブス』書影
スティーブ・オーランド、トム・テイラー他[作]
V・ケン・マリオン、ポップ・マン他[画]
吉川 悠[訳]

今回発売となる『アクアマン:ディープ・ダイブス』は、ここで紹介したキャラクターが大活躍する複数のストーリーを収録。本国で新たな読者を獲得するため、スーパーマーケットチェーンのウォルマートと組んで展開した特別本に収録されたエピソードをまとめたもの。

その狙い通りキャラクターのことをまったく知らなくても楽しめる短編エピソードが揃っているので、アクアマンが気になっているという人にまずオススメの一冊。ぜひ映画を楽しむ前にチェックしてみてください。

傭兵ペンギン
ライター/翻訳者。映画、アメコミ、ゲーム関連の執筆、インタビューと翻訳を手掛ける。『ゴリアテ・ガールズ』(ComiXology刊)、『マーベル・エンサイクロペディア』などを翻訳。
X:@Sir_Motor

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