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そこに愛はあるんか『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

そのうちNOTEにも書きますが、まるで呼吸をするように常に浮気をする男と付き合っていたことがあります。
一緒に行ったクラブでこっそりナンパをしていたり、楽しかったハワイ旅行から帰る飛行機の中の会話で、うっかり嘘がバレて大げんかになったこともありました。

そのうち私は、すごく楽しみしているデートや旅行の前でも「もしかしたらすごく嫌なことが起こるかもしれない」と最低最悪の事態を想定し、深呼吸とともに、心の準備をするという癖がつきました。
ショックで過度に心を壊さないための自己防衛策です。

その癖は、その男と別れてからも、なんとなく続いてしまっています。

映画なんかも、楽しみにしている映画ほど「でも、もしかしたら楽しくない
かもしれないぞ。みんなには楽しくても自分には楽しくない映画かもしれないぞ。落ち着け。落ち着け。期待をするな」と自分をなだめてから映画館へ向かいます。
…って、改めて文字にしてみると、我ながらなんて悲しい習性なの!(笑)

マルチバースも、カンフーも、ハチャメチャコメディみたいなノリも、
まるで私の趣味ではないんですけけどね。

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』も、今年度の賞レースで旋風を巻き起こしているとは知りつつも「マルチバースなんて絶対につまらないって。つか、絶対に話についていけないって。今時の若者ぶったカルチャー映画だってば!」と、心の中で散々悪口を言いながら映画館へ向かいました。すっごく楽しみ過ぎて。

何が楽しみってミシェル・ヨーです。
ボンドガールで鳴らしたミシェルも、すでに還暦。
最近では『クレイジーリッチ』とか『ガンパウダーミルクシェイク』なんかで姿を見て、この人もまだ頑張っているんだなー、なんて思っていたんですけど。
そんなミシェルが『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で久しぶりに主演を張り、その映画が大ヒット。
これまで映画賞になんてまるで縁のなかった彼女も、数々の主演女優賞に輝き、アカデミー賞でも強力な主演女優賞候補です。

ボンドガール時代


これでやっとアカデミー賞候補


私、自分が歳をとったせいか(さすがに還暦ではないけど)、謙虚に、実直に、頑張っている年寄りを見ると、妙に感動しちゃうんですよね。そして応援したくなる。

頑張っている年寄りと言えばジェイミー・リー・カーティスも。
『トゥルーライズ』のシュワちゃんの奥さん役で輝いていたのは1994年のこと。

64歳にして『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』でアカデミー賞(助演女優賞)に初ノミネート。「私はアカデミー賞にノミネートされるような女優ではないと思っていた」と素直に喜びを口にしていました。

これでやっとアカデミー賞候補

ミシェルの夫役のキー・フォイ・クアンも『インディ・ジョーンズ』や『グーニーズ』で有名になった子役俳優でしたが、長らく俳優としてのキャリアはストップしていて、久しぶりに再起を図ろうとこの映画のオーディションを受けたそう。そして、これまたアカデミー賞の最有力助演男優賞候補。


この映画の監督は『ダニエルズ』という30代男性の二人組なんですけどね。そんな若者が、さほどイマドキでも売れっ子でもない50〜60代の役者を使って映画を製作してみんなの人生を輝かせた、っていう点なんかも妙に感動しちゃうんですよね。「ホントありがとねー、若者!」って感じ。

って、長くなりましたが、そんなんで、すっごくすっごく楽しみにしていたんです。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』。
果たしてその結論は…



超おもしろかった!


こんなにバカバカしくて、チープで、意味わからない箇所もところどころあるんですけど、結局、最後は泣かされました。かなり泣けました。久しぶりに映画で泣きました。

内容はいろんなメディアに書かれているし、ブログやYOU TUBEでアップされている方も多いので、興味ある方はそちらを。

『マルチバース』って言われると、それだけで私なんかは敬遠しがちなんですけどね。難しそうだし、情緒に欠けるような気がして、あまり興味が持てない。

だけど、ストーリーはズバリ『愛』のお話なんです。

中国からアメリカに移民してきて頑張ってきたけれど、夫とは離婚しそうで、娘とは全然分かり合えず、家計は苦しく、ただ忙しくてうるさい日々が連続するだけで、家族がバラバラになりそうで、本当にこんな人生を自分は歩みたかったのだろうかなんて考えちゃって、もう、どうでいいや!ってすべてを投げ捨ててしまいそうになる寸前で。

それでも、やっぱり、私たちには『愛』があるじゃないか!『愛』をなかったことになんてできないじゃないか!と言うお話を、『マルチバース』と言う設定をものすごく、ものすごく上手に使いながら描いています。

私、もう一回観るな、これ。

もう一度、噛みしめながら観て泣きたい。

みなさんも、ぜひ。

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