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“小さき者を見逃すな”! 『アントマン&ワスプ:クアントマニア』公開記念/アントマン コミック入門

2月17日(金)にMCU新作『アントマン&ワスプ:クアントマニア』が公開されました。今回はそれを記念して、映画に登場したアントマンと仲間たちのコミック版での設定と、彼らの魅力がわかるオススメのタイトルをいくつか紹介していきましょう! 

※本記事は映画の内容にも若干触れる解説となります。まだ映画を観ていない人は、ぜひ劇場に足を運んでからお読みください。

文:傭兵ペンギン

アベンジャーズ創設メンバー、ハンク・ピム&ジャネット・ヴァン・ダイン

映画版では前作『アントマン&ワスプ』(2018)でついに再会を果たした、ハンク・ピム博士とジャネット・ヴァン・ダイン夫婦。今作では世界を救った元ヒーローとしての貫禄があり、二人共仲良く大活躍していましたね。正直、彼らが若い頃を描いた映像作品も見てみたいところ。

コミックでのハンク・ピムは、物体の大きさを変えられるピム粒子を発見した天才科学者で、アリと意思疎通のできるヘルメットと身体を巨大化&縮小化する薬品を開発し、アントマンを名乗ってスーパーヒーローとして活躍……と基本的な部分では映画と同じです。

ハンクの初登場は1962年の『Tales to Astonish』#27で、コミックでも大ベテランのキャラクター(とはいえ、コミックでは登場人物があまり歳をとらないので、基本的に老人としては描かれていませんが)。ハンクはアベンジャーズの創設メンバーとして活躍し、ジャイアントマンやゴライアスと名乗っていたりと、歴史とともにヒーロー名とコスチュームを変えてきたキャラクターでもあります。

また、映画にも登場したウルトロンを開発したのもハンク・ピムで、強大なヴィランを生み出してしまったショックに精神的に苦しみ、暴走してしまったためにアベンジャーズから一時期除名されたりと苦悩する姿が描かれることの多く、その人間味が魅力の一部となっています。そのあたりの設定も、映画の第1作『アントマン』(2015年)に雰囲気が残っていましたね。

最近の展開ではハンク・ピムはウルトロンに取り込まれて融合してしまい、本人は死亡しています。まぁコミックのことなのでいずれ復活しそうではありますが、果たしてどうやって復活することになるのやら……。

一方、そのパートナーのジャネット・ヴァン・ダインは、ハンク・ピムの登場からあまり時間を開けずに、1963年の『Tales to Astonish』#44でデビューしたキャラクター。初登場のエピソードで彼女は、別次元からやってきた怪物に殺されてしまった父の復讐のためにアントマンと協力。その過程でアントマンの相棒として選ばれ、遺伝子改造を受けて身体の大きさを変える能力と羽を獲得し、ワスプとして活動を始めることとなります。装備ではなく、遺伝子改造というところが映画と少し違うところですね。

アベンジャーズの創設メンバーであり、そのチーム名を提案したのも彼女。アントマンの相棒として作られたキャラクターではあるものの、早い段階で独立したヒーローとなり、アントマンがチームから離れた後もアベンジャーズの中核メンバーとして活躍しつつ、チームリーダーとなる場面も多い人物です。

ちなみに映画でワスプとして活躍するホープは(コミックでは同名のヴィランがいたものの)基本的な要素はコミックのジャネットから引用されて作られたキャラクターと言えるでしょう。ちなみにコミックでは、映画でホープが登場した後にハンクの死別した前妻の娘であるナディア(ロシア語で希望=ホープを意味する名前)が登場し、新ワスプとして活動。ジャネットはその養母/師匠としてナディアを支えます(ナディアのストーリーの邦訳版はヴィレッジブックスから『ワスプ』として刊行されています)。

ハンク&ジャネットファンにオススメのコミック

ハンク&ジャネットのオススメのタイトルは歴史が長いだけに選ぶのが難しいものの、なんといっても序盤の二人の冒険から読むことをおすすめしたいです。当初は実験の失敗で小さくなってしまった男がアリ塚に迷い込んでしまうというSFホラーだった物語が、スーパーヒーローものへと路線変更され、相棒のワスプと共にヒーローとして活躍しアベンジャーズの一員になるという過程が面白いところ。

また個性豊かなヴィランも魅力で、ドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』に登場したポーキュパインなどが登場したのもこの頃。邦訳版は未刊行なものの、単行本としては『Ant-Man/Giant-Man Epic Collection: The Man in the Ant Hill』というタイトルでまとまっているので、ハンク&ジャネットの話を読みたい人はまずはここからチェックしてみるとよいでしょう!

