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多様な人の物語が交わる、はじまりの場所-建築士 木暮勇斗さん

 Quの立ち上げに関わった人に話を聞いていく、「Quインタビューシリーズ」。第2弾は、内装を手掛けた一級建築士の木暮さんです。「リラックスして過ごせる」と好評なQuの店舗。そこに込められた思いとは?(※インタビューシリーズ第1弾はこちら
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 小学生のころ、学校の帰り道に秘密基地を作るのが好きでした。神社の奥の林でタープを張ったり、草むらの草をつぶしてスペースを作ったり。どこかに自分の居場所を確保するのが楽しかったのだと思います。建築の道を志したのは大学3年のころ、前橋市の街中にある古民家を改装したのがきっかけでした。

インタビューに応じる木暮さん

 建築設計をするうえで大切にしているのは、ただおしゃれなものを作るのではなく、一つ一つに意味やストーリーを持たせることです。例えば店舗であれば、店員さんがお客さんにストーリーを話し、愛着がわいていく。面白いと思ってくれたお客さんは、他の人へ伝えていく。そういった連鎖で空間としての強度が増し、独自性を帯びていくと思います。

Quの店内。福祉施設が作った商品やカフェ、授乳室や展示ボードがあります。

 Quの内装を設計するにあたって意識したのは「多様性」、そして「ただ買い物する場所ではなく、伝える場所にしたい」ということです。例えば商品を置く棚には、多様な県産木材を活用しています。中澤木材さん、林業家の蛭間さん、群馬県森林組合連合会から雑木を仕入れ、石橋製材さんに製材をお願いしました。

 背景には、担い手が減りつつある林業とお客さんをもっとつなげたい、との思いがあります。木材は紐でくくりつけることによって、いずれは家具や焚火に再活用できるようにしました。手作業を担当したのは、障害がある人が働く就労継続支援B型事業所「リーフ」(前橋市総社町)です。限られた時間の中で、木材を乾燥させたり、形を整えたりと、とても丁寧な作業をしてくれました。

さまざまな工夫が施された商品棚

 店舗内には1人席、2人席、グループで使える席などを散りばめ、椅子のデザインもあえてバラバラにしています。子ども連れでも過ごしやすいよう、小上がりのスペースも用意しました。

 Quには「こう過ごさなければならない」といった決まりはありません。自分たちが心地よい居場所を、自由に決められる受け皿にしたいと考えています。また、品質の高い福祉施設の商品を手に取ったり、無垢で柔らかい木材に触れたりして、特に将来の担い手である子どもたちが、何かを感じ取ってくれたら嬉しいです。商品を制作した福祉施設の方たち、木材を取り扱った林業関係者、お客さん、スタッフ。それぞれの物語が少しずつ交わり、循環し、未来へつながる場所になってほしいと願っています。(取材・執筆:原菜月)


■プロフィール
木暮勇斗 1991年、前橋市生まれ。2014年に前橋工科大卒業。設計事務所、工務店勤務などを経て、一級建築士免許を取得、llemo design studio 開業。




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