また、ハンク・ピム/アントマンの誕生秘話を新たに語り直した『アントマン:シーズンワン』もオススメ。こちらは邦訳の電子版がShoPro Booksから発売中。

ヒーロー親子、スコット&キャシー・ラング

スコット・ラングの初登場は1979年の『Marvel Premiere』#47。刑務所で更生した元技術者の泥棒であるスコットは、娘の心臓の手術のためにどうしてもアントマンの装備が必要となってピム博士の家に盗みに入ったことがきっかけで、ピム博士に才能を認められ新たなアントマンとなる……というほとんど映画と同じような誕生秘話を持つキャラクター。

スコットは元犯罪者でありシングルファーザーでもあるという珍しい設定のスーパーヒーローであるところが魅力で、様々なストーリーに登場し、後にアベンジャーズの一員としてハンク・ピムにも負けない活躍をしていきます。

一方、娘のキャシーは子供の頃から父スコットの仕事の関係でアベンジャーズやファンタスティック・フォーの面々と出会い、ヒーローに憧れを持って成長していくのですが、母はそれを理解をせず、危険な生活を送るスコットから娘を引き離そうとしていきます。

しかし、2004年のイベント「アベンジャーズ:ディスアセンブルド」(邦訳版はヴィレッジブックスから刊行)の中でスコットは死亡。キャシーは家出をし、当時結成されようとしていたヒーローチームのヤング・アベンジャーズへと加入を試みる過程で巨大化する能力が開花し、そこからヒーロー「スタチュア」としての活動を開始することに(こちらのエピソードはShoPro Booksの『ヤング・アベンジャーズ:サイドキックス』に収録)。

映画では父と同じくスーツの効果で身体のサイズを変えていましたが、コミックでは子供の頃から父親のピム粒子をこっそりと盗んで度々浴びていたために自然と身体のサイズを変えられるようになったという設定となっています。

その後、キャシーは父スコットの死の原因ともなったスカーレット・ウィッチの暴走を阻止するために、仲間とともに時空を遡り「アベンジャーズ:ディスアセンブルド」の時代へと飛ぶ……というお話。こちらは今後ShoPro Booksから刊行予定の『ヤング・アベンジャーズ:チルドレンズ・クルセイド』に収録されています。

その後色々あって、キャシーは一時期ヒーロー活動を辞めるのですが、最終的には「スティンガー」という名前に改めて活動を再開。父のスコットと共に親子ヒーローとして活躍していきます。

『クアントマニア』のキャシーはコミックのヤング・アベンジャーズのキャシーに近い雰囲気になっており、映画でもヤング・アベンジャーズが結成されることがあれば、彼女は真っ先に加わりそうな雰囲気。これからの活躍にも期待したくなりますね……!

『ヤング・アベンジャーズ:サイドキックス』登場時のキャシー

スコットのファンにオススメのタイトル

スコット・ラングは筆者が個人的にマーベルの中でもかなり好きなキャラクターで、色々オススメしたいのですが……スコットを語る上ではやはり『ヤング・アベンジャーズ:チルドレンズ・クルセイド』が非常に重要なので、スコットのストーリーを読む前にまず最初はキャシーの『ヤング・アベンジャーズ』での活躍をチェックしてみるといいでしょう。

その次にオススメなのが、2012年からスタートした『FF』。こちらはスコット・ラングが、時空旅行に行くファンタスティック・フォーに4分間の間だけ彼らの基地の留守番を頼まれるというお話。

もちろんファンタスティック・フォーは4分間で帰ってくることはなく、共に留守番を頼まれたシー・ハルク、インヒューマンズの王妃メデューサ、ポップシンガーのダーラと共に臨時のファンタスティック・フォーとして基地を守り、そこで暮らす少年少女ヒーローたちの面倒を見なければならなくなるというストーリーがコミカルなタッチで展開されていきます。

ドラマの原作ともなった『ホークアイ:マイライフ・アズ・ア・ウェポン』の作家マット・フラクションがポップで鮮やかなアートで人気のマイク&ローラ・オーレッド夫妻と組んで、スコット・ラングの父親としてのキャラクター像を掘り下げた名作となっています。こちらは邦訳版は未刊行ですが、原語版では単行本全2巻で発売されています。

そして映画シリーズに一番近いノリのコミックが読みたいという人には、映画に合わせてスタートとなった2015年のニック・スペンサーによるシリーズ『Ant-Man』とその続編『The Astonishing Ant-Man』がオススメ。

無職のスーパーヒーローであるスコット・ラングが娘と会う時間を増やすために新天地マイアミへと引っ越して、元ヴィランたちと共に警備会社を立ち上げます。再起をかけるなかで冒険を繰り広げ、後半の『The Astonishing Ant-Man』では、キャシーはダレン・クロスが作り出したヴィラン手配アプリを止めるためスーパーヴィランの「スティンガー」として活動を始め、敵地に潜入することに。

映画『アントマン』のジャンルである「中年男の再起コメディ」をコミックでも見事に描いており、映画が気に入ったという人ならきっと楽しめるはず。映画にも直接的に引用されている部分もいくつかあり、見比べてみると面白いでしょう。

シリーズの第1巻に相当する『アントマン:セカンド・チャンスマン』はヴィレッジブックスから邦訳版が刊行済み。英語版では2シリーズの全エピソードを収録した『Astonishing Ant-Man: The Complete Collection』も発売中です!

大物ヴィラン「征服者カーン」

ちなみに、今作でMCUに初登場したヴィラン「征服者カーン」については、こちらの記事で解説しています。

カーンが行なってきた数々の悪行に興味のある方は、発売中の邦訳コミック『征服者カーン』も読んでみてください!

傭兵ペンギン
ライター/翻訳者。映画、アメコミ、ゲーム関連の執筆、インタビューと翻訳を手掛ける。『ゴリアテ・ガールズ』(ComiXology刊)、『マーベル・エンサイクロペディア』などを翻訳。
@Sir_Motor

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